A2Z回路。
 時空移転式。
 位相計算。

ぜんっぜん分かんないんだけど

アレマ=ソリャタイヘン

 サマーシャ(in博士の身体)は、巨大機械のモニターと大量の手書き資料とを、交互に見比べていた。

 見たこともない言語で書かれたそれの、意味するところは何故かなんとなく分かる。

 意味は分かっても、内容が分からない。
 読めるけど理解ができない。


 なんだか頭が痛くなってくらくらしてきた。

これをもう一度動かせば良いんだよね。でも、設定を調節しなきゃいけないって……どこをどうすればいいの?

ソノ演算処理ハ=ワタシニハ=不可能デス・ワタシハ=予定通リノ帰還操作=シカ=デキマセン

予定通りの操作じゃ駄目なの?

前提条件ニ=相違ガアリマス・駄目ナ確率=97.6%=デス

けっこう駄目ってことだよね、それ……えぇー、困ったなぁ~。早く戻らなきゃいけないのに

 今日は初唄祭の日なのだ。
 精霊様に唄と舞を披露して、部族の一員として認めてもらう日。

 太陽が沈むまでに帰らなければ――絶対に。

がんばれ博士! なんとか思い出すの! むむむむむーっ!

 モニターぎりぎりまで顔を近づけて睨みつける。

なんとなくこっち!
たぶんこう!

 ぱっと思いついたままに、適当に数式を書き替え、並び替える。

 もう身体の記憶と感覚を信じるしかない。

やるしかないよ、サンパチ!

幸運ヲ=祈リマス

第5話:博士、がんばれ

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