今日も一緒に帰ろう!
うん……わかった
それじゃアタシ、部活だから終わるまでまっててね
うん……
部室
おつかれー
うん、おつかれ。合唱コンクール近いし、頑張ろう!
そうだね、まずはもう一度全体で合わせよっか!
教室
ムカイさんが部活終わるまでどうしよう……
僕は携帯電話も持ってないし
宿題でもやろう
部室
よし、今日は終わり!
はあー疲れた
今日も頑張ったねー
そういえば、この間さー
えーマジで!? ヤバい!
もしかしてあれなんじゃない?
ワイワイ……
校門
……
ムカイさん遅いなあ……
宿題終わっちゃったよ……
一時間後
あ! シマダくん!
ムカイさん……終わったの?
あーそれでさ、今日は部活の友達とカラオケ行くことになったから
え?
また明日ね、バイバイ
うん……
翌日
帰り道
それでさー、ミヤザキがさー
うんうん
そうだったのよ。ヤバくない!?
うん、わかるよ
あはは、やっぱりシマダくんは面白いね!
あ、ありがとう
じゃあまた明日、一緒に登校しよ!7時に駅で待ち合わせね
うん……(早いなあ)
翌日
まずい、待ち合わせに遅刻した!
ちょっと、シマダくん?
はい……
待ち合わせに遅れるなんて、どういうつもり? アタシ10分も待ったんだけど?
ごめん……
罰として、お昼奢ってね
え!?
なに? そっちが悪いんでしょ?
はい……
昼休み
じゃあアタシは、A定食ね
はい……僕はうどんで……
あ、ミヤザキー!
あ、ムカイ? 一緒に食べない?
うん、わかった!
え?
それじゃ、そういうことだから。食券もらうね
あ……
それでさー
えー本当!?
……
放課後
じゃあ今日も待っててね
あの……
なに?
今日、みたいテレビがあるんだけど……
は?
……
なに? テレビが見たいっていう理由でアタシと帰るのを断るの?
いや、その
テレビなんていつでも見られるでしょ? 録画でもすればいいし。それより、それともアタシのこと、友達と思ってないの?
そ、そんなことないよ!
じゃあ、待っててくれるよね?
はい……
土曜日
出掛けてくるよ
あら、今日もムカイちゃんと遊ぶの?
……うん
いいわねえ、あんな可愛い娘が遊びに誘ってくれるなんて。あんた友達いないんだから、ムカイちゃんに感謝しなきゃダメよ?
わかった……
いってらっしゃい
そうだ、せっかく女さんが誘ってくれるんだから、喜ばないと……
繁華街・待ち合わせ場所
ムカイさん遅いなあ。公衆電話から電話かけよう
ああ、シマダくん?
どこにいるの?
××服屋だよ。繁華街の外れの
なんでそこにいるの?
友達と会って話してた
そうなんだ……
じゃあ、こっちに来てくれる?
え?
店の前で待ってるからねー
切れちゃった……
××服屋前
ここにいるはずなんだけどな。もう一度電話をかけよう
もしもし、シマダくん?
どこにいるの?
買いたい本があってさ。それがすごい面白そうなの!
うん
それでさ、ミヤザキとその本のことでメールしてたらいてもたってもいられなくてさ
うん……それでどこにいるの?
あー、待ち合わせ場所の近くにある本屋だよ
そうなんだ……
じゃあ、こっちに来てね
え!? あ、切れちゃった……
本屋
シマダくん遅い!
だ、だって大分距離あったし
ほら、今日は買いたいものいっぱいあるから、早く行くよ!
うん……
アクセサリーショップ
うーん、このペンダントもいいし、この指輪もいいな
そうだね
どっちが似合うかなあ?
ムカイさんには、こっちじゃない?
アタシじゃなくて! ミヤザキにあげるの! シマダくんも真面目に考えてよ!
ミヤザキさんにあげるって、初めて聞いたよ……
四時間後
今日は欲しいものいっぱい買えたね!
僕はムカイさんに着いていっただけだったな……
じゃ、明日も買い物に付き合ってね
え?
どうしたの?
いや、明日はちょっと……
何かあるの?
ええと……(明日はゆっくりしたいな……)
どうせ家でゴロゴロしてるんでしょ。だったら付き合ってよ
あの……
家でゴロゴロしてるより、外に出たほうが有意義だよ?
でも、ムカイさんに着いていっても、僕の行きたい場所には行ってくれないし……
はい、決まり! また明日ね
はい……
自宅
ただいま
お帰りなさい。楽しかったでしょ? あんな可愛い娘と遊びに行ったんだし
えーと……
何よ、楽しく無かったって言うの!? あんたねえ、あんな娘あんたには勿体ないくらいだよ! せっかく誘ってくれるんだから、もっと喜びなさい! 失礼よ!
はい……
月曜日
今日もムカイさん遅いな……
あれ、シマダじゃん
タケモトくん、まだ残ってたの?
ああ、委員会が長引いてな。あれ、お前帰宅部じゃなかったっけ? お前こそどうしたんだよ?
うん、ムカイさんを待ってるんだ……
え?
一緒に帰ろうって言われたんだ
あれ、ムカイって合唱部だよな?
うん
ということは、お前とは帰る時間違うよな?
うん
……お前、誰かと話していてこの時間まで残ってたのか?
いや、ずっと一人だったよ
一応確認するけど、お前が一緒に帰ろうって言ったの?
いや、ムカイさんが部活終わるまで待っていてって
……
……どうしたの?
……お前とムカイって付き合ってるの?
ううん、友達だよ
お前……何も感じないの?
え?
