よう餓鬼ども。元気してっか?
オーナー!
最初に出迎えたのはこの店で店長をしている男。
この前スラムで財布ひったくろうとした餓鬼だ。
次いでぞろぞろと餓鬼どもがやって来る。
店は開店準備中だったらしく、忙しそうにしてやがった。
婆ちゃんとこ急ぎたいし、こいつらの邪魔をするわけにもいかねえからな。
長居はしねえさ。
丁度良かったです!
そう言って来たのは店長の妹の餓鬼だ。
会った時に比べやせ細ってた体も健康なものになっている。
あ? 何が丁度良かったんだ?
新作のケーキを作ってみたんですが、味見をお願いしたく
新作? てめえが?
はいっ!
こいつぁ驚いた。
餓鬼が新作思いつくとは流石の俺も予想外だった。
どれ、見せて見ろ
はいっ!
厨房に行ってその新作とやらを確認する。
ほう……こいつは……。
中々可愛くデコレーションされたケーキ。
中に入ってるのはソース? いや、ムースか!
切り分けて貰ったのを口に運べば口いっぱいに広がる爽やかな香り。
これはまさか、ユズンの実か?
あれは確かに良い香りだが、中身は食えなかったはずだ。
いや待て。この見た目……そうか、皮か!
加工してあるんだな。それに中々美味い。よくもまあ思いついたもんだ。
これは売れるぞ!
ほんとですか!
大手柄だ! っと、丁度良い。これ、一ホール分貰って行って大丈夫か?
大丈夫ですが、お城の人と食べるのですか?
いや、婆ちゃんがぎっくり腰でな。見舞い行くついでに持っていこうかと
婆ちゃんって、大婆様!?
そうなるな
魔導士ギルド筆頭が私のケーキを……
あわわ
さすが婆ちゃん。
スラムの餓鬼どもでも知ってるくらいに有名だったか!
そうだ。新しい制服持って来たんだ。後で着て見ろ
はいっ
これは……可愛い!
ありがとよ
着た姿を見るのはまた今度。
って訳でケーキ持って店を後にする。
背負ったバックには最高級ワイン。
右手にケーキ。
準備は万端だ。
さあ出発!