キュウ
キュウ
とある深夜、部屋で一人ゴロゴロしていると
・・・キュウ
という変な音がベランダからしました。
先ほどから雨が降りはじめたので、風で物干し竿が擦れる音かなと思いました。
ただあまりに気になったのでとりあえず、窓を閉めようと思って目をやると網戸に黒い小さな影が見えました。
ハエにしては大きすぎる影だったので一瞬ビックリしつつも何だろうと思って確認してみると
どうやらそれは二匹のヤモリでした。
その二匹は寄り添って重なっていたので交尾をしているのかなあと思ったのですが
もっと近づいてよく見てみると
片方のヤモリがもう片方の首根っこに噛みついて共食いをしていたのです。
わッ!
と思わず自分が声を上げると噛みついていた側のヤモリがびっくりしたようでササッとどこかへ逃げて行きました。
一方、噛まれていた側のヤモリはその弾みでベランダに落っこちました。
恐る恐るその落ちたヤモリを見たのですが、暗がりでハッキリと様子は見えなかったものの、全くその影に動く様子がありませんでした。
直感的に死んだなと思いました。
でも死体を片付けるのは怖かったのでそのまま見なかった事にして朝まで寝過す事にしました。
そして翌朝。
自分は母親の悲鳴で飛び起きました。
ベランダでガタガタと震える母に
どうしたの?
と聞くと
さっきベランダの床に半分首のもげたヤモリの死体があったの。気持ち悪いから箒で掃こうとしたら『キュウ!』とか言って急に動き出して走ってどっか行っちゃったから腰を抜かしちゃって
…
それを聞いた僕の胃がキュウっと締め付けられた。
完