太陽燦々!
ハイパー
フレア
フラッシュ!!
うわああ!
その程度か!
サンサンダー!
まずい…!もう力が…
ふははは!!ついにお前も終わりだ!
くそっ…。雲さえなければ…!
みんな!大変!このままじゃ、サンサンダーが負けちゃう!
みんなの力で太陽パワーをサンサンダーに!
さあ大きな声で応援しよう!
がんばれー!
あ!みんなの応援で空が晴れてきたよ!
うおおおおお!
なんだとっ…!
力が漲るっっ!!
くらえっ!
太陽燦々!
ハイパー
フレア
フラッシュ!!
ぐわあああああ
お疲れさんでしたー
あ、お疲れ、田川くん。これ
なんすか、これ
サンサンダーの傘
子供用じゃないっすか
そりゃそうよ。おっさんはサンサンダーのグッズ買わないでしょうよ
俺、もう、おっさんっすよ
そりゃ嫌味かい。まだまだ若いんだから。はよ彼女作んなさい
大きなお世話ですよ。じゃあまた。失礼します
俺は田川龍平。
ヒーローショーのスーツアクターをやっている。
大学の頃始めたバイトをずるずると。
気づけば大学を辞め、
『俳優を目指す』という大義名分のもと、
定職にはついていない。
26歳。別に人生やり直したいとも思わない。
日々の暮らしは充実なんかしていないけど、
何もないならないで、別に不自由もしない。
ヒーローってのは孤独なもんだ。
俺の孤独は役作りなんだ。
そう自分に言い聞かせてる。
一雨きそうだな…。傘持ってきてないや
…
この傘はないでしょう…。さすがにサンサンダーのロゴ入りはきつい…
てか小さすぎて…
言ってる側から…!
もういいや…。どうせ家帰るだけだし、濡れちまえ
ああ…。この前買ったジャケットなのに…
…お。結構水はじくな…。全然濡れないや
…
…
?
全く濡れないな
雨降ってるよな
俺だけ濡れてない?
なんで?
そりゃ僕のお陰さ!
!?
な、なんだ!おまえ!
お前とは失礼な!
僕はアマサラシ。
雨から君を守る妖怪みたいなもんさ
はあ…!?妖怪?
あんまりでかい声でしゃべんない方がいいよ。おかしな人に思われるから
え、あ…
僕の姿は君にしか見えない。そこんとこよろしく
なんで、そんな妖怪が俺のところに?
うーん…。大した理由はない!
ええ…
強いて言うなら、可哀想だったから
可哀想?
常に金欠で、
これといって楽しみもなく、彼女もいない。
絵に描いたような非リア充の君が可哀想で、可哀想で。
せめて雨にくらいは濡れずにすめば、と思ってね
…
まあラッキーだよ!僕が人間につくことなんてそうそうないんだから!
これで今日から君も晴れ男!
自分の周りだけが晴れても、意味ないよ…。晴れ男ってそういうことじゃないでしょうよ…
まあまあ。他にもいいことあるよ。そのうち
いいことって…
・・・
…あ、みひろちゃん
みひろちゃん…?
高校の頃の同級生で…
初恋の人?
そうそう……って、ち、違うわいっ!
ふーん。あ、彼女、傘持ってないみたいだよ。駅前で雨宿りしてる
ほんとだ…
ほら!あんた出番だよ!
え?
あんた濡れないんだから、彼女を家まで送ってやんなさいよ!
はあ?久しぶりにあったのに、いきなり家まで行くのは…
てか、お前のこと見えないのに、なんて説明すればいいんだよ!
まあそうか…。…じゃあその傘は?
この傘か…
相合傘…
ちげーよ。相合傘じゃなくて、その傘あげちゃうの
そしたら、俺の傘は?
だからあんた濡れないでしょ?いい加減覚えて
あ、そうか…
でもこんな傘…
ないより、あった方がマシ!
ほら、はやく!
わかったよっ…
やあ、久しぶり
あれ…。田川くん?
あ、覚えてくれてたんだ…
もちろんだよ!久しぶり!元気してた?
まあ…。そんなことより、これ
え、傘?
悪いよ。
田川くんが濡れちゃう
いいんだ、俺は濡れないし
…濡れない?
あ、いや、その…。俺は大丈夫だから!じゃあね
え、田川くん…!ちょっ
これでよかったんだろ?
さあ
さあってなんだよ!
トトロのカンタみたいだったね
うるせえ
つづく…