かつてこの古城は、辺り一帯を統べる領主のものだった。
その頃、レオンティウスはまだ人間だった。好色だった領主が侍女の一人に産ませた子供であり、城を追い出された母と城下町で暮らしていた。暮らし向きは決して楽ではなかったが、恵まれた才知と容貌から友人も多く、ささやかながらも幸いな日々を過ごしていた。
だがレオンティウスが二十五歳になったばかりのある日、全てが狂った。領主の正妻が流行病で急逝し、領主自身も三日三晩高い熱に魘された。病に伏した領主は老いと死に怯えるようになり、その恐怖につけ込むように誰かがそっと囁いた。