先輩

晃くん今日も図書室に…… ってあれ? なんか元気ないよ?


翌日の放課後、俺がダサい名前の方の部活へ行こうとした時、先輩に話しかけられた。
今日も文芸部は無いからか誘ってきたようだ。

え、そうですか? 元気もりもりですけど

先輩

なんていうか顔が、んー……歪んでた

ま、マジですか!?


そんなに俺は元気無さそうに見えたのか……


昨日、あの部に入ると言った後に俺のコードネームを決める事になった。
トウロさんは中二病な名前ばかり言ってくるし、向日葵は女の子みたいな名前ばかりだし、安藤には適当な名前付けられて、さらに蒼さんには変態って言われるし……その前には気持ち悪いって……
なかなか決まらなかったので次の日に振替となった。

はーぁ……

先輩

ほらー溜息ついてる。 何があったのかは分かんないけど、こんな時はセンパイと一緒に小説を書こー!


先輩に引っ張られて図書館に向かう俺。
いや、今日もあそこに行かなければ怒られてしまう。
嘘をつくのは少し胸が痛むが、明日こそは一緒に書けるだろうし……先輩なら許してくれるだろう。

すいません先輩。今日友達に勉強を教える予定ですので図書館行けないです

先輩

えー、今日も早めに別れちゃうんだ……うん、わかった。またね

はい、さようなら


先輩は少し寂しそうな顔をしながら廊下を走る俺に手を振った。すいません先輩。

こんにちはー


ガラッと扉を開くと、机を並べてその上で寝ている愛美さんと猫と戯れているトウロさんがいた。

トウロさん

やあ、マッド……名前が浮かんでこない!

浮かんでこなくていいです!


……この人はボケているのか? それともマジなのか?
冷静になって、すぐに疑問に思った事を質問した。

トウロさん達の学校は下校早いんですね

トウロさん

明日は球技大会だからその準備で授業が昼までだったんだ

準備はしたんです?

すっぽ抜けてきた。どうせトイレ掃除だしね


トウロさんはそう言いながらハハハと笑う。
意外と行事には消極的な人物だという事が解った……ような気がする。

トウロさん

よし。今日は君のトレーニングをしよう


トレーニング? 筋トレとかそういうのだろうか。

トウロさん

まず君と蒼君で愛美君の心の中に入ってもらう


昨日言ってた戦闘世界ってやつか……

ってなんか違う!

トウロさん

うわ、いきなりどうしたんだい? 愛美を起こさないでくれよ

まず愛美さんの心の中に入るってどういう事ですか!

トウロさん

そういう事か。それはね、能力者同士は相手が眠ってる時だけその人の心の中に入る事が出来るんだ。邪悪が入ってしまった副作用と考えてくれ。
その心の中では心の持ち主の好き通りに出来る。もしかしたら君、寝てる間心の中蒼君だらけかもね


うっ……小説の話、誰かにされたのか。トウロさんにはあまり知られて欲しく無かったのに。

トウロさん

まあまあ恥ずかしがらずに。僕は応援してるよ

はい……

なんかよく分かんない流れだけど頷いた。

トウロさん

話を戻そう。そこで愛美君の協力のもと心の中で敵を出現させて貰う。その中に君と蒼君は入って敵と戦うトレーニングをするんだ

そういう意味でのトレーニング……ですか

トウロさん

うん。能力も最初からついてる訳じゃなくてちょっと武器で戦ってからにしないと習得出来ないしね。RPGゲームの序盤と同じ感じさ


成る程。昔やったRPGでは王様には武器すら貰えなかったけど今は武器も支給されるのか。

話はなんとなく分かりました。でも何で蒼さんと?

トウロさん

そりゃ……察してくれよ、僕の粋な計らいだよ


トウロさんはむかつくウインクをして見せた。……殴りたい。
勿論蒼さんとは絡んでいきたいけれど、男が女に教わるのは……俺のプライドに反してしまう。
先輩と同じような扱い方でいいのかもしれないが先輩とは付き合い長いから敬語だけどまあまあ仲良い訳で……プライドも許してくれるから勉強とか小説の書き方も教えて貰ってる訳で。
結構面倒臭いプライドを持ってしまった。

安藤

こんにちは

急に安藤がつかつかと入ってきた。真っ先に俺の方へ向かって髪の毛をチェックしてきた。近い近い!

安藤

うん……まあ、ギリギリいいな。 明日はもう少しだけ切って来い

はいはい。だあからあんまり髪触らないで

安藤とは同じ学年という事が分かりそれからはタメで話している。
ここは学年が違う人だらけだから口調の切り替えが大変だ。

トウロさん

えぇ君安藤君にはそんな喋り方するの!? 僕にももっとしていいんだよ?

俺は年上にしか敬語はしませんよ。
トウロさんは年齢教えてくれないからとりあえず敬語で喋ってるんじゃないですか。
じゃあ年齢教えて欲しいです

安藤

私も聞いた事無いわ

トウロさん

でも教えたくない

それじゃあ無理ですね

えー、とトウロさんが言った瞬間、蒼さんが入ってきた。
心臓がドキリと弾む。

蒼さん

こんにちは

トウロさん

やあ蒼君、メールで事情は話したけどやってくれるのかい?

蒼さん

変態と二人きりにはなりたくないですが戦闘で私に迷惑かけられるのは嫌なのでやります

グサリとまた包丁が突き刺さったように胸が痛くなった。
でも俺が悪いんだし仕方ない。それに蒼さんと触れられる機会もできたんだし、ポジティブになろう!

蒼さん、よろしくお願いします!

蒼さん

先生と……いや、教官と呼んで

え!? あ……はい教官

クールな性格らしい蒼さんなのに意外な言動だ。見た目によらず冗談が好きな性格なのかもしれない。

蒼さん

じゃあ愛美の前に立って手をかざして


愛美さんの前に立ち、片手をかざす。
すると____

pagetop