「……あなたがもし覚えているなら、
私の話を聴いて欲しい。
そして伝えて欲しい。
私のことを。あなたのことを。
今日あったことを。

私には今までの今日の記憶がいくつかある。
この世界がどういう仕組みなのかも知ってる。
脱出する方法は……まだ解明してないけど、
わかっていることはある。

滝沢 多岐の記憶は通常受け継がれず、
それぞれ別の時間を生きてきた人格でいる。
高宮 雅の記憶は受け継がれ、
最初の人格に今日が積み重なっている。

滝沢 多岐はこの世界に来てから、
何の抵抗もなく脱出を考える。
一方、高宮 雅にはそれが見受けられない。

高宮 雅は滝沢 多岐に協力せず、
謎のある場所を先に荒らし、
まるで見当はずれの推理で場を惑わす。

……だから私は、滝沢 多岐は考える。
高宮 雅こそが敵なのかもしれない。
高宮 雅こそが――原理は不明だが、
この世界に私たちを閉じ込めた、
犯人なのかもしれない、と。

これを聴いた私、思い出して欲しい。
高宮 雅が私たちにしてきたことを。
その真意を。

昼時間でこれを聴いたなら、
即刻一人でも脱出の方法を編み出してほしい。
夜時間でこれを聴いたなら、
次の私たちに渡るよう、謎を残して欲しい。

ラグの時間にこれを聴いたなら、
高宮 雅が何も知らない私たちを
洗脳、扇動するような仕掛けをすべて
回収してほしい。

タイムラグは夕方、明け方の二つある。
どうか頼んだ。
2015年、6月――……

ダンダンダンダン!
『……にしてるの!?……沢 多岐!
ここを……なさい!』
ダンダンダン!

……ブツッ」

タキ

……

タキ

そっか……

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