籠の鳥は/檻の私は、すでにいなくなってるんじゃないかしら。
わたしは、いつまでここにいるの?
さぁ?
わたしは、どうやったらおそとにいけるの?
おとなたちがあきるまで
でも、そのときには
そう、そのときには
籠の鳥は/檻の私は、すでにいなくなってるんじゃないかしら。
……ん
窓から差し込む、鈍い光で目が覚める。
どうやら、今日も朝が来たみたい。
……
朝は嫌い。
今日も退屈な1日が始まると思うと、ここからすぐにでも消えたくなるから。
おなか……すいた……
テーブルの上には、いつ頃持ってきたのかわからないけど、朝食がすでに置いてあった。
冷め切ったパンとスープ、それにぬるいミルク。
今日も全く同じメニュー。
……いただきます
いつもの味なので、早く食べる。
ごちそうさま
おじいさまは、きょうもいっしょにごはんをたべてくれなかった……
おじいさまがいてくれたら、こんな食事も、すこしはましになるのにな。
もう、顔も忘れてしまったけれど。
ごほんでも、よもう
お昼になったようで、すでに食事が置かれていた。
朝と同じように早く食べて、さっき起きてきたお友達に声をかける。
いつもこのお寝坊さんはお昼に起きてくる。
ちょっとこまったさんだけど、わたしの大切なお友達。
おはようテディ、おめざめはいかが?
おはよう、アン。今日もとてもいいお目覚めだったよ
アンは相変わらず早起きさんなんだね。感心しちゃうよ
わたしがはやおきさんなんじゃなくて、あなたがおねぼうさんなだけよ?
さぁ、きょうもおはなししましょうテディ? きょうはこんなごほんをよんだのよ
いまからよんであげるね
ありがとう! 今日はどんなお話かなぁ♪
お昼はいつも、テディにご本を読んであげる。
不器用な魔法使いさんが、不思議な女の子と出会うお話。
気の強い女の子と気の弱い男の子が、知恵と勇気を振り絞って悪い人たちと戦うお話。
知らない場所に飛ばされてしまった女の子が、元の場所に帰るまでその場所に住む人達と仲良く暮らすことにするお話。
いろんなご本を読んであげるけど、最後には決まって読んであげる、私の好きで嫌いなこのお話。
それじゃあ、これがさいごのごほんだよ
むかしむかし、あるおおきなおやしきに、ひとりのおんなのこがおりました
そのおんなのこは、このおやしきのおへやからでることができません
でようとすると、いつもおんなのこをみている、こわいおとなたちにおへやのなかへもどされてしまいます
それをしっているおんなのこは、このひろいおへやでごほんをよんだり、ぬいぐるみとおはなしをしてすごします
そうしてよるになって、こわいおとなたちにおそわれないように
ちいさいからだをさらにちいさくさせて、このひろいべっどで、ねむるのです
そのあとに、こわいゆめをみて、またあさがくるのです
おんなのこの、だいきらいないちにちが、またはじまるのでした。おしまい
テディ、どうだった? このおはなしはおもしろかった?
………
テディ、ねちゃったの?
テディは、このごほんをよむといつもおねむになるのよね
……
……
窓の外が、暗くなってきた。
夜になったみたい。
夜も嫌い、
怖い大人たちは寝てしまうけれど、お外の森が騒ぎ出すから。
ガサガサ ガサガサ
………!
怖い。
怖い怖い怖い。
大きな怪物に、食べられてしまいそうで。
でもそんな怪物なんてどこにもいなくて。
たべられちゃうほうが、よかったのかな?
おへやにいるよりも、おなかのなかのほうがしあわせなのかな?
……
おやすみ……なさい……
1日が終わる。
そうして、また朝が来る。
私が、わたしの夢を見たあとに────。