一日の全ての授業が終わり、何もする事のない檜山修二はさっさと帰宅する事にした。彼は魂の抜け殻のように、とぼとぼと歩き始めた。
やっと一日が終わったか。帰ろ。
一日の全ての授業が終わり、何もする事のない檜山修二はさっさと帰宅する事にした。彼は魂の抜け殻のように、とぼとぼと歩き始めた。
オーッス!修二。相変わらず気の抜けた面してるなぁ。元気出せよ!
大きなお世話だ。ほっといてくれよ。
ほっとくわけにはいかないなぁ。だってお前はうちのバスケ部のエースなんだから。
元エース・・・だろ・・・。俺はもうバスケはやれないんだ。
やれるだろ。お前にその気がないだけだ。
はっ。何を言っている!俺はもうケガでバスケはできないんだ!やる気があったって意味なんてないだろうが!!
医者に聞いたんだ。お前の足の怪我はもう完全に完治しているって。お前は自分でできないって決め付けてるだけで、ちゃんと走れるんだよ!
うるさいっ!簡単に言うなっ!!お前には俺の気持ちなんてわからないっ!!
修二はそう言い放つと、そそくさとその場を立ち去った。
待てよ!今だって早足で歩けてるじゃないかっ。もう完全に直ってるんだろ?バスケ部に戻って来い!!
うるさいっ!もうほっておいてくれよ!怪我は辞めるきっかけにすぎない。俺は気付いちまったんだよ。自分の才能のなさに!!怪我をした俺はたっぷりと自分を見つめ直す時間があった。その時になぁ、俺はどんなに頑張ってもどうにもならない現実を知ってしまったんだよ!
俺の何倍も才能のあるお前が言うな!!お前はいつも俺の先を行っていたじゃないか。
ああ。だが、俺が休んでいる間に、お前は俺を追い越したよな。なんだ?自分との実力差を俺に見せつけたいのか?自分は、努力でこんなにうまくなりましたってな!
修二、お前、本当にひねくれちまったな・・・。昔のお前はそんなんじゃなかったのにな・・・。
・・・。俺はもう行く・・・。
会話を打ち切ると、修二はとぼとぼと廊下を歩いていった。猛はもうその背中に声をかける事はなかった。
あの会話から一週間後。放課後の体育館に一人、修二の姿があった。
・・・。俺だってこのままでいいなんて思っていない・・・。でも今更、戻りたいなんて言えるわけないだろう・・・
修二は体育館で、一人でバスケットボールをついていると、そこに猛がボールを持って現われた。
おおっ!修二じゃないか。戻る気になったのか?
いや、俺はただ・・・
修二は何かを言いかけてやめてしまった。
何?
ただ気分転換にボールをついていただけさ。
はぁ・・・。お前、本当にめんどくさい奴。下手な嘘をつくなよ。戻りたいんだろ?バスケ部に。
戻りたくなんかないっ!
意地を張るなよ。みんな待ってるぜ。うちのバスケ部にはお前が必要なんだ。
本気で言ってんのか?俺は一週間前、お前に酷いことを言ったのに・・・。
気にしてねーよ。俺達、親友だろっ
いやっ。それは違うけど。
うわっ。ひどっ。俺、傷ついたから
ははっ。なんか久しぶりに笑った気がするよ。
これからはいくらだって笑えるさっ
ああ。そうだな。まずはお前をバスケで追い抜いて、エースの座を取り戻す。そしてめちゃくちゃ笑ってやるさっ!
ははっ。やってみろよ。3ヶ月もサボってた奴に俺は負けねーから!
それから二人は夜遅くまで、1on1で対決をした。お互いに点を取り合い、もはやどっちが勝ってるのかわからなかったが、二人にとってそんな事はどうでもよかった。
ひたすら無心でボールを追い続ける。ただそれだけで楽しかった。
完