先日、しながわ水族館へ行ってきました。

海や川、湖の存在しないさいたま市に引っ越してきて、はや十年。とても久し振りの水族館です。

日常から少し離れて、自然のめぐみや驚きにふれられた、とても貴重な体験でした。

かつて中学生の頃、寿司屋の湯飲みに筆文字フォントで書かれた「さかなへんに有」という漢字を「ツナ」と読んで譲らなかったほど魚類に詳しく、お寿司大好きな私です。

珍しく写真を撮りまくってきたので、そんな私の解説を添えながら、レポートしたいと思います。

半屋外に設けられた最初の水槽で元気に泳いでいたのは、天然のハーモニカでした。

世界初のハーモニカは1821年、ドイツのベルリンに住むオルガン職人の息子、クリスチャン・フリードリッヒ・ルードヴィッヒ・ブッシュマンが発明したと言われています。

ある日、音楽性の違いから父親と喧嘩して家を飛び出した彼は、バルト海で偶然この魚と出会いました。

空腹だった彼がこの魚を食べてみようと頭と尻尾を切断したところ、表皮が金属のように硬化するという特殊な性質を見つけたのです。

試しにかじりついた彼の血だらけの口から、素敵な音が鳴り響きました。

すぐさま家に帰り、この魚を丁寧に加工して仕上げたものが、最初のハーモニカだと言われています。

背の穴を加工せずに良い音が鳴る物ほど、高値で取引されるそうです。

同じ水槽にいたのは、従業員のカモです。

良いハーモニカを飼育する為、育ちの良くないハーモニカを間引きするよう厳しい訓練を重ねてきた、プロフェッショナルのカモです。

熟練の職人の眼で、良いハーモニカと悪いハーモニカのほんの僅かな差を見極め、悪いハーモニカが市場に出回らないようその場でひと呑みにしてしまう事が彼の仕事です。

悪いハーモニカを処分する場面を目の当たりにした小さな女の子が、カモの全身からあふれる仕事へのこだわりに打たれたのか、わんわんと涙を流していました。

天然の人工岩石です。

主に東京湾に沈んだドラム缶に詰まっているコンクリートを主食として育つと言われています。

どこか人の死に顔を思わせる岩の凹凸から、呪詛の声が聞こえてくるようです。

しながわ水族館では、業務用洗濯機の耐久試験受託事業も行っています。

主に高級ホテルへ支給されるシーツなどの洗濯に使われるため、投入した魚を死なせない程度の柔らかな回転力が求められます。

実際の魚を使って、洗濯するものを傷つけないか、また洗濯機がどのくらいの回数の洗濯に耐えられるかを調べています。

天然の醤油差しです。

最初の醤油差しは1821年、ドイツのベルリンに住むオルガン職人の息子、クリスチャン・フリードリッヒ・ルードヴィッヒ・ブッシュマンが発明したと言われています。

ある日、音楽性の違いから父親と喧嘩して家を飛び出した彼は、バルト海で偶然この魚と出会いました。

このかわいらしい魚は他の魚と違い、口から食事を摂取しません。

写真のように、海底から石油を吸い上げる特殊な水生植物の枝を腹部の穴に差し、石油を補給して動いています。

工場で醤油差しに加工する際は、この穴から醤油を注入して出荷しています。

日本海に生息する天然のツマガイです。

彼らの伸び続ける触手を食用にしたものが、お刺身などの下に敷かれている、いわゆる「ツマ」になります。

彼らの白い触手は生きている限り延々と伸び続けるので、海中では岩肌に擦り付けるなどして適度に切断し長さを保ちます。

切断された触手が細胞組織の硬化で細くなるので、食卓で見かける形に変わるのです。

天然の指サックです。

最初の指サックは1821年、ドイツのベルリンに住むオルガン職人の息子、クリスチャン・フリードリッヒ・ルードヴィッヒ・ブッシュマンが発見したと言われています。

ある日、音楽性の違いから父親と喧嘩して家を飛び出した彼は、バルト海で偶然この不思議な生き物と出会いました。

丸い胴の部分だけが製品に使用され、毒のある触手部分は工場できれいに切り取られます。

世界各国のビーチリゾートでは、天然の指サックに指などを挿入した男性の死亡事故が多発しています。

妻を早くに亡くし、長い独身生活を続けていたクリスチャンの父も、この指サックの毒が原因で命を落としたと言われていますが、事実は定かではありません。

