瀬名が睨みながら詰め寄ってくる。
俺の名前は伊藤晶
正直、挨拶してる場合ではないのだが
名前がわからないと進行が難しそうなので名乗っておく
俺はいま現在、カツアゲにあっている
………………
………………
クラスの女子二人に詰め寄られる…
夢のようなシチュエーションなのに驚くほど心が踊らない…
いい加減さっさと出しなさい
チャイムが鳴れば解放されると思ったら
大間違いだからね
さ、さっきから何度も言ってるように、
お金持ってないんですよ…
購買帰りのやつが何言ってんの!?
いいから早く出しなさい!
こっちも暇じゃないのよ!
瀬名が睨みながら詰め寄ってくる。
正直なところすごく怖い
いや、さっき使い切っちゃったというか…
なんというか…
言いたいことがあるなら
はっきり言いなさい!
はい!今すぐに渡します!
宇田川に怒鳴られた途端、
反射的に返事をしてしまった。
人間の防衛本能とクラスの女子二人に敵わなかった俺は、おとなしく財布を取り出した。
やっぱり愛子にかかれば
こんなやつちょろいものね
あら、知美だって
なかなかいい感じだったわよ
二人はまるで世間話をしてるかのように笑いあっていた。
その時、遠くから足音が近づいてきた。
やばっ、先生かも
えぇ~、もうちょっとだったのに…
仕方ないわ
ここは逃げましょ
宇田川は足音の方向とは逆方向に小走りに駆けていく。
あんた私たちがやってたこと
チクるんじゃないわよ
瀬名もそう言うとそちらのほうに駆けだそうとした時
知美!
一人の男子生徒が現れた。
巧!?
瀬名は足を止めて男子生徒のほうに向き直った。
知美…お前こんなとこでなにやってんだ
そ、それは…
瀬名が言いよどむ。
おそらく二人は恋仲なのだろう。
そして、男子生徒のほうは彼女のこの行動を知らなかったようだ。
このまま二人が喧嘩を始めれば、
逃げるチャンスができるかもしれない。
オレは気をうかがうことにした。
なんだよはっきり言ってくれないと
わからないよ
……………
瀬名はうつむいて黙ってしまう。
やっぱり、そうなんだな…
えっ?
知美、こいつと浮気してたんだな
男子生徒が驚愕の発言をする。
………………あ
一瞬呆けた表情をした瀬名だったが、
次の瞬間はじけたように怒鳴った。
そ、そんなわけないじゃない!
なんで私がこんなゴミみたいなやつと
浮気しなきゃなんないの!
じゃあ、なんで男とこんなところに
二人でいるんだよ!
そ、それは…
カツアゲしていたとは言えないのだろう。
見たところ男子生徒は真面目そうな生徒に見える。
そんな彼に隠れてこんなことをしていたのだろう。
しかし、ゴミみたいって…
俺はそこまでひどいのか
他に好きな奴ができたなら、
正直に言ってほしかった…
こんな裏切るようなことしてほしくなかった
違う、違うのよ!
言い訳なんて聞きたくない。
じゃあな、知美
男子生徒が瀬名に背を向けて歩き出す。
待って!
瀬名が男子生徒の手をつかむ。
ちゃんと話す、
ちゃんと正直に話すから
そんなこと言わないで…
知美…
瀬名は宇田川とカツアゲをしてたこと、
そして俺が今回の標的だったことを話した。
正直、俺はもういらないんじゃ
カツアゲ、か…
ごめんなさい、巧を裏切るようなことをして
本音を言うとショックだよ。
知美は真面目な子だと思ってたから。
でも、正直に話してくれたのはうれしかった
巧…
でも、そんなことをしちゃだめだ!
今後は絶対に!
これまでのことは一緒に、
みんなに謝りに行こう?
うん、うん
ごめんね、ごめんね
まずは彼に謝るんだ。
二人ともこちらを向き頭を下げた。
俺の彼女がこんなことをして本当にごめん!
ごめんなさい!
い、いや、まあ、いいです、はい
二人は顔を上げると笑いあった。
な!
こうやって謝れば許してくれるんだよ
さ、行こうか
うん!
瀬名と男子生徒は手をつなぎながら歩いて行った。
…………
教室帰るか
俺は教室へと歩き出した。
うーん、なんというか主人公の立場からするとモヤモヤしてしまうのかもしれない。
謝ったからそれでいいだろみたいな思いが見えているからかもしれない。
面白かったです、お疲れ様でした!
面白かったです!
シュールなギャグセンス、好きです。呆気なく渡す辺り腹筋がヤバかったす。
実は自己紹介は無くても問題無かったのでは、なんて思ったのは内緒なのです。
>さらすさん 感想ありがとうございます。最初は知美ちゃんはこっぴどくフラれて晶も巧に殴られて二人が慰めあってエンドっていう話にしようと思ったんですが、知美ちゃんがかわいく思えてかつ晶も空気と化していたので変わってしまいました。
>浅井明子さん 感想ありがとうございます。笑ってもらえてうれしいです。自分の中の設定では、晶はコミュ障設定があったので特に言い返さず現状維持を選択したということにしました。