ここは大州「ユーパスト」、そしてその国の一つ「エングラド王国」
エングラドは豊かで平和な時を過ごしていた、しかし
ここは大州「ユーパスト」、そしてその国の一つ「エングラド王国」
エングラドは豊かで平和な時を過ごしていた、しかし
てえいっ!!
勇者、さすがにやりますが……
今、エングラドでは魔王エクリプスの侵略を受けており、抵抗を行っていた
その最先鋒となって剣を振るっていたのが、「勇者」の資格を持つ戦士たちだった
くそったれっ!
エクリプスの城は目の前だって言うのに!
その「勇者」の一人が、彼、ライカ・アベイン
かなり若くして勇者になり、固定のパーティーを持たずに一人で進んできた、誰もが認める実力者
その単独スタイルから、誰が呼んだが「単独行ライカ」
エングランドでも有名な勇者
残念ながら、ここを通すわけにはいきませんので
例え単独行ライカであっても
ええい、単独行言うな!
寂しいヤツみたいだろうがぁっ!!
輝く剣によい斬撃
ですがその程度では万が一私を倒せたとしても、魔王様に届かないでしょう
もう夜も遅い
私は休みたいので、決着をつけさせていただきます
なっ……
ナメたことをぉぉぉぉぉぉっ!!
!?
ライカは腹部に刃物での突きを受けてしまい、力なく倒れてしまった
一丁上がり、と言うやつです
今の一撃であなたはもう戦闘不能
魔王様にも会えないということ
くぁっ、くぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
勇敢心(ゆうかんしん)を振り絞ったって、ダメなものはダメです
ほら、血がより流れて死が迫りますよ
オレはっ! オレはっ、勇者だっ!
こんなところで、なんにも成果をあげられないでえぇっ!
う、あ……
そう、そのまま大人しく
私はトドメを刺しませんから
ど、どういうことだ……?
まだまだあなたは伸びる、もっと強くなれる
たった一人でここまで来れたのだから、ここで殺すには惜しい
それにそんなになってまでも、まだ凄まじい勇敢心を残している
すぐ死んでもおかしくないほどなのに、持ちこたえている
その力、もっと見てみたい
情けを、情けをかけるな……!
いいえ、かけさせていただきます
ふざけるなっ! 殺せっ、殺せぇぇぇぇっ!
またの挑戦をお待ちしております
単独行ライカ
目的地は……ほほう、バルストルに知り合いが
投身魔法、発動
では、御達者で
くっそぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!
魔王の配下が唱えたワープ魔法、投身魔法によってライカは一瞬で飛ばされてしまった
こうして、単独行ライカは魔王エクリプスを討ち果たすことできず、敗北という結果を残してしまったのだった
そして数日経って――
んっ、んん……
あっ、ライカ! ライカっ!
す、スタイア……?
よかったっ、よかったよおっ、ライカーっ!
こ、ここはどこだ?
オレはどうして?
バルストルの病院だよ
ライカ、家の前で倒れてたの。ひどいケガで
死ぬかもしれないってお医者先生に言われて……
回復異法をかけても何日も起きなくって……
あたしっ、もう……
おいおい、泣くなって辛気臭くなるじゃんかよ
でも、ごめんな……心配かけちまった
ううん、ライカが必死に頑張った証なんだから
おかえりライカ
ああ、ただいま
よっ……と
ベッドから身体をゆっくり起き上がらせる
スタイアはそんな彼を支えた
大丈夫?
ああ、勇敢心で治りは早くできるから
勇敢心が使えるのが、勇者の特権だね
力が増したり、ケガを治したり、とにかく便利だよね
あと数日飲まず食わず眠らずでも大丈夫なんだぜ
これまでで最長は三日だな。その分、勇敢心を使っちまったけど
もう、そんな使い方しちゃだめだよ
ねえ、これからどうするの?
…………
……それならもう決めてある
やっぱり一人は難しかったんだよ
みんな呼んで、あたしも一緒に行くから……
絶対ライカの役に立つから
それなら絶対勝てるよ!
ここにしばらく住むことにする
あっ、そうだよね
まだケガだって治りきっていないし、それにもっと修行だってしたいもんね
オレ、勇者休む
うん、お休みは必要だよね
というか辞める
えっ?
オレ、資格取る!
はっ?
資格猟師になる!
あらゆる資格を狙い、取得する資格猟師に!
な、何言っているの?
何って、そのままだ
魔王を討つのは止めて、資格取得に全力を出す
ちょっと!
じゃあ誰が魔王を倒すのよ?
誰かが倒してくれるって
ほら、色んなパーティーが迫ってるって聞くしな、時間の問題だって
しかし問題はそのあとだ
魔王がいなくなったあと、勇者はいらなくなる
勇者失効だ
冷静に考えた結果、今のうちに色んな資格を取っておいて、魔王討伐後の先行き不安な将来を打破しようということだ
ライカ、それ本気っ!?
ああ
ライカ、強いんだし名も知れてるんだし、勇者失効したって大丈夫だよ……
むしろ、魔王を倒したほうがそのあとも絶対いいよ
ね? だから勇者辞めるなんて言わないで
いいや、辞める!
辞めるったら辞める!
オレは資格猟師に転職するんだ!
……バカ
?
ライカのバカっ!
もう知らないからっ!
スタイアは部屋から飛び出ていって、ライカはその様子をぼうっと眺めるしかなかった
まさかスタイアがあそこまで怒るなんてな……
……ごめんな、でもこれしかないんだ
さて、なんかちょうどいい資格はないもんかな……
どさっとベッドに倒れ込み、資格のことを考えながらまぶたを閉じた
そうしているうちに、やはり身体はまだまだ本調子でなかったから、眠ってしまうのだった
窓の外は夜、とても静かで深い夜だった