教室の窓からはグラウンドが見える。だからてっきり運動部の様子、あるいは誰かを見ているのだと思った。会話はそれっきりで、二人ぼっちの教室は無音。千羽鶴を折っていたわたしも机から窓越しの空を見た。夏空はくっきりと青く、風がないので熱気が滞留している。遠くに入道雲、細く飛行機雲、伸びてゆく。
何見てるの?
空
教室の窓からはグラウンドが見える。だからてっきり運動部の様子、あるいは誰かを見ているのだと思った。会話はそれっきりで、二人ぼっちの教室は無音。千羽鶴を折っていたわたしも机から窓越しの空を見た。夏空はくっきりと青く、風がないので熱気が滞留している。遠くに入道雲、細く飛行機雲、伸びてゆく。
傘、持ってきた?
わたしが空を見るのに飽きて机に目を戻すと、ユミは問いかけた。
え、傘? こんなに晴れてるのに?
積乱雲は雷雲、飛行機雲は上空の湿度の高さ。高い気温は上昇気流をつくる
いつかどこかで――たぶん学校の授業で――聞いた言葉が並ぶ。
濡れて帰るよ、降ったら
ミユキらしい
そう言ってユミは笑った。わたしは折り紙の一枚で飛行機を折る。手に持ち、黒板に向かって飛ばす。まっすぐに飛ぶ。黒板にぶつかった音でユミは振り向き、私の机から一枚折り紙を取って飛行機を折る。飛ばす。曲がって、落ちた。
いいなあ
何が?
ミユキの何もかも
照れるって
記憶の中の夏って、晴れてない?
ん? うん
ずっと先に思い出す今日は、いつまでも晴れていそうな気がする
<了>