それから。
彼女は何故か、恋愛小説を書かなくなった。
先生、今回の作品も好評ですよ!
「私もあの小説みたいな恋したい~!」
って、ネットでも話題になってますし!
そう、それは良かったわ……
ふう……
あれ? どうしました?
あまり嬉しそうじゃありませんね……
――あのね、私ね、これまで恋愛物だけ
じゃなくて推理モノとか、ホラーとか、
色々な作品を書いてきたじゃない?
はい、どれも毎回作風が全く違って、
でもどの作品もリアリティがあって――
違う、ちがうのよ!
だってあれ、全部空想ですもの。
実体験や本音は、恥ずかしくて文章に
なんて書けないの……
未経験のことなら所詮、
架空の出来事。
何でも書けるのよ――って、
私、駄目な作家ね……
いえ、そんなことないです!
僕は大好きです!
えっ?! あっ、ちょっ、
手、手、なに握って、
先生の作品!
大好きですから!
担当できて本当に幸せです!
あ、あ――作品ね、作品!
はは、うん、ありがとう、
――――――ははは……
それから。
彼女は何故か、恋愛小説を書かなくなった。