香谷里見

アイドル大賞を決める歌謡祭…
会場もだんだんと広くなってきましたね。お客さん何人いらっしゃるんでしょうか

香谷里見

みんなの心をひとつに合わせれば、きっと大勢のお客さん達に心を届けることができるはずです!

トキコⅢ

ココロ…? そんなものは無意味です。単なる有機的パルスの連鎖… 脳が夢見るバグ・コンプレックスです

トキコⅢ

心 魂 気合 根性 愛 友情…
そんなものは感情の関数にすぎない。そんなもので勝利することは不可能…

トキコⅢ

博士の最高傑作、トキコⅢの処理能力なら、このアリーナ全体のファンの感情係数を最適化することも可能です

香谷里見

は…初めてロボットらしい言動を…
でも、心をデータ化するなんて、簡単にはできないって思いますけど…

トキコⅢ

人間もまたタンパク質の機械にすぎない。ヒトの心よりも、トキコⅢの人工頭脳がはるかに優秀だと証明しましょう

トキコⅢ

私の人工頭脳にはすでに、このアリーナの観客のデータがすべてインプットしてあるのです

香谷里見

ま…待ってください、インプットって… まさか今日の観客全員の顔と名前を覚えているってことですか!?

香谷里見

そ…そんなこと人間にできるはずが… まさかトキコちゃんは本当のロボット…?

香谷里見

いや…違います! これは恐るべき努力と執念…その結果! アイドル大賞歌謡祭のためにそこまで…!

トキコⅢ

私は情報を吸収し、成長しました。その結果、学んだのです

トキコⅢ

勝利に必要なのは心ではない。圧倒的な情報量とその処理能力… 精神論では頂点に昇れないのです

トキコⅢ

もちろん、あなた達のデータもすでに取得済みです。私の勝利確率は99パーセント…!

トキコⅢ

さあ…勝負です。アイドルの頂点に立つ者は人間か、それともロボットか…!

香谷里見

プロデューサーさん、トキコちゃんの言っていることはよくわかりませんけど、このライブ、絶対に負けられません!

香谷里見

やりましたね、プロデューサーさん!
やっぱり最後に勝つのは、熱いハートです!

トキコⅢ

そんな…どうして
私のデータは完璧だったはず…
なのに私の予想を上回るなんて…

トキコⅢ

まさかあなた達は、ライブの中で成長したとでも言うのですか?

香谷里見

人間は生きているその一瞬ずつに成長していくものなんですよ、心と心を通じ合わせて…

トキコⅢ

心…それは単なるバグでしょう
今も私はライヴの敗北による『悔しさ』というバグに苦しめられている

トキコⅢ

…敵グループのプロデューサーが私に何か言うつもりですか?

トキコⅢ

え…?
『悔しさ』以外のバグはないのか…と?

トキコⅢ

…あります
大舞台で歌えたこと、ファンの声援、強敵との出会い、それら全ての『喜び』が…

トキコⅢ

この『気持ち』強く育てて、いつの日かあなたがたと再戦しましょう

トキコⅢ

人間らしい感情を手に入れて、私はもっと強くなりますから!

香谷里見

その調子です、トキコちゃん!
トキコちゃんとの再戦の日、楽しみにしていますね!

~ つづく ~

48|第20章 アイドル大賞(3)

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