世界各地で同時多発的に発生した赤い霧。
 人体には無害。幾ら接種しても何の問題もなく、当時は原因不明の災害程度にしか扱われていなかった。

 弊害と言えばせいぜい視界が悪くなる程度だが、気を付ければ事故を起こす事も無いし、建物にぶつかることも無い。

 "それ"が発見されたのは霧発生から2日後の事だった。
 今更嘆いてももう遅い。
 歩く死体――所謂ゾンビは、瞬く間に人類を駆逐していった。




















亜希

屋上に避難なんて、一体何があったのかな?

美佐

・・・・・・さあ?
不審者でも出たんじゃない?

亜希

それにしてもおかしいでしょ?
先生達皆必死だし、下の方騒がしいし

亀山先生

ほらさっさと屋上へ行け!
不審者に襲われても知らんぞ!

亜希

うへぇー、亀山先生、普段やる気ないのに柄にもなく必死だし。
さっさと屋上に行こ、美佐

美佐

そうだね。ちょうどテストの時間だったし、混乱してる隙にスマホで答え検索しちゃおう

亜希

く、黒い・・・・・・可愛い笑顔しといて黒いよ美佐・・・・・・

私達はこうして屋上へ無事避難した。
 明らかに生徒の数が少なかったけど、下の様子は霧で見えないし、大人しくここで待つことにした。

亀山先生

全員来たか? とりあえず此処で待ってろ。
直ぐに不審者取り押さえてくっからなー

男子生徒

 先生、その不審者はそんなに強いんですか?
 いくら強くても数人で取り囲めば倒す事が出来ると思うのですが?

亀山先生

強いというより数が多・・・・・・いや、何でもない

 亀山先生は一瞬言いよどんだ後、ポケットからライターを取り出して煙草を吸い始めた。

亀山先生

不審者はナイフ持っててな、迂闊に近寄るとはらわたをグサリ、だ。
という訳で手こずってんだよ。さっさと取り押さえて帰ってくらあ。ガキ共は大人しくここで待ってろ

 そう言うと、先生はすぐに階段を下りて行ってしまった。
 それから一時間。
 2度と先生が戻ってくる事は無かった。










美佐

先生戻ってこないけど大丈夫かな?

亜希

さあ・・・・・・
案外けろっとしてるかもよ? あの先生だし

亜希

・・・・・・?

 屋上の扉から何かが聞こえた。
 亀山先生だろうか?

男子生徒

・・・・・・

 さっきの生徒が扉を開けた。

男子生徒

!? 大丈夫ですか?

怪 我をしている女子生徒は例の男子生徒に近付き、

 その肩に食らいついた。

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