最近、体が重い

いつも腹の辺りにずしりと鈍く光る鉛玉が入ったように張りがあり、肩に誰かがのしかかってきているような重さを感じるのだ。

それからというもの、階段を上ればすぐに息切れがするし、子供の運動会ではお父さんかけっこで足をもつれさせて息子に恥をかかせてしまった。それ以来少し息子が私を見る目が辛辣になったように思う。

それに最近は揚げ物を食べるとすぐに胃がもたれてしまって、取引先との飲み会もあまり酒が進まない。どうにか酌をしてはごまかしているが、それもなかなかに辛いものだ。

原因はわかっている。私は死神にとりつかれてしまっているのだ。

ずしりと肩にのしかかる重さは、間違いなく私の首を刈り取ろうとその時を今か今かと待ちわびているに違いない。

どうしたんですか、先輩?

あぁ、いやなんでもない

こうして後輩から声をかけられることも多くなった。自分ではよくわからないが、周りから見ると私の顔が青ざめてしまっているのだろう。

それとも彼らの目には私の背中にのしかかる死神の姿が映ってしまっているのだろうか。

残業を終え、まだまだ余裕のない電車に身を縮めて乗り込む。醜く突き出した腹がみっともないとは思いながらもなかなか自分では引っ込めることができないものだ。

ただいま

リビングの明かりはかろうじてついてはいるものの、可愛い一人息子と妻はもう寝室に行ってしまったらしい。ラップのかかった夕食だけが置かれていて、それが妙に物悲しさを強くさせていた。

さぁ、もう寝ようか

夕食を済ませて一人ベッドに潜った。まだ春先だというのにこんなことでは厳しい夏をどう乗り越えるというのか。

その前に私の首は死神にすっぱりと刈り取られてしまうのだろうか。横になっても今度は腹の上に移った死神がずしりと私にのしかかっている。

あぁ、今日もまた浅い眠りから覚めて会社に行くしかないのだろうか

翌週、私は健康診断のために会社指定の病院に訪れた。

体からいろいろなものを抜き取ってそれを診断してもらう。それならいっそこの肩にのしかかる死神も病院に置いていきたい気分だった。

最後の問診の時間になって、私はそんな自分の肩に乗った憎き奴のことをこの医者に話してみることにした。

最近体が妙に重くて、すぐに息切れするんです。それに夜も寝苦しくて息が詰まるような気がしまして

それを聞いた医者は目を丸くして驚いた後、やんわりと笑顔を作ってこう言った。

確かに腹回りの中性脂肪が多すぎるように思われますね。ご自覚があるなら今日からでも始めましょう。まずは間食とお酒を減らして、一日三十分でも有酸素運動をやってみましょう

その質量は……

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