カフェで紅茶を飲みながら、私、佐渡マコトは真剣に悩んでいた。自らの胸を見る。真っ平。まな板。私の胸はどこからどう見ても貧乳だった。
(はあ、どうすれば巨乳女子高生になれるんだろう)
カフェで紅茶を飲みながら、私、佐渡マコトは真剣に悩んでいた。自らの胸を見る。真っ平。まな板。私の胸はどこからどう見ても貧乳だった。
トモはどうすれば良いと思う?
一緒に紅茶を飲んでいた友人のトモに尋ねる。
うーん、やっぱり手術するしかないんじゃない?
手術は嫌!
なんで?
だって、怖いもん
あんたねぇ……
私の言葉にトモが呆れたようにため息をつく。
それからハッとしたような表情を浮かべると、トモは自分のカバンをあさりだした。
そうだ、こんなのもらったんだった
トモが一枚の紙を取り出す。そこには『体の悩みなんでも解決します。相談だけでもオーケー。葉加瀬研究所』と書かれていた。
なんでこんな怪しげな紙、トモが持ってるの?
だからもらったんだって。テッシュ配りの人かと思ったら、ただこの名刺配っているだけで。なんだか損した気分だったよ
トモが苦笑する。
ポケットティッシュなどの広告ではなく、直で名刺を配るとは。余計に怪しく感じる。
でもマコト、巨乳になりたいんでしょ? 相談だけでもしてくれば
うん、相談だけなら良いかな
私は決心し、葉加瀬研究所に行く事にした。
名刺に記載された住所を頼りに道を歩いてく。すると葉加瀬研究所は奥まったところにひっそりとたたずんでいた。
(なんだか妖しい雰囲気。本当に大丈夫かな?)
疑問に思いつつも研究所の入り口に向かいチャイムを押す。すると小さな子どもが出てきた。
いらっしゃいませ、葉加瀬研究所へようこそ
お子さんかな? お父さんかお母さんはいるかな
ここには私一人しかいませんが
えっ、それじゃあ
私がこの研究所の所長、葉加瀬博士です
幼女が無い胸を張って答える。子供が研究所の所長? そんな、怪し過ぎる!
すみません、出直してきます
まあまあ、あなた、巨乳になりたいんでしょう?
その一言に私の足が止まる。この子、なんで私が巨乳になりたいって知っているんだ?
なんでわかったか、不思議でならないご様子ですね。答えが気になるなら、どうぞ研究所の中へ
博士が勧めてくる。私は好奇心に抗えず、研究所の中へと入った。
研究所に入り、椅子に座るよう葉加瀬博士に勧められる。私が椅子に座ると、葉加瀬博士はゆっくり話し始めた。
なんであなたが巨乳になりたいと思っているとわかったのか、その答えは簡単です。種を明かせばあなたもすぐ納得する事でしょう
もったいぶらず早く教えてください
せっかちですね。……あなたの友人であるトモさん、彼女はうちのバイトなんです
その一言にズッコケそうになる。
つまりトモは私の情報をこの研究所に売り、ここに来るよう仕向けたのだ。
やっぱり帰ります
まあまあ、ここに巨乳になる薬があるのだけど、興味ないですか?
その一言で再び私の足が止まる。巨乳になる薬? そんなものがあるのか。
それ、効果あるんですか?
バッチリですよ。試しに、ほら
すると突然葉加瀬博士の胸がウソのように大きくなった。洋服ははち切れ、なんとか危ういところがギリギリ隠れている状態。これは凄い。
本当に効果、ありますね
でしょう? だからあなたも試してみませんか。今ならお安くしておきますよ
ちなみにおいくら程ですか?
一包十五万円です
高っ!
分割支払いも可能ですよ。月々五千円から。分割金利手数料は葉加瀬研究所が負担します
むむむ……
どこかで聞いた事のあるキャッチフレーズ。だが確かにそれは魅力的だった。
わかりました。買います!
ありがとうございます
葉加瀬博士は笑みを浮かべ、私に巨乳になる薬を手渡した。
その日の夜、私はベッドに入る前、例の巨乳になる薬を飲んでみた。
これで翌朝起きた時には巨乳になっているはず……!
これで念願の巨乳女子高生になれるはずだ。私はウキウキしながらベッドの中に入った。
これは一体どういうことですか!
翌日、私は葉加瀬博士の研究所に怒鳴りこみに行った。
おや、どうされました?
昨日の薬ですよ! これ、見てください!
私が服を脱いで胸を見せる。そこにはまな板どころか、えぐれた胸の姿があった。
巨乳どころか、むしろ小さくなっているじゃないですか! これは一体どういう事です?
そう葉加瀬博士に問い詰める。
おかしいですね。確かに巨乳になる薬を手渡したはずなのですが
葉加瀬博士が机に置いてある薬箱を開ける。すると、あっ、と声をあげた。
すみません
どうしました?
『巨乳』になる薬じゃなくて、『虚乳』になる薬をお渡ししちゃったようです
なんですってー!
虚乳になる薬、それじゃあ大きくなるどころか、胸が消失するのも納得だ。
ちゃんと責任とってくださいよね!
わかりました。今度はちゃんと巨乳になる薬をお渡しします
それだけじゃ許せません!
一体私にどうしろと?
葉加瀬博士が困ったように口にする。
それじゃあ巨乳になる薬と一緒に……
おちんちんが無くなる薬も出してください
私は佐渡マコト、十六歳、男。巨乳女子高生に憧れる、男子高校生だ。
了