休日の昼。家でごろごろとマンガを読んでいた俺は突然彼女に呼び出された。先日家に遊びに来た時から様子が変だとは思っていたけれど……こんな急に呼び出すなんて何の用だ?
 そんな事を思いながら、待ち合わせ場所のファミレスに行くと彼女のほうが先に着いていた様で席に座っているのが確認できた。

ごめんごめん、お待たせー

 いつも通り、努めて笑顔でそう言いながら彼女の前に座る。パッと視線を上げた彼女は不安そうに俺を見た。

どうしたの今日は? 君からお誘いなんて珍しいね?

ごめんね急に? 仲西くんの顔が見たくなってね……

 彼女は笑顔で言うが、どことなくぎこちない。顔が見たくなって呼び出したと言うのはたぶん嘘だ。

そっかー、何か用があったのかと思ったー

……あ、あのね。本当は聞きたい事があったの

 あ、やっぱりね。そう思いながら俺はメニューを手に取った。
 と言うか、何かデジャヴ……。最近こういう事が多い気がするぞ?

こないだ仲西くんのお家に遊びに行ったでしょ?

あー、うん。そうだね~

 やっぱり家に来たときに何かあったんだな……。

その時弟くんに会ってね、言われたの……

 昂騎に会ったのか? 俺が部屋に行っている間かな? 何を言われたんだ……? アイツなら俺が破滅しかねない発言をするからな。

な、何て言われたの?

……アンタ何番目? って言われた。もしかして、仲西くん浮気してる?

 ……昂騎ー!! お前っ、何つーこと言ってくれてんだぁぁああ!

私ね、仲西くんのお友達のI・Oさんに聞いたんだけど……仲西くん女の子用のケータイ持っているんだよね?

 俺の友達のI・Oって……伊月かぁぁああ! 何? あの二人結託して俺を陥れようとしてんの?

ん? んー? どうかなー?

ケータイ、出して

 偏差値が最底辺の俺の脳じゃ言い逃れできないと思い、素直にケータイを出す事にした。

本当にあったんだ。……浮気してたの?

いや! してないしてない! メアドとか渡されるから、全部こっちに入れてるだけ! 君のは、ちゃんとした方に入ってるから!

……

 それを聞いて、彼女は黙った。黙ったまま机の上に置かれたケータイを見ている。すると自分のケータイを鞄から出し、俺の顔を見た。

仲西くん、さっきから私のこと〝君〟って呼んでいるけど……名前忘れちゃった?

 はい、来ましたー! 勘の良い人ならうすうすこの事に気付いていたでしょう!

覚えてる覚えてる! えっと……ミホちゃん?

 俺は努めて笑顔で返した。大丈夫、これであっていたはず。この根拠のない自信がどこから来るのかは分からないけれど……。

……そう

 彼女はそう言うと、ケータイで何かを操作し始めた。程なくして、俺のケータイに着信があり名前が標示される。画面には無情にも〝ミキちゃん〟と出ている。

私の名前、ミキよ?

っあー! ミキちゃん! おっしぃー! 一文字違いか!

ホント、惜しかったねー! ……じゃないわよ! 最低!!

 なんて言いながらミキちゃんは手近にあったコップを持つと中の水を俺にかけようとした。……が、俺はそれを前にあったメニューで防いだ。

なっ!?

残念ながら、今月に入って四度目なんだよね……こういうの

 忌々しそうに俺を睨むと、ミキちゃんは走って店を出て行く。ふぅ、と溜息をついていると、どこの席に居たのか派手なシルバーゴールドの髪のヤンキーが近付いてきた。

いやぁ~、今回は最短だったなぁ~

伊月お前何ケータイのことバラしてんだよー!

 彼女の情報収集に一役買ったくせに、他人事みたいに言いやがってコイツはー!

で? 次はどうすんの?

ナオちゃんっていうめちゃくちゃ大人しい子いるから、次はその子落とすわー! もう邪魔すんなよなー?

 そう言うと伊月は『どうかなー?』などと言いながら笑った。

至上最低なゲーム

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