僕の住む街は、一年中雨が止まない。
国そのものの発展が均一化された現在、かつての地方都市の趣はもう無い。薄汚れたビルがいくつも樹木のように立ち並び、街はどこか灰色の森のように見えた。童話に出てくるような、魔女の住む森。
十二月七日、水曜日。
午後十一時十七分。
この街に雪は降らない。
冷たい雨が降るだけだ。
……この街には、ある噂がある。
夜遅くまで家に帰らない悪い子供は、神隠しに遭ってどこかに消えてしまう。
くだらない噂話だ。
神様は、そんなことはしない。
僕は手元に目を落とす。
固く握られた、血と雨に濡れた一振りの刀に。