私は、高田川高校の1年生千曲 菜々子(ちくまななこ)。
思春期の悩みとかも特にない。
強いて言うなら、両親が海外で働いていて、
私とお姉ちゃんと二人暮らし。
まさにこれだけだ。
ところが、公園内で倒れている女の子を助けたら
その子はテレビでも話題の天才小説家高木京子だった。
高木京子さんは

高木

空腹から見える世界、世界なんてあってないようなもの

などとわけの分からない事を言ったりやったりと
可笑しい事を除けばとてもユニークで楽しい人でした。
彼女は、あるアパートに住んでいいて、
そこは女流作家達が悩みを抱えて住んでいるのでした。
ファンタジー作家の青木理沙さんや
ミステリー作家 彩峰 雪子さん
文学作家星野 海さん
ジャンル問わずに書く天才作家高木京子さんがいました。

みなさん、特別仲がいいわけではないですが
私はなぜか一緒に置いてもらってます。

菜々子

みんなお金持ちなはずなのに、どうしてここに?

高木

それはね、作家だからだよ

高木さんは意味深な事をいう。

高木

私らは、一文字でもいい文字を書くために研究してるんだ
、いまの本は昔の名文豪達に悪いなって思うくらい、
ひっどい本が多いのよ。
安い何もテーマもないスカスカのやつが
書店に並ぶたびに舌打ちが絶えないわ。

綾峰

駄作は死すべし。金儲けのゴミは死すべし。
完全を目指せ、不完全を恥じろ。

と彩峰さんは言う。

青木

私は、模倣性さえ感じなければいいわ

と青木さんは言う。そして付け加える。

青木

ただし……そんな作品あるのかしら?

ぶ、ブラックな一言だー!

高木

まぁ、それは置いといて、千曲さん
あなたは、生きていて何か感じる物はないのかい?

菜々子

私はいつも散歩する時、公園を歩いてると
子供たちが賑やかでそれが好きなんですよ。
でも、その子供たちが去った後に、静かに揺れるブランコ
傾いたシーソー、遊び疲れている砂場、それを見ていると

そこで途切れた。

綾峰

ほう、いい風情を持っているじゃない

青木

うんうん、感性があるし作品を書くのもいいかもね

みんなが私を褒めてくれるのは嬉しい、でも

菜々子

皆さんがそう言ってくれるのは嬉しいのですが、
今は皆さんがどのように書くのかを様子見して
考えたいです

綾峰

ふむ。それもありだね

私は皆さんに歓迎されましたが、
一般人の私が皆さんといていいのでしょうか。

高木

さぁ菜々子ちゃんの歓迎パーティーやらないとね

綾峰

いいね、丁度筆が進まなかった所だし

菜々子

皆さん執筆はいいんですか?

綾峰

あーいいのよ。私たち、書きたい時に書く人間だから

青木

そーそー。それで私たち生きてけるから

普通の作家は、ヒーヒー言いながら小説を書き綴ると聞いたことがある。
でも、この人たちは天才だから書きたいときに書いてどうにかなってしまう。
異端児の集まり……? なのかなぁ

星野

で、ちまなこちゃんは、何飲む? ビール? シャンパン?

星野さんの顔は、この先なにかがあるような期待に満ちた顔で
私に訪ねてくる。

菜々子

ない……とは思いますけどラムネありますか?

高木

あぁいいよいいよ、ラムネね。雪子買ってきてくれる?

綾峰

……まぁそうなると思ってました。行ってきます

菜々子

あ、いいですよ。適当にジュース飲むんで

星野

ちまなこちゃん……それじゃあだめだよ。拘りがないとね。
人間なんのために生きてるんだい?

い、いきなり重い話になったなぁ。作家さんていつも重い話を振るものなのか。

菜々子

生きる意味ですか? 分かりません

星野

そうだよ、勿論そんなものは決まっていない。かといってね、
生きる意味を考えなくては人生充実せんよ。なんとなく生きて
なんとなく死ぬ。それになんの意味があるんだい?

菜々子

……確かにそうやって聞くと意味がないのかなって

星野

そうそう、そういう連中って何が楽しいのか、私にはわからんのよね

菜々子

そういえば京子さんが見当たりませんが

星野

あぁ、あの子はね、ベランダに出てずっと執筆してるよ

星野さんが指を指す方向を見ると、確かに京子さんはベランダに
ダンボールを椅子がわりにして黙々と書いてるのでした。

菜々子

……作家っぽい感じですね

星野

夜風の匂いと月光が好きなんだとさ。勿論私も好きだけど
彼女のそれは作家の中でも異常なんだよねぇ

菜々子

……ちょっと京子さんとお話してきます

そう言って私はベランダに出る。
冷たい微風が顔に当たり、木の匂いなのか、いつもの夜の匂いとは
違うものがそこにはあった。

小説家少女1

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