それは12ある世界のうちの一つ。
名を「アトラ」という。

アトラでは、まだ解明されてない

超能力

とも言える力が存在していた。

一方、その力の発見とともに
謎の生物が次々に発見され
人々はそれをこう解釈した。

「魔物と戦うために与えられた力だ」

これは、そんな力を持つ者たちが住む世界で起こる
少年少女の物語。













少女

助けて…!!!

薄暗い倉庫の中から、少女の叫びが響いた。

誘拐犯

おとなしくしろ!!

つい先ほど車で誘拐され見知らぬ倉庫に連れて来れれた少女に、誘拐犯は怒鳴りつけた。

誘拐犯

おとなしく人質になれたら後でたっぷりと可愛がってやるよ…へっへ

少女

いやぁっ…たすけてよぉ…

少女は見た感じおそらく小学生と思われる。

縄で腕を後ろで強く縛られ、足も同様に縄で縛られている。

清楚で神秘的なその容姿は、状況が状況でなければ間違いなくお金持ちのお嬢様と思われるほど美しく可愛らしい。

しかしこれ以上叫ばれても困る。

犯人はガムテープをちぎって、少女の口を塞いだ。

誘拐犯

この嬢ちゃんには悪いが、コイツを人質にカネを巻き上げるぜ…

犯人はポケットからケータイと小さな手帳を取り出した。

開くとそこには少女の顔と住所や電話番号が記されていた。

これは少女の学生手帳だ。

犯人はケータイを操作し、そこに書いてある番号へ電話をかけた。

(プルル…プルルル…カチャ)

相手

はい~?

電話に出たのは若い女性だった。

相手

……あれ、もしもし~?

誘拐犯

……。

緊張で次の言葉が出ない。
早く要件を言わなければ。

誘拐犯

お…おまえが、「シカリアキホ」か?

手帳に書いてあった母親らしき名前を問う。

相手

はい、そうですが…どちら様でしょう?

誘拐犯

っ……お、俺は…

動揺して自分の名前を喋ってしまうところだった。
犯人は深呼吸して「おまえの娘を預かっている」と言おうとした。

その時である。

少女

アキおねーちゃん!!たすけてぇ!!

相手

………っ!!

ついさっきガムテープで口を塞いだはずの少女が突然叫んだ。
犯人は咄嗟に少女の方を振り向く。
見るとガムテープは剥がされ、腕のロープは解けていた。

誘拐犯

ガキっ…いつのまにっ…!!

少女は逃げようとするが、足をロープで縛られたままではどうしようもない。

電話の向こうから叫び声が聞こえる。

相手

あなた…っ、アイカをどうしたの!!
アイカ!!アイカーっ!!

電話越しに叫ぶ女性の声を押しのけて犯人は叫ぶ。

誘拐犯

オマエの娘は誘拐した!!
要求はカネ、カネだ!!
今すぐカネを用意しろ!!

相手

お金…っ?

誘拐犯

そうだ、1億だ!!それが用意できなければこのガキは殺す!!

相手

い…一億なんてそんなっ…

 女性の弱々しい声が漏れる。
一億…そんな額を用意できるわけがない。

しかし女性はすぐに応えた。

相手

わっ…わかったわ…用意します…ど、どうすればいいんですか…?

弱々しくなった女性のセリフは、恐怖で震えているようだった。

誘拐犯

…このガキの小学校へ来い。
そこで受け取りをする。

相手

え…小学校ですか…?

意図がわからない…といった返事だった。

誘拐犯

そうだ、流泉小の玄関にしよう…!!
いいか、サツとかに知られたらすぐにガキは殺す。お前が自分の手で渡しこい。
……猶予は…1時間だ。

相手

ちょっとまって…1時間は…っ!!

電話の向こうからそう聞こえた途端、犯人は電話を切った。

少女

……ひっ…

誘拐犯

……次は…殺す。

犯人は少女を睨みつけ再びガムテープで口を塞ぎ、腕のロープをさっきよりも強く縛り付けた。















秋穂

……くっそ……!!

先ほど犯人と電話をした女性…
「白光 秋穂(シカリ アキホ)」はテーブルに拳を強く擦りつけて焦っていた。

秋穂

なんで…アイカが……!!

怒りと不安と焦り。
最悪の感情が体の中を駆けずり回る。

猶予は1時間、それまでになんとかしなくてはならない。



そんな時、玄関のドアが開き、1人の少年が帰ってきた。










ただいまー
…あれ、アキ姉ぇどうしたの?

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