……これで良し

 俺は、自撮りしてSNSに上げる。暗い中での撮影は気を遣うが、好きでやっているので別に良い。

お、

 早速、反応が来た。

イケメソwww

良く撮れてるよー

うわぁ、木が鬱蒼としてる……怖っ

 などなど。俺と繋がっているフォロワーの皆さんは口々にコメントを返して来る。
 そう。俺がいるのは、夜中ではないにも拘らず繁る木々によって暗い、森林公園だった。
 何で俺がこんなところにいるかと言うと、俺が『SRSラリー』をしているからである。

『SRSラリー』。フリーゲームアプリで、名称の由来は“心霊スポットを巡るゲーム”だから、頭文字を取って『SRS』なのだとか。……うん、安直だな。

 このゲームは現住所を登録するとまず、エリアが割り振られる。次いでゲーム内で心霊スポットとされる場所が設定され、実際リアルでそこへ行き写真を撮り自分のSNSに投稿する。そうすると、連携したゲームアプリにも連動してポイントが加算され、ゲームのストーリーも進む。
 ちゃんと心霊スポットに行ったかどうかはGPSを使ってわかるのでズルも出来ない。そもそもGPSをオンにしなければゲームでエラーが起きる。そんな仕組みらしい。

 地味だしリアルに行くの面倒臭いし、と言う感じなのだが、不思議と人気だったりする。

 まぁ今が夏なのとか、肝試しはしたいけど本物の怖い思いはしたくない、みたいな人が多いせいで余計なのかもしれない。

うっし、最後!

 最後のスポットに辿り着いた俺は意気揚々と自撮りを噛ます。

いぇーいw

 コメント付きで投稿。
 これで終わりのはずだった。いつものようにレスも付いて。ところが。

え、マジ?

ちょ、マズイって

冗談でしょ?

 何か、流れがおかしかった。俺は首を傾げた。
 最後のスポットは廃墟だった。ゲームでは“患者が死にまくった精神病院の跡地”となっている。今日は複数のスポットを回ってもう夜だった。けど、ゲームが適当に指定したスポット。本当の心霊スポットじゃないしと撮影を決行した。
 それが、間違いだった。

逃げて!

洒落になんねぇよ!

……な、何だよ。みんなびっくりさせようとして……

 なぜか、阿鼻叫喚の様相を呈すタイムライン。俺は、投稿した自撮りを見直す。何も映っていない。何も……。

え?

 俺はそのとき、あることに気が付いた。

 俺の、後ろ。背景が写るよう撮った。
 背後、建物の入り口、この、隅。

な、何だよ……

 俺は、ようやく、俺の真後ろに迫った音に気が付いた。

 でも、もう。

 遅かった。





『SRSラリー』。
 人気のホラーゲームだ。現実やSNSとリンクしたこのゲームには一部都市伝説が在る。
 幾つか真実の心霊スポットが混じっていると言うのだ。
 ただし、真偽は未だ不明である。
 何せ、誰も真相を知らないのだから。

 そう、誰も。

   【了】

『SRSラリー』

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