今日も、生きてる

ねえ、どうしたの?

だ、ダレ?

僕はアル。アル・オルビー。お姉さんがここに来たのが見えたから何かあるのかなって来てみたんだ。
お姉さんは?

私は、名前なんてない。番号で呼ばれてるだけ

番号?それって、お姉さんの胸についてる?

えぇ。名前なんて付ける価値もないのよ。私達には

ふ~ん。じゃあ、僕が付けてあげるよ

えっ?

任せてよ。うちで飼ってる猫も僕がつけたんだから。僕が付けてあげる!だめ?

猫と同列か……。それでも扱いとしては上なんだよね。

お願いするわ

うん!
えっと……えっと、お姉さん、きれいで妖精さんみたいだから。エラ!エラお姉さん

エラ……。もったいないぐらいね。いただくわ。ありがとう

ふっふ~ん。じゃあエラお姉さん。どうしてここにいるの?洋服も汚れてるし……遊んで転んじゃったの?

違うわよ。私は、私は奴隷。

奴隷?奴隷ってなに?

奴隷も知らないのね。まあ、ここまで来たってことでわかってたことだけど。どういえばいいのかな。

奴隷っていうのは、私を買った人が私を働かせることよ。

生きることのできるギリギリの食事と仕事量だけどね

ふ~ん。うちのメイドのエリンと同じ感じだ。エリンもうちで働いてるんだ!

あっ、奴隷という言葉どこで聞いたかなって思ってたけど思い出した。なんか奴隷の法律が少し変わったって

関係ないわよ。私達には

そうなの?

そうよ

ふ~ん。というか、うちのエリンはもっときれいな格好だよ

いろんな働き方があるの。メイドも、エリンって人と他の家のメイドでは恰好が違うでしょ?それと同じよ

へ~。なるほどね。

エラお姉さんはこの格好がお仕事の服なんだ。なんていうか、こんな服を着せるだなんてここのご主人の趣味最悪だね

……そうね。きっと、最低な人間よ

そうだよそうだよ!エラお姉さん綺麗なのにもったいないよ!あっ!そうだ!

どうしたの?

お姉さんこんなところやめて僕のところで働かない?僕がお父さんたちに言ってあげるよ

えっ……

無理よ。

なんで?

私はここから抜け出すことはできない。どうしてかって聞かれたら……それは、私がメイドじゃなくて奴隷だからっていうしかないけど、無理なのよ

きっと、メイドになってこの子の世話をできたら楽しいんだろうけど、無理なものは無理。お金持ちっぽいけど、大商人の主人がそれを許すとは思えないし。貴重なご主人の『夜の』奴隷でもある私を

え~でもでも!やめようと思って止められないお仕事なんかないって言ってたけど。それにそれ―――

っ。隠れて

わっ!?

誰かいるのか?

…………

ちっ、まあいい。おい、もうすぐご主人様がじきじきにいらっしゃる。準備しとけ

…………

返事は!

がっ!?

は、はい……

ちっ。奴隷の分際で。

いった……。もういいわよ

お姉さん!大丈夫!!

大丈夫よ、慣れてるから

慣れてって……。そんな

お姉さんはそれでいいの!?

それが私の、奴隷の仕事だから、いいのよ

お姉さんは、それでいいの?

それが私だから、いいのよ

そんな……

来た!ごめんね、また隠れて。それで隙をついて外に。もうここに来ちゃだめよ

そん。んぐっ

おーおー、俺がじきじきにきてやった、ぜ!

んぐっ

はっはっはっ。もっと、いい声で鳴けよ、おらっ!

あがっ……。はぁはぁ

いいねいいね。どんどん鳴こうよ。もっと、いい声でさ。俺の奴隷さん

それが、貴方の正体ですね。エイブ・マクレーンさん

あっ、出ちゃダメ!

あん?なんだ?ガキ?テメェが連れ込んだのか?

っ……

おい……答えやが―――

まさか本当に僕の事を知らないとは。あなたぐらいなら知っていてもおかしくないのに

何を言って。
ち、違います。この子は、迷い込んでしまって。
アルくん、ここから逃げて

アル……。もしや、このガキ

流石に名前は聞いたことありますか。

な、ん……で。お前……貴方が

やっと、やっとあなたの正体をつかめた。黒いうわさはあるけどうまく隠されていた。でも、これで

がっ…、ま、まて

なにが起こって……

ごめんね、お姉さん。少し利用させてもらったよ。証拠集めに

証拠?

新しく制定された法律で人身売買は禁止されました。すでに売買された人については購入金額を借金という形とし人として基本的な人権を与え、仕事も自由に選べるようになりました。それを禁止するのは重罪です。知らないとは、言わせませんよ。エイブ・マクレーン

ま、待て

エイブ・マクレーン。第三皇子アル・オルビーの名の元、貴方を奴隷法違反で逮捕します

なっ、お前らどこから

私が忍び込んだ時から隠れていました

くそっ

貴方は……

先ほどの通り、僕は第三皇子です。人前にはあまり出ませんがね。僕の願いでこの法律が設定されたんです。だからこそ、僕自身の手で奴隷を解放したかったんです

皇子……

アルでいいですよ

そんなわけには、それに奴隷も知らなそうな感じだったのに

証拠の一つして奴隷本人とその奴隷の雇い主の証言が必要だったんですよ。

そう、だったんだ

これで、もうあなたは自由です。しばらくの間は王宮で奴隷の方々をお世話することとなります

エラと、言ってくださいませんか?

ええ。エラさん。貴方に光を

奴隷のヒカリ

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