烏の目

烏がどこかで鳴いた。
私はびくりとして振り返る。

カラスがこちらを眺めていた。
私と目が合うとカラスはもう一度『があ』と鳴いた。
なんだか私は気持ち悪くなって逃げるようにそこを立ち去る。

カラスも私がいなくなったのを確認したしたのか飛び去った。

ああ、安全だ。
わたしがそう思ったとき、

なにかが降ってきた。
なんだろうと思った私はそれを顔の前に近づける。

血だ!

慌てた私の足下になにかがごろりと転がった。

それは眼球をくりぬかれた猫だった。

私は慌てて走り出す。
なぜ猫が!

があ、があ、があ、があ

があ、があ、があ、があ

があ、があ、があ、があ

があ、があ、があ、があ!!!

声がどんどん近くに近づいてくる。
烏が私を追いかけてくる音だ!

鳥の羽ばたきが聞こえる。

私が振り返ると烏が私へ向かってきているのが見えた。
赤い目。
不自然な赤い目の烏だ!

烏のクチバシが私の頭へ激突した。
どろりと暖かい血が額に流れてくる。

私は慌てて手を振りまわす。
その間にも烏は私をめちゃくちゃについばんでいく。

私の手が烏に当った。
チャンスだ!
私はムリヤリ烏を掴み、アスファルトへ叩きつけた。
そして……

ぼきり。

私は烏を踏みつぶした。
そのまま何度も何度も踏みつぶす。
やがて烏は動かなくなった。

烏が動かなくなると、私は救急車を呼ぼうと携帯で電話をかけた。
私は血まみれになっていた。
生き物を殺してしまった。
救急車を呼んだらどこに電話しよう?
警察?
それとも保健所だろうか?

そう考えていると電話が救急センターに繋がる。
私は烏に襲われて怪我をしたことを必死に伝える。

があ、があ、があ

があ、があ、があ

があ、があ、があ

があ、があ、があ

何十匹という烏の鳴き声がした。
囲まれている!

そして烏たちは私目がけて……

もしもし?
xxさん?
大丈夫ですか?
変な音が聞こえてますが?

その声が聞こえたとき、烏は私の目をついばむところだった。

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