初心者向けパソコン電源が入らない時の対処方法
初心者向けパソコン電源が入らない時の対処方法
まず、人差し指を立てます。
パソコンが外国製の場合、国際問題が発生する可能性があるので、中指を立てるのは止めましょう。
立てた指で電源ボタンを押しましょう。軽快な音と共にパソコンが起動して来ます。
以上。
友達が肝試しに行ってきたそうだ。
彼らが出かけた先は、近所でも有名な病院の廃墟。
戦前には人体実験に使われていたと、無責任な噂が流れている物件だ。
休日前夜になると、肝試しの若者グループやカップル達で込み合うのだそうだ。
そんな場所に男ばかり四人組で出かけた彼らは、廃墟の中を小一時間程ウロウロして帰って来た。
結局、幽霊は見ることは出来ず、あろう事かDQNに絡まれてしまい、逃げ帰ってきたと電話で話していた。
いや、仲間だと思って脅したらDQN連中でさ。
参ったよー、あっはっはっは
などと呑気に笑っていた。
でも、動画は最初から最後まで撮っていた。
ついてはアンタツベにアップロードしたので見てみろと言って来たのだ。
なんと『幽霊動画』が撮れたと自慢げに話していた。
ちっ、留守番じゃ無きゃ一緒に行ったのによ
俺はブツブツ言いながらネット動画を見てみた。
……が、中身はどうという事は無い代物。
ただ、廃墟の中をうろついている、ブレブレの動画が映っているだけだった。
最後の部分にオーブが写っていると、友人が言っていたが、自分にはレンズに付いた埃との違いが判らなかった。
ネットとか心霊番組で見かける手合いの物に似ている。
埃か小さい虫をオーブとか言い張る奴だ。
『地球温暖化』並みに超胡散臭い。
なんだ…… くだらねぇ
俺は零感と言うのだろうか、お化けとか幽霊とかの類を見た事が無い。
もちろん、居ないと思ってはいるが結構ビビリな方だ。
その癖に心霊現象や怪奇現象が好きと来ている。毎晩、その手のサイトを巡礼していた。
俺は違うサイトに行こうとして、ウィンドウを閉じようとした時。
不意にパソコンの電源が落ちた。
何の予告もなくだ。
え!? マジ?
暗くなったモニターには俺の顔が映っていた。
うむ、いつ見てもトムクルーズにソックリだ。
……
サーセン。
………
嘘です。
…………
そこには、只のしょぼくれたおっさん顔が写っていた。
それまで、心霊動画を見ていた俺は結構ビビッてしまった。
思わず周りを見回してしまう。
もちろん、部屋の中には誰も居ないし、何かが見える訳でも無い。
家族が居ない家の中も静かだ。
うむ、いつもの自分の部屋。
な、なんだよぉ、ビビらせるなよぉ
シャットダウンを選択した訳でもなく、もちろん停電でもない、不可解な出来事に俺は不機嫌になってしまった。
OSをアップデートしてから頻繁に起きるようになったのだ。
タヒねよ…… マックロソフト……
そう呪いの言葉を思わず吐き出した。
何だか、更新する度に動作が重くなるし、不安定になっていくからだ。
じゃあ、更新しなければ良いのではと思うのだが、裏側で勝手に更新して行くので何ともしがたい。
それに更新しなくても重くなってる気がする。OSの中に何か呪いが掛かっているのではないかと最近疑っている。
ハッカー気取りの友人はレジストリ書き換えちゃえよと言うが、俺の場合”レジストリ? 何それ? 美味しいの??”のレベルなのでやりようが無いのだ。
下手に弄るときっと別の種類の災厄を呼び込むに違いない。
俺は間合いの悪さには自信がある。困ったものだ。
アレコレ考えてもしょうがないので、もう一度電源を入れようと手をマウスから少しだけ離した。
その時。
”ドクン”
俺の心臓が一つ鼓動した。
部屋の温度が下がったような気がした。
それと同時に自分の背後に何かの気配を感じている。
え?
俺は突然の事に呆気にとられてしまった。
部屋に誰かが入ってくれば気が付く、それに今夜は両親も妹も出かけていて俺一人のはずだ。
じゃあ、後ろに居るのは誰だ?
