青山通り。
静かに走るパトカー。
窓の外を見る真。
仁王立ちの貴子とすれ違う。
次々に過去に詐欺した女たち。
それらは本人か見間違いかわからないが真は悟ったようにふと笑う。
ゆ
る
さ
な
い
青山通り。
静かに走るパトカー。
窓の外を見る真。
仁王立ちの貴子とすれ違う。
次々に過去に詐欺した女たち。
それらは本人か見間違いかわからないが真は悟ったようにふと笑う。
大丈夫。許してほしいなんて思ってないからさ
どうかした?
いえ…花園さん3つお願いがあります
多いわね。言ってみて
一つ、この花を松嶋咲さんのお墓に供えてくれませんか?彼女の実家に咲いていた花なんです
いいわ
もう一つ、頃合を見計らって花蓮を萩姫の湯…磐梯熱海の温泉に連れて行って欲しいんです
温泉?
はい。昔、不治の病のお姫様があそこで療養して完治したらしいんです。万が一…万が一でもいいから花蓮にも…って警察の仕事じゃないですよね
いいわよ、お友達の頼みですもの。ちょうど今年の有休何に使おうか迷ってたところだし
ありがとうございます。それで、最後なんですけど……トイレ寄ってもらっていいですか?
えー、何ソレ!?がっくし
すいませんさっきから洩れそうで。我慢できそうにないです
もー、仕方ないわねえ。草野ちゃん
へーい
道路わきに停車するパトカー。
歩道。
花園が手を引いて真と歩道に出る。
あ、そうだ。すいません、そこの花屋さんでこれラッピングしてもらってもいいですかね?
そうね。じゃあ、いっしょにお花屋さんでおトイレも借りましょうか
花屋に向かう二人。
花園さん
何?
全てが終わったら今度一緒にお茶を…
真の背中から鈍い音。
振り返る花園。
ナイフを刺す女の手。
前のめりに倒れる真。
地面に散らばる花びらと鮮血。
徐々に目を閉じていく真。
どの女の刃かはわからない
無数の女の手が
自分の体を千切っていくような感覚
当然の報いだ
ただ
散らばる花の香りが
あの髪の匂いを思い出させた
終わり