いちょう祭りも終わり、高須山の木々がようやく色づき始めた１１月の終わり。

少し薄暗くなった校門までの道の途中、私は煉の彼女となった後輩に呼び止められた。

私は一瞬振り返ろうとしたものの、思い留まり何事もなかったかのように、校門へと足を進める。

後輩の大きな声に、私はその場に立ち止まる。

チラッと周囲を見渡すと、後輩の大声のせいで、私たち２人は部活帰りのけやき商生達の注目の的となっていた。

「煉の彼女」という言葉に、思わず私は一瞬顔を悲しみに包んでしまった。

校門の方向へ向き直った私は、再び足を進める。

刹那、私は後輩に右手をがっちりと握り締められ、歩行の自由を失った。

私は、校門へ足を進めながら、記憶の海を泳ぎ始めた…

高１のとき、私と煉は同じクラスだった。

その年の「けやき祭」で私たちのクラスは展示の出し物をすることになり、部活でも「選手とマネージャー」という関係もあってか、「けやき祭」の準備を通して私と煉の距離は一気に縮まった。

しかし、私の中で煉を「男性」として見ようという意識は全くと言っていい程芽生えず、それでも煉と一緒にいること自体にはむしろ心地よさを感じていた私は、煉の想いが私に向けられていることを感じ取りながらも、クラス・部活・放課後と多くの時間を過ごした。

そして、とうとう煉は私に告白をしてしまった。

本当は、私が煉に出すべき「答え」ははっきりと分かっていた。

「あなたを、男性としては見れない…」

でも…
「煉といると心地良いこと」

「煉は部活のエース」

「煉は精神的に発展途上で、今それを崩すと部活の成績に影響が出かねない」

「私は部のマネージャーとして、選手の精神を崩す訳にはいかない」

後半は、最初の理由の言い訳かな…

とにかく、そんな思いが私の頭を駆け巡り、煉に断りを入れるのを躊躇わせた。

そう言うと、煉はかばんを手に校舎を出ていった。

私は踵を返すと、自分のクラスへと走っていった…

番外編　亜美の真実－２　へ続く