天然のピースサインです。

自由自在に変形して興味を引き、近づいてきたクラゲを一瞬で捕らえて捕食します。

不思議なことに、もう一度写真を撮ろうとした時には、すでにその水槽から姿を消していました。

天然のLEDです。

クリスマスシーズンになると、都心や観光地などではイルミネーションとして飾られることでおなじみですね。

冬の木々に巻き付けられた活きの良いLEDの光は、目にする私たちの心をあたたかくしてくれます。

繊毛や触手の微細運動が、わずかに電力を起こしていると言われています。

また、別の種類のLEDは、生きたまま水分を抜いた後薄く平らに加工して、透明な下敷きとしても使われています。

髪の毛や衣服に下敷きをこすり付けると静電気が発生するのはこの為です。

魚類の表皮は、昔から塗料としても使われていることで有名です。

錦鯉が高価で取引されるのは、紅白まんじゅうなどの縁起もの和菓子で使用される赤と白の塗料がバランス良く採取できるからだと言われています。

また、色とりどりの淡水魚たちは、蛍光ペンに使われている塗料の原料として良く知られています。

文房具工場で水を大量に消費するのは、塗料となる魚類をきれいな水で飼育しなければならないからです。

天然のテッポウウオです。

かわいらしい見た目によらず堅牢な骨格が、いわゆる9ミリパラペラム弾丸の素材に用いられていることからテッポウウオと名付けられた昆虫です。

食用の為に養殖されている、なんとかエビです。

このエビの視線の先には常に一人以上従業員がおり、エビに向って罵声を浴びせ続けていました。

エビの体皮は怒りを感じることで充血して赤くなり、また大きく育ちます。

最も怒りが強くなったタイミングで捕獲することが重要なのだそうです。

熟練の従業員ほど、エビの種類や個体それぞれの怒りのツボを見極めるのが早く、また適確にエビの怒りを刺激する技術に長けています。

ロブスターや伊勢えびが高価になりがちなのはこの為です。

愛嬌たっぷりの顔と動きで今大人気のチンアナゴです。

写真のチンアナゴは幼体で、成体になる前に捕獲し乾燥させて加工したものが、いわゆる「プリッツ」という焼き菓子になることは有名ですね。

また、古生代に彼らが陸に上がり紆余曲折を経て進化した姿が、今のダックスフンドだそうです。

天然のワサビが、隅にへばりついて隠れていました。

きれいな水のある環境で育てられたワサビほど、風味豊かになると言われています。

高級寿司店の水槽でも、必ずと言っていいほどワサビが飼育されており、おろしたての風味を楽しむことができます。

しながわ水族館の地下工場で養殖されているスパゲティです。

出口付近にあった併設のレストランでは、取れたてのスパゲティの他、水族館で養殖されている食材を使った料理を楽しむ事ができます。

和食メニューには、先ほど見かけた天然ワサビを使ったものもあります。

養殖されているすべての種類の素材を使ったスペシャルスパゲティは、一日50食限定ながら、このレストランで一番の人気メニューだそうです。

以上で、水族館のレポートを終了いたします。

少しかけ足での紹介でしたが、現代社会や日本の産業、そして私たちの暮らしが、どれだけ海に支えられて成り立っているか。みなさんにもお分かり頂けましたでしょうか。

正に母なる海。

そして、さまざまな形で私たちにつながっている、海の生き物たちの命。

彼らへの感謝を忘れないように、私たちは今日を生きていかなければいけませんね。

という妄想をしながら眺める久し振りの水族館。とても楽しく過ごすことができました。

水族館だけでなく、動物園や植物園に遊びに行く時には、皆さんもぜひ「脳内うそ設定」をでっちあげて、ひとりで楽しんでみて下さい。

その日一緒に行ったうちのカミさんには、全然理解してもらえませんでした。

「そういうの自分ひとりだけで楽しんでて」とまで言われました。

おすすめです。

※この作品はフィクションであり
実在する人物・地名・団体とは
直接的には一切関係ありません。

おわり

これがしながわ水族館だ

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