世の中には怪異、幽霊、不可思議な現象が
確かに存在する……。
それらは時として、取り返しもつかない事態へと
人々を誘い込む。
世の中には怪異、幽霊、不可思議な現象が
確かに存在する……。
それらは時として、取り返しもつかない事態へと
人々を誘い込む。
……今までのつけを払う時が来たのだろう。
JKたちは危機感が足りなかったのだ。
そう、致命的なまでに。
無知と愚行の対価はいつだって法外だ。
今回、彼女たちは永遠に逃れられぬ罠という形で、
人生の終着駅へ向かいつつあった。
これは……流石にまずいですわね
うう、やっぱりどこからも出られないみたい。一緒の閉鎖空間みたいな感じなのかなぁ……
ねぇ、どうすんの? もしかして、本当に出れないとかないでしょうね?
夢見ヶ丘学園☆しんれ~ぶ
第六夜:異界に続く鏡
私達は現在学園に閉じ込められている。
それもこれもあやかが確認しようと言い出した
怪談のせいだ。
――踊り場の姿見鏡の怪
深夜0時にその鏡をのぞき込むと、
鏡の世界に引き込まれるという、
どこの学校にも存在するようなありふれた怪談。
ご多分に漏れず私達の通う学園にも
あったわけだけれども……。
覗きこんだ私達を強烈な光が包み込んだのは
正確に0時だったのだろうか?
気がつけば、校舎の窓という窓は全て固く閉ざされ、扉も一切の通行を許さぬ鋼鉄製の城門の如く
私達の脱出を拒んでいた。
……今はあてもなく校舎をうろついているところだ。
なんとか脱出する術があれば良いのだけれども。
けれど、もしそんな方法がどこにもなかったら?
私は、その恐ろしい想像になるべく考えを
巡らさないよう、少しばかり早足で目的地のない
歩みを進めていた。
なんとか学校から出ることができればいいんだけどなぁ……
はたしてそうでしょうか?
えっ!?
お家に帰ることももしかしたら出来ないかもしれないですけどね……
ごめん、てーちゃん。私も同じこと考えてた
えっ!? どういうこと、あやかちゃん、
さーやちゃん…!?
この世界。まさしく合わせ鏡の世界なのよ。鏡の世界。きっと閉じ込められちゃったんだわ……
えっと、じゃあさっきの鏡のところまで行けば大丈夫なんじゃないの?
それが、肝心の鏡が無いんですの
じゃあこのままお家に帰るっていうのは?
さっき試したでしょ?
学園から出られないわ。それに、あべこべの世界で帰ってどうするのよ?
誰もいないのよ?
じゃあ、じゃあどうすればいいのよ……
…………
…………
不安が伝染する。
行き場のないそれが、まるで互いを
刺激するかのように膨れ上がる。
もう駄目なのだろうか?
このままお終いなのだろうか?
気がつけば身体は震え、力の入らなくなった足が立つことさえ拒絶する中……。
ぽつりと、その言葉は暗い廊下に響き渡った。
一つ、方法がありますわ
な、なにそれ!? どういう方法?
流石あやかちゃん! 私達が知らないところでちゃんと閃いていたんだね!
いえ……さっきてーちゃんさんが私にヒントを教えてくれたのですわ
……ヒント? なにそれ?
ほえ?
…………
学園に火を放ちましょう!!
はぁっ!?
えっ!?
ちょ、ちょっとあやかちゃん! どういうことなの? 学園に火なんて放ったら私達まで焼け死んじゃうよ!
そこはほら、校庭に避難すればいいじゃないでしょうか?
いや、その前になんで学園に放火するっていう発想が出てくるのよ?
ついに頭がおかしくなったの?
いいえ、私は至って冷静ですわ。今回の放火にもちゃんとした理由がありますの……
……嫌な予感がするけど、一応聞いておくわ
この世界。あべこべの世界ですが、一つ特徴がありますの。……ほら、あれを御覧ください
街の光……人がいるのかな?
けど学園には当直の人とか、花ちゃんとか居なかったわよ?
人はいない、しかし人のいる気配だけはある。つまり、この世界は現実の世界とリンクしているのですわ。まさしく鏡のように
う~ん、どういうこと?
えっと、もしかして、こっちでやったことが現実の世界にも反映されるってことかな?
あっ! と、いうことは何らかの形でこっちからSOSを送ればいいのね!
ご名答ではありませんか、流石心霊部の部員ですわ
――ちょっと待て
なんでしょうか?
いや、なんでそれが学園に放火することに繋がるのよ!?
わかりやすくありませんか? 流石に校舎が燃えたら誰かが気づいてくれるでしょう。
後は野となれ山となれ。各々流れでお願いします――ですわ
きゃ、却下よ却下! そんな強引な方法とってどうするのよ、もっと穏便にやりなさいよ!
すみません、さーやさん
……わかってくれたのね? よかった、じゃあ皆でもっとマシな方法を考えましょ?
いえ、そういう訳ではなくて……
さ、さーやちゃん……
なによ、今言い所なんだから。……どうしたのあやか?
さーやちゃん! 火っ! 火っ!
……え?
ご覧のとおり、すでに火を放ちましたの
消火器ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!
こうして夜空を照らしあげる程に赤々と燃えがある
夢見学園の校舎を前に、
JK三人は必死の消火活動を行う。
しかしながら非力なJKの前に自然法則は
容赦なく襲い掛かる。
消火器も切れ万事休す。
もはや全てを放り投げて逃げ出そうかと思った三人を突如光が覆い尽くす。
……三人が恐る恐る目を開けると、目の前には火が消え焼け焦げた、だが彼女たちが見慣れたあべこべではない校舎が鎮座していた。
果たしてどのような存在が彼女たちを
救ったのだろうか……。
それは神か仏か、それとも全く別の何かか――。
その答えを知る術を持たぬまま、彼女たちはなぞの存在に大いに感謝した。
ちなみに、この件はなぜか学園側にばれ、彼女たちは大目玉を食らった上、その後数日運気がだだ下がりでたいそう苦労することとなる。
明らかに何者かからの評価が下がりまくっているのを感じながら、彼女たちは三歩も歩けば忘れてしまいそうな反省をするのであった。