銃を、少しでも揺らしたら爆発する物のように、本当にゆっくりと床に置いたあと、箱の中身を確認する。

 銃の弾が大量、簡易食料にナイフに……エトセトラエトセトラ。

 小さい箱に、入れることができるだけ入れたよと言わんばかりの戦闘関係アイテムがずらり。


 すべてを確認し終えたあとに見ることができるようにするためか、この建物の地図は一番下に置かれていた。

時計塔見とり図……この建物って、時計塔なんだな。おしゃれだな

 時計と言えばシンデレラ、と思うが……。

シンデレラの物語がもう一度出てくることはあるのか?

ありませんね

 サンザシさんも断言することなので、シンデレラ説を放棄。

すごいでかい塔だぞ……キルズのアジトなんだな。

この部屋は下の方の端部屋。

何人いるんだキルズのメンバーは……部屋ばっかりだ

 塔の下に食堂や資料室などの設備が整っているらしく、ここは当たり部屋だなあと思いつつ、見取り図を眺める。

 一番上におおきな時計が設置されているようだ。

 そこに、手書きのメモでほぼ人は立ち入らない、お化けが見たければどうぞと書いてある。

 おそらくキツネのメモだろう。いい人だ。思わず笑みがこぼれる。

 そんなのんきな場所はそこだけで、それ以外の場所は印字の文字が冷淡にその場所の役割を告げるだけだった。

 武器庫がやけに広い。それと同じくらいの大きさの医務室もある。

 そういえばシグレが、死ぬかもしれないなんて物騒なことを言っていた。

 牢獄なんて部屋もある、ひえー。

とりあえず、九時までにご飯を済ませようか

 数あるアイテムの中から、いろいろな機能がついていそうな時計を左腕につけ、俺は食堂へと向かった。


 こんな殺伐としている世界だから、食堂もどんよりとした雰囲気であるのではと身構えたが、そんなことはなかった。

 朝の混む時間帯だったのか、人でごった返していたその食堂には、笑いが絶えないようだった。


 食堂の端席に座りながら、なんだかなあと思う。
 ここの人たちは、皆魔法を憎み、それをこの世界から消そうとしている。


 何があったのか、知りたいような、知りたくないような。そもそも、俺も魔法の根元を断絶する役に一役う買うわけで。

っていうか、俺が魔力の持ち主だった、なんて落ちだったらどうしよう

 部屋に戻りそう打ち明けると、サンザシがにこりと目を細めた。

大丈夫です、崇様は死にませんよ

どういう意味だあ!

 ふふふ、と楽しそうに笑うサンザシ。ふふふじゃない、ふふふじゃない!

 ふと、箱から出しっぱなしにしているアイテムたちに目がいく。その中でも特に目立つ、黒い塊に歩みより、そっと手を伸ばす。

 ずしりと重いそれの重みを確かめるように、握る。撃ったことはないが、構えるだけ、構える。

……どう、さまになってる?

うーん

 サンザシ様いわく、微妙らしい。

どうせならさまになっていたかったなあ

そうなんですか?

前に、サンザシが言ったろ。

割りきってしまえばいい、目の前が楽しければいいって。

楽しいってのはいきすぎかもしれないけれど、割りきりたいなあというか。

そういう世界なんだぞって。郷に入っては郷に従えじゃないけどさ……サンザシ?

 急に寂しそうな顔するのはどうしてだ! 難しい子だ。うっかり何かいったか?

いえ、その言葉、覚えていてくださったんだなって

 そこで、笑うだけで済ませてしまえばいいのに、俺と来たら。

大切な言葉なんだな

 なんて、余計なことを言うから。

……とても、大切な言葉です

 サンザシをますます悲しい顔にさせてしまった。


 いたたまれなくなって、俺はさあ出ようと促す。

 約束の時間まで、まだ二十分もあるのに。

4 忌むべき魔法は隠れた青色(9)

facebook twitter
pagetop