帰り際に観客が手を振ると、時折、きらきらと光の粒がこぼれる。リストバンドの加速度センサーが反応するのだ。
……。
……。
……。
終わったね……。
ああ、何もかもな……。
全行程を終了しました。
お疲れのところ悪いんだけど、最後にロビーでのお見送りがあるよ。
え、あ、はい……行きます(ふらふら)
そ、そうか……(ふらふら)
ふらふら。
ごめんね。もう一頑張りだから。
この間の舞台観たよ。アンドロイドがアイドルやる時代に生まれることができてよかった!
ありがとうございます♪(獲得ファン人数最多、1D6→5、獲得ファン人数+5)
やっぱり度胸がすわってるわねえ。あなたみたいな娘に介護してもらえれば老後も楽しいかもね。
介護プログラムは開発中です♪(メンタル最多、1D6→2、獲得ファン人数+2)
姉さん、物静かなのかと思ったけど意外と面白い人なんだね。また会う日までぜ!
そりゃどうもぜ……(ファンブル最多、1D6→5、獲得ファン人数+5)
帰り際に観客が手を振ると、時折、きらきらと光の粒がこぼれる。リストバンドの加速度センサーが反応するのだ。
売れ行きはどうだったんだろう?
吉田P!
秋桜さん! どう、リストバンドは?
実は、ミスで発注しすぎちゃって……。
まさか不良在庫!?
でも全部で89個売れました! ファームウェアは後からでも更新できるから、在庫は次のライブに向けて改良すればおっけー!
そ、そっか。それならよかった。
街を歩くときなんかも、つけてもらいたいですね。目立つから、Solar Systemの知名度もアップしますよきっと!(プロダクションレベル2→3)
89個売れたということは、leonids全体で89人のファンを獲得したということか。なら、ライブはなんとか成功したと言えるだろう。確か、目標動員数は80人だとエレナが言っていた……。
そうだ! エレナ!
吉田P!?
最後の曲、Bメロで歌詞間違えちゃったとき、もうホントだめかと思ったよ……。プロデューサーさんがフリップを出してくれたのと、葉月ちゃんが一緒に歌ってくれたおかげ。
なんのこれしきです♪
ハブられ体質の自分が憎い……!
玲奈さんも、あのシンフォニーすごかったですよ! もう少しで1から6まで全部揃ったんですけど。私からもお返ししたかったなあ。
今日はメンタルの調子が悪くて……。
みんな! エレナを見なかったか!?
え、エレナちゃんですか?
見ていませんよ。
何しろそれどころじゃなかったからな。
陽平さんと一緒じゃなかったんですか?
途中まではそうだったんだけど、急に消えて……どこを探しても見当たらないんだ!
それは大変です!
すぐに探さないとですね!
メモリーを検索してみます。
シアターのみんなにも聞いたほうがいいんじゃないか?
優しくて可愛くて頼りになるエレナちゃんがいなくなったなんて聞いたらみんな大騒ぎですよ!
……。
……。
ばか! どこへ行ってたんだよ! 心配したんだぞ!
いや~、なんか厳しそうだったからルール調整を申請してました。上の説得には骨が折れましたよ~。
えっ、それじゃあ幕間でかかった影アナは……。
なんと! わたしだったのです!
でも、ルールなんてそんなホイホイ変えていいのか?
喧嘩してまでルールを捻じ曲げたり、押し通したりするのはいただけません。でも、サイコロは楽しむために振るものです。サイコロを振るのが楽しくなくなったら、こんな世界なんてたちまちおじゃんですよ?
そうか……。
本の160ページにもそう書いてありますから。
確かに、ルールの一番最初に、ゲームが楽しくなるように自由にルールを変更・調整して構わないと書かれている。
実際、色々なルールが試されています。物語を動かすために、工夫が重ねられているんです。さて……。
さて?
陽平さん、今日最後のお仕事です。みなさんにこれを。
これは?
衣装チケットです。次のライブで使えますよ。
じゃあ、また玲奈さんとゆるふわコーデできるんですね!
そうなったら引退するわ……。
えー、やりましょうよ。
念の為に聞いておくが、必須じゃないんだろ?
はい、プロデューサーが選択した衣装と、衣装チケットの衣装と、どちらでも選べます。
もらうだけはもらっておくけどな。使うかどうかは別だぞ!
可愛い玲奈さん、また見たいな。
メモリーにプロテクトかけますね♪
これでファーストライブは終わりか……名残惜しい気もするけど、家のこととか心配でもあるんだよな。
じゃあ、一旦帰りましょうか。
この部屋に帰ってくるのも久々だな。
陽平さん、長い間お疲れ様でした!
またleonidsのみんなに会えるかな? Solar Systemのみんなにも。
はい! みんな陽平さんのつっこみ……いえ、プロデュースを待ってますよ!
他にもプロデュースを待ってるアイドルがたくさんいるんだろ? 正直、僕一人だと荷が重いんだけど。
そうですね。なので、陽平さんがオフの間、ちょっと他のプロデューサーをスカウトに行ってきます。
なるほど、エレナはエレナで大変なんだな。
その時のわたしはエレナじゃなくて、多分違う名前でしょうね。
なんだっていいさ。僕にとってはエレナだ。そうだろう?
ええ。あなたがそう望むのなら。
こうして僕はエレナと別れ、再びアイドルプロデュースの舞台に立つ日を待つこととなった。
なお、後に本2冊分の請求書が届くことを、この時の僕はまだ知らない。