巨大なタワーへとつながる橋には多くのロボットが埋め尽くしていた。

ロボット達はじっと動かず立ち尽くしているが、みな同じ方向を向き、こちらへ寄るなと言わんばかりに無言の威圧を放っている。

その見つめる方向。タワーの対岸にはロボット達と対照的にあわただしく人が動きまわり話し声が絶え間なかった。

集まった人々はみな同じ制服を着込み不安を隠しきれない様子でこちらを見据えてピクリとも動かないロボット達へ視線を送っている。

しかし、その中にいて落ち着きはらい仁王立ちし、ロボットと向き合う男がいた。

その男は派手な赤い甲冑のような鎧を身につけおり、そのせいもあって周りの喧騒からかなり浮いていた。

何か様子に変わりあるか?

独り言のように男がつぶやくとしばらくして男の視界の隅に映像が立ち耳につけたインカムから声が流れてきた。

いいえ。
特に変わったことはないわ。
早朝ごろにタワーの警備ロボット達がコントロール不能。
その後タワーへの全入り口をロボットが占拠。
そしてこう着状態になってだいたい6時間。
原因は不明。
タワー中央制御室とのアクセスも切れていて
中の状況も不明。
あ、タワー内に人がいないことはわかったみたい。

了解。
街の様子は?
タワーとのリンクが切れたことで混乱が広がり始めてないといいけど。

まだ大丈夫そうだけど…。
タワーに頼りきっていた街の管理を人力で今はなんとか無理して維持しているけどパニックになるのは時間の問題だと思う…。

周りで騒いでいる警官達の慌て様はロボット達の不可解な行動だけが原因ではないのかもしれないと男は思った。

そういえば手がつけられないってことで警察が中央政府へ申請していた人員の援助のことだけど、正式に援助が決定したそうよ。
すでにこちらへ向かっていて到着するらしいわ。

ホントか!
これでやっとこの状況を動かすことができるかもしれないな!

そんな会話をしていると遠くから轟音が聞こえ始めた。

どうもこちらへ近づいてきている。

ふと、その場にいる全員が音のする方、上空へ顔を上げると大きく響いていた音は小さくなり紅白の色した何かがゆっくりと降りてきている。

そのうち形がはっきりとつかめ始め大きなウサギっぽいメカと緑の色し大剣、大砲をもった人だというのがわかった。

高い音をうならせながらすべるように滑らかに橋へとつながる広場に降り立つ大型の機械。

よくよく見るとその人は女の子だった。

その女の子はあっけにとられている周りの人々をゆっくりと眺めると、とりあえずもっとも派手で目立っていた鎧を着込んだ男に声をかける。

現場責任者はあなたですか?
武装可能な現場人員はいないと聞いていましたが。

いや、責任者はココにはいない。
俺はマシマ マサユキというものでこの街で自警団のリーダーをやってる。
このアーマーもその活動のためだ。
そちらは?

私は中央政府からの要請で派遣されました。
カグヤといいます。

自警団…ですか。
事前の情報にはそのようなものはありませんでしたが?
地方自治政府への申請はされています?

痛いところをつかれた、といった感じにマシマは苦い顔をする。

いや…。
ロボット防衛システムが導入されたときに予算の無駄だと結論付けられて…政府の機関としては解体されている…。

?!
ではここで堂々と武装して仁王立ちしてえらそうにしてたのにただの民間人ってことじゃないですか!
あつかましい!

カグヤのやや大げさな驚き方と「あつかましい」の言葉にマシマまムッとする。

あつかましくはない!!

だいたい、ロボットの無人防衛システムに頼りきっていたから警察はこの状況に対応できるだけの武装がなくなってて手が出せないんだ!
この装備だってずっと自費でメンテナンスしてきたんだぞ!
どんなに苦労したか…。

マシマの言葉に熱がこもる

これでやっとこんなこともあろうかと苦労してきたかいがあるんだ。
政府に認可されていなかろうと手伝わせてもらうからな!
ここがオレの新しいスタートなんだ!

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