生まれなかった
はじめまして、早苗です
唐突ですが、困ったことに――
う、うぅ……
空から老人が降ってきました
…………
…………
……帰ろ
待って!
うわっびっくりした
びっくりしたのはこっちじゃ! ワシを無視してどこへ行く!
いや……コンビニ……
コンビニより人命! あのまま放置されたらワシ死んじゃうじゃろ!
はあ……すいません……
なんだこいつ……
なんだこいつ
おい、声に出ておるぞ
なんだこいつ
わざとか! まったくこれだから最近の若者は!
で、実際どなたですか?
えっ? それ聞いちゃう? 聞いちゃう? どうしよっかなー。ワシ有名人じゃしなー。どうしてもと言うなら――
さよなら
――待って!
……チッ、しつこいなぁ。さっさとしてよ
分かった。話す。話すから。しっかり逃げずに聞いてくれるか?
まあ、聞くくらいなら……
話半分程度に
うむ、そうか……では話すが。実はワシ……サンタなんじゃ
ふーん、で?
やっぱり信じてくれんか……そうじゃよな……こちらの世界ではワシ――
マジで!?
いや、一目見れば分かるでしょ
普通分かっても信じんと思うが……
……しかし、なら話が早くて助かる。実は――
おじさん、さっきの落下で腰痛めちゃって仕事できないんでしょ。で、代わりのサンタを探してる
そう……先ほど持病のイボ――なんで分かったんじゃ!
いや一目見れば分かるでしょ
分からんわ! どこのエスパーじゃ!
しかし、有り難い。もしや、ワシはトンデモない逸材と出会ってしまったかもしれんの……。
そこまで察してくれたのなら当然――
まあ……
うむ……ぶっきら棒じゃが、決意のある眼差し。
まさか世界最年少サンタが――
――お断りします
生まれなかった