俺は呟いてしまった。
二つ目の鼓動。
俺は画面から目を離す事が出来ないでいる。
自分が写っているモニター画面に変化が現れたのだ。
肩の辺りで何かが動いている気がする。
一度気になると、もう目が離せない。
思い切って振り向いてしまおうかと考え始めた。
そう思っていざ振り向こうとすると身体が動かない。
金縛りだ。
目以外動かせない。
寝ているときに為った事は有るが、今は起きている状態だ。
どうして、こんな時になっちまうんだ……
自分の間の悪さが嫌になってしまう。
三つ目の鼓動で気がついた。
やはり誰かいる。
俺の顔の横合いぐらいから、髪の毛がせり出して来ているのが見える。
顔を動かして、それが何なのか確認したいのだが、身体が言うことを利かない。
金縛り状態のままのようだ。
目玉だけキョロキョロと動かしている。
そういえばネットで得た知識だが、”般若心経を唱えれば金縛りが解ける”と書いてあるのを思い出した。
……経典を読んだ事すらねぇよ
しかし、俺は般若心経を知らなかった。
ネットを通じて何でも知っている気がしていたが、肝心な処で役に立たない。
ネット弁慶な自分が恨めしくなった。
”ドクン”
四つ目の鼓動。
髪の毛はゆっくりとせり上がってきている。
モニター画面には、横目でその動きを追いかけている俺が写っていた。
背中に嫌な汗が落ちるのが分かる。
そして額にも汗をかいている。ボタボタと肩に垂れているのがモニター越しに見えていた。
だ、誰だよ~
俺はかすれた声で呟いた。
”ドクン”
五つ目の鼓動。
影はおでこの辺りまでせり上がっていた。
これだけ接近していれば、息遣いとかがありそうな物だが、そんな事は無い。
相変わらず気配がするだけだ。
俺は相変わらず金縛りに合ったままだ。
右手を動かそうと必死に足掻いているが動かせないでいる。
だが、視線だけはモニター越しに背中の気配を追いかけていた。
え、女??
何となく女性だと思った。
俺は必死に記憶にある女の知り合いを思い浮かべた。
しかし、該当する女の知り合いは居ない。
”ドクン”
六つ目の鼓動。
もう、顔が半分出て来ている。
その長い前髪の間から目が覗き、自分を睨みつけていた。
その目は赤く充血しているのが分かる。
目を見ただけで強い恨みを持っているのが分かるほどだ。
お……
俺が何かしたって言うのかよぉー……
そう呟きながらも、俺はすでに涙目になっていた。
自慢で無いが彼女居ない歴イコール年齢の俺だ。
髪の毛の長い女に知り合いなども居ないし、恨まれるような事をする隙も無い。
”ドクン”
七つ目の鼓動で不意に身体が動いた。
ををぉぉぅっ!
謎の咆哮と共に俺は急いで立ち上がり自分の周囲を見回してみた。
額からどっと汗が噴き出し、顔を伝って顎の先から滴り落ちている。左手には喰いかけのうまい棒を持ったままだ。
カーテン、ベッド、本棚、パソコン机と順に見て行くが何も変化が無かった。
部屋には自分一人しか居らず、先程まで背後に居た髪の長い女は何処にも居ないのだ。
パソコン机の下を覗き込んだが、そこにも女は居なかった。
あんなに寒かった部屋の温度は通常に戻ったようだ。
夏特有のまとわりつくような湿気と暑さが証拠だ。
なんなんだよ……
俺は一つため息を漏らした。
白昼夢と言うのだろうか、人は意識を持ったまま夢を見る事があるらしいと聞いた事が在る。
俺はパソコンの前に座り直して、再び電源の入っていないモニターを、ジッと見つめたが髪の長い女は現れなかった。
気のせいか…… しかし焦ったな
ホッと一息ついて、パソコンの電源を入れる。
軽快な起動音と共にパソコンは立ち上がり、真っ暗だったモニター画面に色合いが戻った。
するとモニター画面一杯に髪の長い女が現れてこういった。
見ぃーつぅーけぇーたぁーー