青い空。
白い雲。
さわやかに風が吹く。
私は学校の中庭のベンチに腰をかけていた。
青い空。
白い雲。
さわやかに風が吹く。
私は学校の中庭のベンチに腰をかけていた。
私の手には手にはカード。
私はそれを眺めていた。
『沙羅×乃恵瑠』と書かれたカード。
沙羅ちゃんと乃恵瑠が楽しそうに笑っている絵が描かれている。
カードの隅にはHR(ハイパーレア)との表示。
カードは装飾も豪華で値段をつけたら高そうな雰囲気だ。
これは朝起きたら私の部屋の机の上にあったものだ。
明らかに超常現象。
神の野郎の仕業だろうか?
私は渋い顔をした。
もー!
わけがわからん!
私は足をバタバタとさせる。
相手の意図がわからずに放り出されるのは苦手だ。
せめて敵か味方かだけでもはっきりして欲しい。
亜矢ちゃーん!
混乱する私の方へ沙羅ちゃんが手を振りながら歩いてきた。
沙羅ちゃんのお腹は大きく、転んでしまわないかと少しハラハラする。
やっほー沙羅ちゃん♪
私も手を振り返す。
私は内心ハラハラしながらもなにもないかのように振舞った。
そういう気の使い方もあるのだ。
あれから私は大活躍だった。
私は地下駐車場の駐めてあった修ちゃんが剣持くんから奪った族車仕様のバイクを奪うと、木刀片手に学校を襲撃。
おどりゃあああああああああッ!
理事長出てこいやあああああッ!
ポリスに通報されながらも、不正の証拠を全部そこでぶちまけた。
……そして捕まった。
そして一週間の停学という名誉の負傷と引き替えに学校の首脳陣を(社会的に)成敗したのだ。
甚だ遺憾ながら、警察は家の権力でどうにかした。
さすがに実質的なオーナー一族の娘が学校で暴れたら調査の一つも入る。
すべて計算通りだ。
……今、嘘ついた。
実はなにも考えてなかったのね……
……まあでも結果オーライだ。
バーコードハゲはクビ。
バーコードハゲから賄賂をもらっていた理事どもは全員辞任……を強要された。
要するにクビだ。
さらに『ああコラァ、マスコミに垂れ込むぞ? ああんいいのか?』と、親父を脅迫した私は、沙羅ちゃんの学籍をも勝ち取った。
さらにどさくさ紛れに沙羅ちゃんのお父さんの地位も確保したのだ。
もちろん沙羅ちゃんのお父さんには、恩に着せて意思を無視してムリヤリ親子関係を修復させてもらった。
脅迫したとも言う。
ふふふん♪
ワタクシの勝ちですわよー!!!
残念なことに王子の実家である高藤は罪を免れた。
横流しも高藤が主導するには安すぎるし、なにより高藤が主導したという証拠はない。
白瀬の技術だって高藤が狙うには安すぎる。
素直に金を出して会社ごと買った方が安上がりだ。
それに親父の話では、高藤の方も関係者を厳正に処分して、非常に誠意のある対応だったということだ。
弁護士でも立てて偉そうにしてくれれば、嫌がらせの一つもできただろうが、神妙にされたら逆にどうしようもない。
ただ一つわかったのは王子はただの正義野郎ではないということだ。
一周目の私の実家の没落に何か関係しているかもしれない。
これから要注意だ。
少しスッキリしないが今回はこれでいい。
私の目標はあくまで沙羅ちゃんを助けることなのだから。
テストだったら100点満点で95点という所だろう。
そう、沙羅ちゃんは学校をクビにされて、いきなり社会に放り出されることはない。
親子関係も修復した。
聞いた話では沙羅ちゃんの父親は涙ながらに沙羅ちゃんに謝罪したということだ。
沙羅ちゃんは退学を免れ、私は未来を変えたのだ。
沙羅ちゃん。
本当に学校休学するの?
うん。この子を産むのに専念するんだ。
そう言うと沙羅ちゃんは愛しそうにお腹を撫でた。
学校には戻ってくるの?
