ヒロイン

ここの料理も食べ飽きたわ

戦士

ははは
流石に20日もいればねぇ

ヒロイン

路銀もだいぶ……

 ヒロインは溜息交じりに、隙間の方が多くてクッタリとしている革袋を手にもって眺める。
戦士はヒロインのその姿を一瞥すると、木造の酒場の中をぐるっと見回した。
 他のパーティには、どこも勇者がいるのが見て取れる。
勇者の目印は『紋章』があること。
『紋章』は、勇者のみ持つことが出来る、いわば『証』だ。

ヒロイン

待ってても仕方ないから、行こっか

戦士

えっ、どこに?

ヒロイン

クエスト案内所

戦士

あぁ、そうだね

 戦士は大剣を担ぐと、先を行くヒロインを慌てて追いかけた。

 『クエスト案内所』。
ここでは主に、儲けが少なく、誰もやりたがらない仕事を取り扱っている。
誰であろうが、クエストを依頼でき。
誰であろうが、クエスト受諾にありつける。

クエスト受付嬢

ひまだねぇ、あんた達も

戦士

何か良いのある?

クエスト受付嬢

良いのはこっちにゃあ回って来やしないよ
他所行きな

 クエスト案内嬢は、煙を蒸かしながらそう吐き捨てた。

クエスト受付嬢

……と、言いたいところだけど

戦士

お? あるんだね?

 クエスト案内嬢は、鼻で息を吐いてニヤリとすると、手招きをする。
戦士とヒロインがそれを見て、クエスト案内嬢の近くに顔を寄せると。
クエスト案内嬢は、小声で続けた。

クエスト受付嬢

あんたら、最近噂になってる勇者の話知ってるかい?

戦士

どの勇者だろう

クエスト受付嬢

二人組の奴らさ

戦士

二人組……
最近だと『純・勇者』とかかな
いつも無報酬でクエストをこなすっていう

クエスト受付嬢

ん~、ソレソレ

戦士

ソレがどうしたのさ?

クエスト受付嬢

その『純・勇者』に同行して、素行調査してくれっていう依頼があるんだが
あんたら、やるかい?

 クエスト案内嬢がそう窺うと、戦士とヒロインは一度目を合わせた。
そして二人の視線を、クエスト案内嬢の言葉がさらう。

クエスト受付嬢

そう堅苦しく考えなさんな
勇者見学みたいなもんさ

ヒロイン

具体的に、私達は何をすれば良いの?

クエスト受付嬢

『純・勇者』に同行すれば良い
あとは、何もしなくて済むだろうさ

 クエスト案内嬢は顔を話すと、再び煙をくゆらせる。

ヒロイン

……どういうこと?

クエスト受付嬢

あとは会ってみれば分かるってもんさ
で、どうするんだい?
やる? やらない?

戦士

同行の期限は?

クエスト受付嬢

1日からでオッケ~

 クエスト案内嬢は、煙をフウッと吐くと、流し目で二人を交互に見つめた。

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