あのオフ会から一週間が経とうとしていた。

僕はバイトとレポートの提出で忙しく、オカ研にも顔を出さず、村本先輩にも会っていなかった。

あの時の事すら忘れかけて来てさえいたのだ。


──だが
村本先輩から今日届いた一通のメッセージ……。


それを見た途端、僕は体が一気に総毛立ち、オフ会の時の事を鮮明に思い出した。

キヨが死んだ

今日は、大学が休講で僕は一人自宅で昼過ぎまで寝ていた。

メッセージは午前中に来ていたみたいだ。



僕は、急いで村本先輩の携帯にかけた。
電話は3コール目で繋がった。

宮田か?

あっ、あの、先輩、キヨ君が死んだって
どういう事です!?

オマエ、ニュース観てないのか?

観た方がいい……今テレビつけられるか?

えっ?
はい、ちょっと待っていて下さい……

僕は急いで部屋のテレビをつけた。


タイミング良く、ワイドショー番組の中でニュースを伝えているところだ。

今朝、都内で背中を複数回刺された重体の男性は、先ほど死亡が確認され……

ウソだろ……

被害者は現場近くに住む 

尾形 清彦さん25歳

そこには、この前会ったキヨ君の顔写真が映っている。

アノ女の言った通りだ……

いっ……いや

ただの偶然かもしれないですし……

先輩はしばらく黙ってしまった。

先輩……?

……さっき、アノ女から


メッセージが来たんだ……

えっ……?

なんだかとても


嫌な予感がした。

……夢を……見たって……

ゆ、夢!? 夢ってまさか……

また、あの時のメンバーの中で誰かが……


死ぬって……

えっ!?

それで……
この前のメンバーをもう一度

集めてくれって……

そのあと、先輩は僕の予定を聞いたり、集合場所を指示して話し続けていたが、僕にはもうその先輩の言葉はなんとなくしか頭に入って来ない。




ただ、この前のメンバーの中の誰かがが死ぬという事を聞いた時、僕の頭の中で……



あの女の言葉がぐるぐると駆け巡っていた。

死出への旅は避けられない……

翌日──


この前と同じカラオケ店にみんなが集まった。

…………

…………

…………

みんなの表情は戸惑いと不安、そして次は誰が指名されるのかという恐怖に怯えているようだ。
誰も口を開こうとはしない。

そんな中、アザミだけが落ち着いた様子でいるのがなんだか気味が悪かった。

…………

あっ、あの……
また夢を見たって本当ですか?

この空気にたまらず僕は、アズミに直球の質問をした。

はい。

あの人があんな事になりましたので、念のため皆さんにはお伝えした方が良いかと思いまして

淡々とした口調だった。


何故、こんな落ち着いていられるのかが、不思議だった。

でも、それが誰なのか聞くか聞かないかは
また皆さんに委ねます

僕らは顔を見合わせた。

誰なのか聞きたい気持ちと、それがもし自分だったらという恐怖。
その二つの思いに、どうやらアザミ以外の全員の気持ちが揺れているようだ。

そんな中、先輩がポツリと呟いた。

なんでオレらの中で立て続けに……

それは確かに、僕も思っていた。

一人までなら偶然、しかし、二人目ともなると……



いや、それ以前にこの二人目の夢というのが実際そうなるという確証もないのだが……。

さぁ、それは私にもわかりませんけど
もしかしたら、私たちが出会った事が

スイッチなのかもしれませんね

スイッチ?

運命というものには、スイッチがあるのです。

そのスイッチが入る事で人はそれぞれ自分の運命へと導かれる。

スイッチは様々な所にあります。
それが人との出会いであったり、どこかへ行くことであったり……

じゃあ、僕らが出会った事で

その……運命のスイッチが入ったと?

かもしれませんね

また、僕らの間で沈黙が流れた。

あの……
じゃあその、死を防ぐ事って出来ないんでしょうか?

死を防ぐ……!!
そ、そうだよ、事前に死ぬ事がわかるならその分危険な事に気をつけていけば……
も、もしかしたら……

そんなの……
どんなとこにだって危険はあるし…… 
全部なんて回避出来るんでしょうか……?

それに……

あの時の言葉……
『死出への旅は避けられない』
確かに、あの時そう言っていた……
死出への旅が、もし死ぬという意味なら……

死を回避……

出来るかもしれませんよ

えっ!?

ほっ!? 本当に?

例えば……
何か自分の普段選択しない事を選択したりすれば、運命は変えられる事もありますから

変えられる……?

そ、それなら教えてもらった方が良いんじゃないか?

そっ……そうよね……

本当に死を避けれる事が出来るっていうのなら……知っておく方が良いのかも……

…………

そ…そりゃ……
本当に避けられるならそうですけど……

お、教えて欲しい!

わ、私もっ!

わかりました

そして、アズミが次に死ぬ事を宣言したのは





香奈恵さんだった──

うっ……うぅっ

大丈夫、落ち着いて
死を避ける事は出来るんだから!

う、うんっ……
いつもと違う選択をすれば良いんでしょ?

そうですよ。

ツクヨミさんとアナタはお付き合いされてますよね?
まずは、お二人が別れるというのはどうでしょう?

えっ!?

……!?

知らなかった。

二人がそういう関係だったとは……。

それとも僕が知らなかっただけで、この中では皆知っていたのか?

そ、そうなんですか!?

サキちゃんもどうやら知らなかったみたいだ。

どうして知って……!?

わ、私言ってないわ……

お、オレだって誰にも……

もしかして、二人も秘密にしていたのか!?


じゃあ、何故アイツは……

このまま、お二人が付き合い続けると

アナタ……
死にますよ?

ぞっとした。



その声色は、何かとんでもない力を持っている様に感じられたのだ。

宮田 アキラの章 ②アクム

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