マフラーを拾った。学校の帰り道のことだった。
普段ならマフラーが落ちていようが、ああ誰かの落とし物なんだろうなと思ってそのままにしてしまう。
でもそのマフラーは、なぜかわからないけれど非常に心惹かれた。人通りの少ないアスファルトの上に放置されたそれを拾い上げる。
柔らかい。とろりと肌の上に乗るようで、しかしふわふわと空気を含んで膨らんでいる。毛糸で編まれている訳ではなく、何か動物の毛を使って作られているようだった。
ずっと触っていたい。そう思わせるほどにそのマフラーは心地よく、不思議な魅力があった。
しかし勝手に持ち帰る訳にもいかない。とりあえず警察に持って行く事にした。