うん。
出席日数は足りないけど、先生は九月卒業でいいって。
そっか。
ところで白瀬のアホは?
もう亜矢ちゃん!
白瀬くんはアホなんかじゃないよ。
ちゃんと謝ってくれたんだから!
沙羅ちゃんは白瀬とヨリを戻した。
卒業後に結婚する予定らしい。
いろいろと思うところはあるが、本人が幸せなら私は口を挟む気はない。
あの野郎、沙羅ちゃん泣かせたらどうしてくれようか?
とか、思うが今は口を挟まない。
テヘペロ。
亜矢ちゃんも馬淵くんと幸せにね
亜矢ちゃんがニコッと笑い、私は頭を垂れた。
だうーん……
沙羅先生……私の好感度はすでにMAXなのですが、どんなにがんばっても修ちゃんのフラグが立ちません……
なぜだー!!!
ふふふ。
そんなことないと思うよ。
だって亜矢ちゃんは王子様だから♪
んま!
王子様!
今、少しアイデンティティが揺らいだ。
自分ではお姫様のつもりなんだけど……
だから馬淵くんは恥ずかしがってるだけだと思うよ
そうかなあ?
おかしい!
それにしては誘惑しても鉄壁の防御で阻まれてるッス。
ヤレヤレ系ヒーローはチョロインに弱いってアニオタの山岡さん(50歳、製造業)が言ってたのに!!!
なぜ修ちゃんは数々のフラグを叩き折ってくるのだー!!!
私はチョロインなんだぞー!!!
ふふふ、自信を持って。
亜矢ちゃんはステキな女の子だよ。
あ、ほら、馬淵くん来たよ。
沙羅ちゃんがそう言うと修ちゃんが走ってくるのが見えた。
じゃあね沙羅ちゃん!
本当にありがとう。
沙羅ちゃんはそう言うと戻って行く。
最後に私が手を振ると、沙羅ちゃんも手を振り返した。
お幸せにね♪
彼らに幸あれ。
私は心の中で祈った。
私は沙羅ちゃんと別れ修ちゃんの方へ行く。
汚嬢様。
課題の提出終わりやがりました。
修ちゃんはいきなり機嫌が悪い。
『課題』というのは私と修ちゃんの停学中の宿題のことだ。
修ちゃんもバイクの持ち主だったので連帯責任で停学になったのだ。
それを少し根に持っている。
いや違う。
かなり怒っている。
ぶー。
いいじゃん修ちゃん。
大学行けなかったらうちに永久就職すれば。
主に婿として。
会社が存続すればの話だけどね。
お断りします。
笑顔で言いやがった。
あとで憶えてろ……
そうそう、私はもう一つ修ちゃんに言うことがあった。
あのさ修ちゃん。
なんですかお嬢様。
これからさ、またこういうことがあるかも……
そしたらまた巻き込んじゃうかも。
私、修ちゃんいないとダメダメだから……
ごめんね。
突如現れたレアカード、これで終わりだとは思えない。
たぶんまた騒動が起きると思う。
先に謝っておこう。
かしこまりました。
どこまでもお付き合いいたします。
修ちゃんは笑顔でそう言った。
これが萌えゲーだったら私のハートが大量に舞って、好感度がいきなりMAXになるところだ。
いいの?
もちろん。
だってお嬢様は無敵ですから。
そう言って笑う修ちゃんの顔はとても格好いい。
修ちゃん。これからもよろしくね。
はい。お嬢様。
そう言うと私は修ちゃんの手を握った。
修ちゃんも優しくそっと握り返す。
ありがとう。
修ちゃんがいてくれてよかった。
お、おう。
なぜか修ちゃんは照れている。
なんだちゃんと女の子だと見られているじゃないか。
と、私は笑顔になる。
ああ、そうだ。
私は何があっても砕けない。
修ちゃんは私を無敵だって言ったけどそれは間違っている。
私たちは二人だから強いのだ。
これから先、何があっても修ちゃんと私なら乗り越えられる。
二人なら乗り越えられる。
神様にだって負けない。
だって私たちは二人で無敵なのだから。
汚嬢様は砕けない! ~完~