先生、今回の作品も好評ですよ!
「私もあの小説みたいな恋したい~!」
って、ネットでも話題になってますし!

 そう、それは良かったわ……

 ふう……

あれ? どうしました?
あまり嬉しそうじゃありませんね……

――あのね、私ね、これまで恋愛物だけ
じゃなくて推理モノとか、ホラーとか、
色々な作品を書いてきたじゃない?

はい、どれも毎回作風が全く違って、
でもどの作品もリアリティがあって――

 違う、ちがうのよ!
 だってあれ、全部空想ですもの。
 実体験や本音は、恥ずかしくて文章に
 なんて書けないの……

 未経験のことなら所詮、
 架空の出来事。
 何でも書けるのよ――って、
 私、駄目な作家ね……

いえ、そんなことないです!
僕は大好きです!

えっ?! あっ、ちょっ、
手、手、なに握って、

先生の作品!
大好きですから!
担当できて本当に幸せです!

 あ、あ――作品ね、作品!
 はは、うん、ありがとう、

 ――――――ははは……

それから。

彼女は何故か、恋愛小説を書かなくなった。

その5:その作品はフィクションです

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