紫陽花

ようこそ西桜高校へ! そして生徒会へ!

今のこの状況を説明しよう。

幹人

すまん、わからねえ

ここに至るまでの経緯を説明しよう。
俺は今日、この西桜(せいおう)高校に入学したピッカピカの高校一年生だ。
この学校で青春を謳歌するんだ、と、今にも振り切れそうなメーターの針のように心を躍らせていた。
そして入学式やクラス内でのホームルームを終えて、だ。俺は校門の前で幼馴染を待っていた。その時、紫髪の大変綺麗な女性が現れて――

紫陽花

ようこそ生徒会へ!

と、まさに青天の霹靂とでも言ってやろうか、寝耳に水――いや、寝耳に向かって多量の濁流を流し込むような一言を放ってきたのだった。

幹人

あのー……紫陽花(あじさい)……先輩ですよね?

紫陽花

おお。覚えてくれてんじゃん。じゃあ生徒会に――

幹人

いや、それで「じゃあ」とはならねえよ

なぜだろう、学校で先輩に向かってタメ口でツッコむのがこれで終わらない気がする。まあ、この人とは先輩後輩という関係が成り立つとは入学前から思ってはいなかっし、それはきっとこの人も――

紫陽花

今先輩に向かってなかなか荒い言葉遣いをしたから停学ね♪ いやだったら生徒会に入りなさい

幹人

バリバリ先輩後輩の壁築いてるぅぅぅ

まあしかしだ、この人がこう言うってことは何か目的があってのことだろうし、もしかしたら俺が変な口約束でもしたのかもしれない。一概にこの人の自由奔放な性格のせいにはできないだろう。

幹人

ていうか、なんで俺が生徒会に入れるんですか。俺今日入学したんですよ? そもそも、良い人材ならいくらでも――

紫陽花

うん、まあなんとなく。顔見知りだし生徒会に入れてワイワイやろうかなって

幹人

まさかの私物化!?

学校の重要組織を私物化しようとは……。さすがこの人はスケールが違うぜ!
…………じゃなくて! 要は自分が楽しめそうなら誰でもいいってことじゃないか?

皐月

いたいた。幹人、先に行かないでよ! まだ私完全に道覚えきった訳じゃないんだから!

紫陽花

あら皐月(さつき)ちゃんじゃない。久しぶりね。中学校以来かしら?

皐月

あ、あじさ……山吹先輩お久しぶりです! と言っても、さっき会いましたけどね……

紫陽花

細かいことはいいの! それと、今まで通り呼んでくれていいわよ

幹人

先輩後輩の壁はいずこへ!?

俺と俺の幼馴染である若楓皐月(わかかえで さつき)との扱いの差が違いすぎる……。
これが男女における待遇の差か。などと感じたが、俺はここで皐月の先ほどの発言を思い返す。

幹人

皐月さ、今『さっき会った』って言ったよな。それってまさか……

紫陽花

幹人を誘って皐月ちゃんを誘わないなんてことある訳ないでしょ? むしろ小生意気で何をやらしても下の下レベルの幹人よりも皐月ちゃんの方が優先順位上よ

幹人

誰が小生意気の何もできない人間だよ! ていうか、俺そんなに適当な扱いだったっけ!?

こうは言ったものの、思い返せばだいたいこんな扱いだったな。うん。なんかもう帰りたい。

紫陽花

と・り・あ・え・ず、今から生徒会室に向かうわよ!

紫陽花さんはそう言うと俺の腕を強く握り、強引に引っ張った。ていうか、この人チカラ強っ!?

皐月

さあ行くよ幹人ぉ~。紫陽花ちゃんに続けぇ~

幹人

なんでお前はそんなに乗り気なんだよぉぉ!?

俺、蘇芳幹人(すおう みきと)の高校生活は、いきなり茨の道を歩むことになりそうです。

始まりは唐突に――

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