これは今年の春、
私が実際に体験した少し不思議な出来事です。
これは今年の春、
私が実際に体験した少し不思議な出来事です。
「 姪っ子の 」
ただいま~!!
おかあさんただいまーーー!!
って寝てるよ…
私は、母と二人で実家暮らしをしています。
父は数年前から大阪へ単身赴任へ行っていて
月に一度だけ帰って来ます。
あーーー!疲れたーーー!!
その日も私は仕事を終えると、さっさと帰宅。
いつも通り母がある程度用意してくれている夕食の支度をし、食事をとっていました。
なんも面白いテレビやってねーーー…
一通りチャンネルを回してもとくに見たいテレビも見つからなくて、夕食を食べ終えてそのまま横になりなんとなくうとうとしていたとき
『…―……、――……』
遠くの方からかすかに、人の話声が聞こえてくることに
気が付きました。
我が家はちょっと過疎った地域の集合住宅地で、家に面した通りも夜にはあまり人が通らない。
けど、それでもまったくないわけではないし、生活音などの音がなくなった静かな夜には外で人がしゃべる声も、良く響いて聞こえます。
だれか、外で電話しながら歩いてんのかな―…
そんなことを思いながら耳をすまして声を聞き取ろうとしましたが微かな音しか聞き取れず、
『人様の話を一生懸命盗み聞きするのもなんかなー…』
と思った私は、諦めてお風呂へ向かいました。
お風呂から上がると居間の電気は消えていました。
うちは、3DKでうち一部屋が居間。
私の寝室、お父さんの寝室でふた部屋埋まっているので居間がお母さんの寝室兼として数年使われています。
『…―……、――……』
『…―……、――……』
『…―……、――……』
(え…)
(嘘、まだ話声聞こえる…)
私は自分の耳を疑いました。
そうは言っても、いかんせん集合住宅。
お隣さんはよく夫婦喧嘩をするお宅だったので
『あー、またお隣さんだったのか…』
そう思って、もう一度耳を澄ませました。
どうやら、声は居間の押し入れの方向から聞こえているみたいでした。
(え…?…おかしくない?)
居間の向こうは、押し入れと押し入れではない別の物置を挟んで私の部屋なのです。
私は一瞬にして背筋が凍りつきました。
私の勘違いかもしれない
そう思って一通り部屋を歩いて声の出所を探しましたが
やはり押し入れの方向から聞こえてくるのです。
いや、
正しくは
押し入れの中から…
私は恐る恐る襖に耳を付け中の声を窺いました。
『…い……、まい……、こ…こ……』
『あなた…、…うち…、どこ……』
今までになくはっきりと声が聞こえその声が『女性』のものであること
そして
歌っているような声であることに、私はそこでようやく気付きました。
勇気を振り絞り、私は襖を開け中へ頭を入れて
音の出所を確かめました。
それは、よくホームセンターなどで売っている
布でできた蓋付きのカラーボックスの中から聞こえてくるようでした。
蓋を開けると歌声は一層大きく、すべてがはっきりと聞こえその声は『いぬのおまわりさん』を歌っていることが分かりました。
取っておきたい雑誌などが雑多に詰め込まれたその一番奥
そこに声の主がいました。
『うたっておぼえるどうようえほん』
それは10年ほど前、まだ兄家族と二世帯で暮らしていた時に母が幼かった姪っ子に買ってあげた本でした。
なんだ…壊れて鳴りっぱなしだったのか…
正直、ホッとしたような、
現実的なオチにガッカリしたような気分で私はさっきまでの自分の怯え様に失笑してしまいました。
も~~~~~っ!!ばかやろ―!こうしてやる!!
笑いながら言うと、私は自分の手の中でいまだに壊れたせいで
歌い続けている本を裏返し、電池を抜くために蓋を開けました。
げ……電池液漏れしまくってドロドロじゃん…
さすがに10年近く放置されていただけあって、もともと付属品として付いていた電池は黄緑がかった半固形の液体をこびりつかせていました。
あまりにベトベトだったため、お風呂から上がったばかりの私は、手を汚すのも億劫でとりあえずそのまま捨ててしまおうかな、とその日は放置して眠りにつきました。
翌日
私は昨日の出来事を母に話しました。
母は、笑って懐かしい本を眺めながら私の話を聞いていましたが、本を裏返し電池を入れる部分を見て急に真面目な声で言いました。
この本、電池ほとんど液漏れしてるのによく音なったねぇ・・・
私は、母に指摘されるまでそんなことに全くきがつきませんでした。
私は理科が苦手だったのでよくわかりませんが、10年も放置され液漏れして固まりこびりついた電池で、おもちゃは動くのでしょうか。
ずっと放置された押入れの中で
なぜ、急に音を出し始めたのでしょうか。
また、後日談となりますが…
少しだけ上でご紹介した夫婦喧嘩の絶えないお隣さん、
奥さんは私が小学校の頃からいつも良くしてくれている優しいおばさんでした。
1週間に1度は家の近くで見かける
そんな近所の優しいおばさん。
でも、あとで知ったのですが実はヒステリー持ちで些細なことですぐに旦那さんと喧嘩になっていたんだとか…
ちょうど、絵本がなったあの日から
おばさんの姿をぱたりと見かけなくなりました。
旦那さんや息子さんは、今まで通り家の近くですれ違っては挨拶をすることがあったのですが。
なんとなく気になりだしたすぐあと、
お隣さんは引っ越していきました。
引っ越しの挨拶も旦那さんと息子さんが二人で来て、
最後までおばさんの姿を見ることはありませんでした。
一番、交流があったのはおばさんなのに
どうして…?
どうしても、その違和感が拭えないまま
隣には、新しく住人が来ました。
フルリフォームしてピカピカの家に。
ただのこじつけかもしれません。
でも
私は何かあったんじゃないかと
今でも考えずにはいられないのです。
まいごの まいごの
こねこちゃん
あなたの おうちは
どこですか?