電車の扉が開き、ドッと大勢の人たちが降りていく。
 その群衆に紛れて、疲労感一杯の表情を浮かべた27歳の女子もホームに降り立った。

あー、お腹空いた。ご飯、何しようかな……。

本日の仕事も終わり、家に帰宅中。
ただ家に帰っても、独身一人暮らしの家には誰も迎え入れてくれる人は居らず。

ということは、つまり……家に帰っても、ご飯の用意はされていないこと。誰かではなく、自分がご飯を作らないといけないということ。

うん、面倒臭い。
今日は、普段はデスクワークなのに手伝いで力仕事もしたから、もうクタクタ……。

どこかで食べて帰るか……。

 幸い、現在地は駅付近ということもあり、様々な飲食店が点在している。

牛丼……ラーメン……パン屋は、もう閉まっているか……。

 駅チカでお馴染みのチェーン店蕎麦屋の前で、足を止めた。

お、蕎麦。

蕎麦か……。でも、結構お腹空いているからな。蕎麦だけじゃ、物足りない……

 蕎麦屋の窓ガラスに貼られているポスターが目に入る。
 お得な丼セット!

丼と蕎麦セット……これよ!

丼は、もちろん……カツ丼ね!

 蕎麦とのセットの定番となれば、カツ丼。蕎麦とカツ丼は、王道のコンビだ。
 それに、蕎麦やカツ丼のランクが低くて(味が悪くと)も、セットというオマケ勘があるからなのか、それなりに我慢ができる理由にもなる。

 店に入ると、小奇麗な内装にテーブルや椅子も置かれており、客が数人程度居り、自分と同じ女性客も居た。
 こういう駅チカのチェーン店の蕎麦屋は、オッサンたちの溜まり場というイメージがあるだろうが、昨今では女性客を獲得する為に、それなりに力を入れている。店内は明るく綺麗に清潔が保てられて、女性一人でも気楽に入り易い雰囲気を醸しだしているのだ。

 さて、注文する(もしくは食券を店員に渡す)時に、蕎麦を冷たい(もり蕎麦)か温かい(かけ蕎麦)かを選ぶことが出来るのは周知の事実。

セットの時は、蕎麦は冷たいの方が私は好きなのよね。

 かけ蕎麦を味噌汁代わりにする人もいるだろうが、かけ蕎麦は味噌汁ではない。
丼飯を口に入れて、蕎麦の汁を啜る。何か合わない。どうも違和感が生じて仕方がない。

 それに熱いと冷たいを交互に食べた方が、より味が際立ち、味を楽しむことが出来る。と、個人的には思っている。

 三分ほどで注文したカツ丼セット(冷蕎麦)が出される。
 家で作ろうとなると、この何十倍も時間がかかるだろう。流石は日本の元祖ファーストフード店である。

 空いている席に座り、いざ実食!

蕎麦ズルズル、丼パクパク、カツをガッツガツってね。うん、美味しい!

 しかし、セットものは結構ボリュームがあるので、後半になると、味に飽きたり、満腹が近くて苦しくなってしまう。

うぷ。結構空腹だったからサラリと完食出来ると思ったんだけどな。
残すほどではないし、食べるなら最後まで美味しく食べるのが私の心情!

 カツ丼、蕎麦つゆ、漬物、薬味(ネギ、ワサビ)が、少々が残っている。

食べかけのカツ丼の器に、漬物と薬味を添えてから、蕎麦つゆをぶっかけると。
この状態でも食べられるけど、味が濃いから、ここでひとひねり。
“そば湯”を入れて、味の調整を行って……『蕎麦カツ茶漬け』の出来上がり!

サッパリと食べられし、味も変化しているから最後まで美味しく完食できるのよね。
蕎麦、カツ丼、そしてお茶漬け。まさに一石三鳥な食べ方ね!

 サラサラと流し込む。残っているカツの衣が出汁を吸って油っぽさは感じさせない。見事、米粒一つ残さずに食べきれたのであった。

ふー、ごちそうさまでした。お腹一杯。

……はあー、早く帰ってひとっ風呂浴びて、眠りたい……。

食欲を満たして店を出ると、真っ直ぐ家路を急いだのであった。

-終-

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