いや……ムカイは自分の都合でお前をこの時間まで残らせているんだぞ? それについて何も感じないの?
でも、ムカイさんが一緒に帰ろうって誘ってくれたから……
そうじゃなくてさ、お前はどうしたいの?
え?
だって、放課後は自由に使える時間のはずだぜ? お前だって、今までの時間で部活なりバイトなり出来たはずだ。それを自分の都合で奪ったムカイに何も感じないの?
そ、それは……
まあ、お前がいいんだったらそれでいいけどさ。少し考えた方がいいぜ
……
十分後
シマダくーん!
ムカイさん……
さて、帰ろうか
うん……
……
帰り道
ねえ、ミヤザキ
ん、なに?
ムカイとシマダくんって付き合ってるの?
いや、友達だって言ってたよ
そうなの? なんかおかしくない?
なにが?
だってさ、シマダくんって帰宅部でしょ? 部活も無いのに、この時間まで残ってムカイを待ち構えているのって気味悪くない?
確かに……
ムカイって優しいからさ、友達にいないシマダくんにも手を差し伸べちゃったから、勘違いしてるんじゃない?
そうかも
一度、私たちでビシっと言った方がよくない?
そうだね、明日二人でシマダくんに文句言おう
翌日
教室
今日もムカイさんは部活か……
ちょっとシマダくん
なに?
話があるの、ちょっと来て
う、うん
階段
話って?
あのさ、ムカイに付きまとうの止めてよ
は?
は? じゃないわよ。部活も無いのにあんな時間まで残って、ムカイのこと付け回してるんでしょ?
い、いや、その……
否定しないってことは、図星なんだ
ち、ちが……
ねえ、これ先生に言った方がよくない?
そうだね
あ、あの、待って……
おい、ちょっと待てよ
なにアンタ? ちょうどいいわ、このストーカーを先生に突き出すから手伝ってよ
あ、ああ……
待つのはお前らだよ。シマダはストーカーじゃないぜ
え?
こいつはムカイが待つように言ったから待っていただけだ。先生がその現場を見ていたらしいから間違いない
そ、そうだったの?
だから、このままシマダを突き出せば恥を掻くのはお前らだぜ?
あ、えーとその、ごめんねシマダくん。コオリヤマがあなたのこと疑うから……
ちょっと、何他人のせいにしてんのよ!?
あーもういいだろ。この話は終わり!
わかったわよ! もう!
ごめんね本当に……
昇降口
ありがとう、タケモトくん
あんな咄嗟のウソでも信じてしまうもんだな。さて、次はお前だぜ
え?
さっきはお前ひとりじゃどうにもならなそうだから、手を貸した。だが、ムカイとの関係はお前ひとりで決着をつけるべきだ
決着?
お前はどうしたい? ムカイとどういう関係になりたい? それを考えたうえで答えを出してムカイに伝えるべきだ
僕の、答え……
俺はそれを応援することしか出来ない。だから、お前が答えを出せ
……
放課後
なに? 話って
……あのさ
うん
……僕はもう、ムカイさんと一緒には帰らない
え?
僕は早く帰って、家でゴロゴロしたい。ゲームもしたい。漫画も読みたい。だから、ムカイさんを待ってはいられない
ちょっと待ってよ、そんなことのために早く帰るなら、アタシのことを待っていたって……
違う!
……!
どんなに外に出て行動したとしても、それが僕のための時間でなければ何の意味もない。僕は僕のために時間を使いたい。決して僕の時間はムカイさんの物じゃない!
何よそれ。友達のために時間を使えないって言うの!?
僕はそういう人間だったんだ。僕は友達のために時間を多く割きたくはなかった。もっと自分のために使いたかったんだ
でも、人間関係を保つためにはお互いに合わせることだって必要……
じゃあ、ムカイさんは僕に何をしてくれたんだ!?
……
ムカイさんは僕のためと言いながら、自分の時間に僕を巻き込んでいるだけじゃないか! 僕はもっと自分の時間を過ごしたい。ムカイさんのための時間は過ごしたくない!
……
だから僕はもう、君と一緒には帰らない
……わかったわ、アンタがそんな人間だとは思わなかった
……
そんな……自分の意見をはっきり言える人間だとは思わなかった
ムカイさんが……笑った?
きっとアタシ、シマダくんに甘えてたんだね。誘ったら必ず来てくれるアンタに。今までごめんなさい。……さよなら
数日後
それから、僕はムカイさんと一緒に帰ることはなくなった
ムカイさんは合唱部の練習に精を出し、僕は学校が終わったらすぐ、家でゲームをやる毎日を過ごしている
これが、有意義な時間かどうかはわからない
でも、僕は今すごく……気分がいい
そして……
シマダくん、合唱部の大会があるんだけどさ
うん
もし良かったら、見に来てくれないかな……
僕は合唱にはあまり興味はない
でもムカイさんの歌声を、一回は聞いてみたいなとは思った
完
なるほど。学校でも家でも抑圧された主人公が目覚めるストーリー、興味深いですね。ムカイさんに苛々しながら読んでましたが、最後に覚醒(?)したのか良い娘になってて清々しい。
そして持つべきは、やはり友人ですね! タケモトくんがイケメン過ぎて惚れそうでした。
オチを読むまでハラハラしてたけど、最後にシマダ君はちゃんと自分の意見を言えて良かった!ムカイさんの為にもなったし、良いお話だと思います。余談だけど、母がwww母のアイコンがwww笑わせてもらいました_(:3」∠)_
浅井さん、コメントありがとうございます。
人にはその人にあった時間が必要であり、それを抑え込む権利は無いと思っています。アイコンについては、ありがとうございます。
シマダ……よく言ったぞ……!