自室に戻ったルルディアは届けられていた結婚祝いの山の中から、一つの箱を取り出した。送り主はアルフォンス=ニクラウス=ザフィア。
いつもどおり事前に中身は検められている。だが、まめに王宮へ足を運び、贈り物をしてくれていたアルフォンスは、使用人に信用されていたらしく、念入りに調べられた形跡はない。ルルディアは中の色とりどりの菓子を取り出し、侍女の目を盗んでこっそり底の紙を剥がす。二重底になった空間に、手のひらに収まるくらいの大きさの石が入っている。ハンカチで包むと、寝室へ移動する。窓際の椅子に腰掛けて目の高さに掲げる。窓から差し込む光を当てて観察すると、うっすらと斑模様の入った緑石だった。
どこかで見たような? と首を傾げつつ、袖に隠していた手紙を読むと、既視感の原因がわかった。そこに書かれている効用に覚えがあったのだ。
目を瞑ってアルフォンスの姿を思い浮かべると、低くつややかな声が蘇る。