惑星グラウにある地球ジャパニーズ風・酒場『コタツマニア』

宇宙のレディス・アンド・ジェントルメェ~ン! お待たせしました!
『第三回! ナーロックのオススメSF☆』開幕よ! ……って、ちょっとシンヤ、なによ、その弱い拍手は! もっと手から血飛沫が飛ぶぐらい拍手を……

どんな拍手だよ! 怖すぎだよ! っていうか、ナーロック、色々ツッコミどころが多すぎて、どこからつっこんだらいいのかわからないんだけど……

あらあら、私はいつでもどこからでもOKよ。さあ! 心配はナッシング!少年よ! 私の広い胸に飛び込んでらっしゃい!

……さてと、帰りにミズキの好きなパンでも買おうかな

待って。本気で帰ろうとしないで。真面目に進行するから

いたたたっ! わかったから! 腕を離して! 骨がミシミシいってる!

やあねぇ、軽く掴んだだけじゃない。大げさね。それで、私のどこにツッコミを入れたいの?

え~と……なんでお前は金髪アフロにラメ入りスーツなんだとか、どうして前回以上にハイテンションなんだとか……

それは……一杯ひっかけてきたからよ!

仕事前に飲んだのかよ! ダメだろ! それ!

さあ! 第三回はアイザック・アシモフのSFミステリ三部作で有名な『鋼鉄都市』よ! 三部作の第一巻ね

(小声で)無視するなら、訊くなよ。でも、結局、アイザック・アシモフの小説『鋼鉄都市』か。どんな話だっけ?

宇宙への移民が進んで、親元の地球が文明の遅れた病原菌の固まり扱いされてる世界。……まあ、私達とは反対ね。ある日、惑星・オーロラの博士がロボットに殺される事件が発生! ロボットによる殺人というロボット三原則に反する前代未聞の事件。この事件解決を託されたのは……地球人の中年刑事・イライジャ・ベイリとアンドロイドのダニール・オリヴァー! あっ、ダニールはオーロラ製ね。事件が解決できなければ、オーロラとの仲が悪化して、地球に住む人間の存亡の危機よ

ロボットによる博士殺し? どこかで……あっ! 映画の『アイ・ロボット』だ!

その通りよ! 映画の『アイ・ロボット』は、アシモフの短編小説『アイ・ロボット』とミステリSF小説『鋼鉄都市』を掛け合わせた感じの映画なのよね

じゃあ、ベイリはウィル・スミスみたいな刑事なんだ!

……いや、あんなにアグレッシブな刑事じゃないわ。最終的に優秀な刑事なのは、間違いないんだけどね

最終的に?

このベイリという男が、奥さんと息子もいるんだけどね。まあ、ちょっと気難しいというか、刑事としての責任感とタフさ、僻みっぽくてグチグチ悩む繊細な部分を兼ね揃えた、思春期ボーイみたいなおじさんなのよ。ダニールに大人げないし

思春期ボーイみたいなおじさんって……大丈夫かよっ? 地球は!

仕方ないのよ。ベイリには多くの地球人と同じく、ロボットとオーロラの両方に対するコンプレックスと反感があったのよ。この負の感情は三部作を通して、ベイリがグチグチ悩む根底になるんだけどね。
おまけに、彼は天才的頭脳を持ってないわ。どちらかというと、刑事としての地道な捜査と洞察力、そして、悩んだ末に絞り出す閃きが売りね。悩んだ末に絞り出す閃きだから、途中で間違った推理もするのよ

この鋼鉄都市でも誤認逮捕とかしちゃったのか?

誤認逮捕はしてないわ。ただ……オーロラのお偉いさんも呼びだして、思いっきり間違った推理をドヤ顔で披露した挙句、その場で間違いだとアンドロイドのダニールにつっこまれたのよ

うわぁ……イタい

ええ、イタいわ。もう刑事クビを覚悟した程よ。でもね、ベイリはグチグチ悩んだり自虐的になったり、やさぐれたりしながら、真相に辿り着くのが醍醐味なのよ

なるほど。ベイリの見どころはよくわかったよ。それで、結局、どうしてロボットは博士を殺したの?

それはね……読んでからのお・た・の・し・み! ミステリーの結末をバラすほど、罪深い事はないわ

ええっ? ここで終り?

そうよ。このコーナーは紹介であって、ラストはご自身で確認して欲しいのよ。っていうか、是非! 読んで欲しいのよ

わかったよ。それじゃあ、次回はなに紹介するんだ?

そうねぇ……シンヤは何がいいかしら?

僕? 僕は……『スターウォーズ』がいいな。あのフォースの戦いが好きだな

う~ん……『スターウォーズ』はアレ、長すぎて紹介に迷うのよ。もちろん私も好きよ。オークションでファミコンソフトを買った程よ。ハードが手に入らなくて、売り飛ばしちゃったけど。名作だけあって、倍で売れたわ

ハードないのに、何で買ったんだよ……。それに、長すぎるのが嫌だったら、どうしてSFミステリ三部作って言われてる、『鋼鉄都市』を紹介したんだよ

三部作と言っても、それぞれ読み切りとしても読めるからいいのよ。それに、お気に入りなのよ。私……自分の欲望には忠実な人間なの

……よしっ! 帰ろう! ミズキが待ってる!

ちょっと! 一緒にご飯食べましょうよ~、シンヤぁ~!

『アイザック・アシモフ小説・鋼鉄都市編』

facebook twitter
pagetop