なんだか悔しい気持ちでいっぱいのところに石川くんの姿が見えた。ただ…1人じゃなくていつもの如く女の子達が群がってる。


けれどそれでも私の姿を見つけるとジーッと服を見つめて口を動かした。









読唇術は極めていないけど私が読み取ったのは多分それ。


え!?ここでぽろり!?
は、ハードル上げてきましたな。師匠!!!


ゴクリと息を飲む私にうんうんと頷く彼


さっき大ちゃんを見返すって決めたじゃん。ここはやっぱり師匠の言う通りに!!

石川 翔平

ほら……約束した子は後で相手をするから離れて



私がどう自然にぽろりするか悩んでいたところ、石川くんのそんな声が聞こえる。見ると女の子達が追い払われていた


…みんな残念そう


彼女達がいなくなったのを確認した後、師匠はこちらに歩いてくる


あ、まずい。
早くしないと。

チラホラ男の子たちがいる中、慌ててボタンを外そうとすると、不思議そうな顔した彼に手を掴まれた。


石川 翔平

……どうして脱ぐの?

間宮 朱里

師匠がぽろりとおっしゃったので!!

石川 翔平

え、いや…違う違う。エロいって言ったんだよ




エロい?


さっきの口の動きは”エロい”だったのか!!

石川 翔平

こんなところで脱げなんてバカなこと言わないよ

間宮 朱里

えへへ。そうだよねー!



誤解だったことにホッと胸をなでおろすと、石川くんは私の手をギュッと握り直し何かを確かめるようにしてから口を開く


石川 翔平

朱里……なんだか熱いね



そしてもう片方の手でおでこに触れられた。

間宮 朱里

あ、これは緊張と興奮で熱いだけだよ!すごく火照ってるの



昨日の夜からこんな感じだもんね。今日のことで心臓がバクバクしまくっていたし。


だけど石川くんは真面目な顔で見つめてくる

石川 翔平

……ほんとに?寒気はない?

間宮 朱里

寒気?



そう言えば昨日はずっと師匠の素晴らしさにゾクゾクしてたけど……まぁそれはやっぱり興奮のせいだよね

間宮 朱里

全然大丈夫!!あのね……じつはさっき元彼を見かけて、怒りもプラスしちゃったから体温があがったんだと思うよ。




そう言ったのは良いけれど、改めて考えるとなんだか身体が怠い気もする…。まぁでも心配かけちゃうのは…悪いよね。


なんて思ったのでいまだ離してもらえない手を引く。しかしさせないと言わんばかりに更に強く握られてしまった。

石川 翔平

おいで。

間宮 朱里

え、あ、え?



そしてそのまま優しく引っ張られ2人で歩き出す。

間宮 朱里

い、石川くん?

石川 翔平

保健室に行くよ

間宮 朱里

え!?でも修行は!?きたばっかりだよ!私は大丈夫!



私が少し大きめの声でそう伝えても、それを無視してスタスタ歩き保健室がある方向に進んでいった。

間宮 朱里

ば、バカは風邪ひかないよ!大丈夫だよ!!

石川 翔平

………



二ヘラと笑っても聞いてもらえず。
風邪なんてもう何年も引いてないから絶対違う気がするんだけどなぁ



そう思ってはいたけれど、聞いてもらえないから仕方ない。素直に石川くんに身を委ねた。




保健室に到着すると男子人気の高い色っぽい先生が

あら?

なんて私達を見る

石川 翔平

熱計らせてくれますか?



石川くんの手がやっと離れると、そのまま椅子に誘導されて座らされた。


……保健の先生が石川くんをみてるのが気になったけどまぁいいや。


体温計を脇の下に挟まれ、ピピっと電子音がなると先生が確認する

37.3度ね。




連れてきてもらった割に大したことない熱。平均体温も高いほうだし、やっぱり風邪じゃないかな。

間宮 朱里

やっぱり緊張と興奮だとおもう。



何故か側にいてくれる石川くんにそう言えば納得いかないような顔をしていた。

石川 翔平

これから上がるんじゃないかな?体調は大丈夫なの?

間宮 朱里

うん。大丈夫!講義は単位ほしいやつだし、修行も頑張りたいもん



最後はニコリと笑ってみたが、少しだけ身体が怠い自覚があるのは言わない。


見返したいもん。あんな悔しい思いして泣き寝入りしてる場合じゃない!!

石川 翔平

そう。ならいいんだけど。


石川くんがそう言ってくれたけど、私はその顔に見惚れるより気になることが一つあった。


この保健の先生の視線


女の勘が正しければ嫉妬が混じってる気がする。

石川くんが女の子連れてくるなんて珍しいわね



ほら。なんだか言い方もチクチクするし……

石川 翔平

……嫉妬ですか?

やだわ。思ったことを素直に言っただけよ

石川 翔平

この子は……そう言うのじゃないけどね。



この2人の雰囲気にただの生徒と先生でないことを察知した私はすかさず空気を読んだ。

間宮 朱里

私そろそろいくね!!



ねぇ師匠。
こんな大人の保健の先生まで嫉妬させるなんてさすがだよ。かっこよすぎだよ!!



心の中でかなり興奮気味。ほんとはもっとやりとり見ていたいけど我慢だね。

石川 翔平

歩ける?俺一緒にいくから。

間宮 朱里

いや、大丈夫!ほんとに大丈夫!



石川くん気付いて!!
私ものすごく睨まれてる!!

石川 翔平

でも…

間宮 朱里

いいんです!楽しんでください!師匠!



逃げるようにカバンを持って私は2人を残し、保健室を出たのだった。


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