今日も始まりのチャイムが鳴る。
……そんなことお構いなしに、少年は通学路を歩いていた。
あーあ、今日も遅刻かよ……
と思いながら、俺はトボトボと道を歩いていた。
チャイムがなってしまったら、いくら走ったところで遅刻には変わりない。
だいたい、朝からケンカを売ってくんなっつーの
遅刻の理由はほかでもない。
あさっぱらからどこぞのヤンキーがケンカを吹っかけてきたんだ。
理由はいつもどおり、
「調子に乗っているから」。
意味のわからない理由だろ。
もうこれが中学生になってから1年くらい続いている。
……ん?
通学路を歩いていると、ここらへんでは見かけない少女がなにやらキョロキョロしている。
始業のベルはとっくになったはずだが…。
キミ、どうかしたの?
えっ!?
声をかけただけだったのだが…驚かれてしまったのか?
少女が振り返る。
あっはっは…どうも、初めまして。
ん?あ、初めまして…
道端でいきなり初めまして…とはいわなくないか、普通。
私、最近ここらへんに引っ越してきた、長谷川 紫乃(ハセガワ シノ)っていいます。
あぁ、そうなんだ
見ると、うちの学校の制服を着ている。
ということは転校生だろうか。
いや…ていうか、学校始まってるよ?
あはは……そうみたいなんですよ……
淡い桃色の少女は、脳天気に笑う。
この時間にいったいキョロキョロと何をしていたのだろう。
なにかしてたの?
もし制服でなければナンパとも間違われそうなセリフ。
ちょっとお友達の探し物をしてまして…なんか、家族の写真らしいんですけど。
家族写真?へー、どんなやつ?
私も見たことはないんですけど…そうですね~。赤い髪の男の人が写ってるらしいです。
赤い髪…?
赤い髪といえば、そういえば同じ学年にそんな奴がいた気がする。
じゃぁオレも探してやるよ。
あ、ホントですか?
ありがとうございます!!
シノは元気な笑顔を見せた。
ちょっとだけ恥ずかしくなる。
ここらへんなんだよな?
だったら俺はちょっと向こうの方から探してみるよ。
はい、私はまだここら辺探してみますね。
これで暇つぶしになるだろう、と思いながらオレは少しの先を歩いて行った。
それから1時間くらい。
探しているがは、未だに見つかる気配は無い。
仕方ないのでシノと出会った場所へと戻ってみる。
ん、おまえは……
若干見覚えのある赤髪の男は、目を見開いてオレを見た。
いったいなぜ?といった表情でこちらを見ている。
えっと、クレナくん。この人がさっき話した、一緒に写真を探してくれてた人だよ。
…そうか、探してくれてありがとう。
いや、暇だったからついでだよ。結局見つかったのか?
オレは探していた写真について聞いた。
…いや、まだ見つかっていない。
多分もう誰かが拾ったか、風で飛んで行ったんだろう。
クレナと呼ばれた赤髪の男は、少し残念そうな表情を見せる。
んー、残念だなー。
お守りだったんでしょ?
まぁな。
ところで…
クレナ俺を一瞬見てから、シノの方を見た。
長谷川、あんたこの男のことを知っているのか?
え、ううん、さっき初めて会った人だよ?
そうか。
おそらく、ここらへんじゃ誰もが近寄らない”火野原 元”を避けないことを疑問に思ったのだろう。
知らないのなら避け用もない。
悪いな。
じゃぁ、オレは学校へいくぜ。
オレはなんだか申し訳なくなって、逃げるようにその場を離れようとした。
するとすぐに呼び止められる。
まてよ、火野原。
これだけは言っとくぞ。
名乗った覚えもないが、俺は自分の名前を呼ぶ男の方を振り向いた。
別に、誰でもがおまえを悪い目で見ているわけじゃない。だからもう少しくらい人と関わりを…
わかってるさ。
……そうか。
俺は再び歩き出し、学校へと向かった。
あの…何かあったんですか?
いや…いいんだ。
どうするも、あいつ次第だからな…。
…?
シノはあまり良くわからなかったが、取れあいず今は深入りしないようにしようと思った。
昔は人気者だったんだけどな…あいつ。
クレナはどこか遠くを見ながら。昔の頃を思い出していた。