200×年 私はあの春、卒業する先輩に思いの丈をぶつけた。

『Re:』

第1話 「春の日、その記憶」

先輩!

ん?ああ、何?

ご卒業おめでとうございます。
短い間でしたが、親切にしてくれてありがとうございました。

いやいや~俺の方こそ君に感謝しないと!
サークルの雑用とか任せっぱなしだったし・・・
至らない先輩でゴメンな~

いえ・・・あ、あの・・・私・・・私・・・

なんだい?

先輩のことが・・・

階段の踊場の窓から吹き込む春風の音と自分の鼓動がやけに煩く感じた。

優しい先輩の顔を緊張からか睨みつけ気味に見ながら、

私は人生で初めて異性に告白した。

先輩のことが好きです!!
会った時から!!ずっと!!

呆気にとられたような、先輩の顔を直視できなかった。
数秒後だろうか・・・
少し顔を上げると、困ったような顔で、告げられた。

あー・・・えっと・・・俺・・・実は・・・

同じサークルの千葉のことが・・・
片思いなんだけど・・・な・・・・

え?あ?千葉先輩って彼氏さんが・・・
いますよね?

先輩は私の大好きな、はにかんだようなあの笑顔で、
千葉先輩の事を好きだと言っていた。

千葉先輩は先輩の1つ下、私の3つ上で、
先輩の友達の彼女さん・・・明るくて美人・・・

所詮、後輩程度の私と中途半端に
男女の付き合いをするより、
友人とその彼女である千葉先輩を見守る事に
決めたそうだ

結局は横恋慕である。

だから・・・気持ちは嬉しいんだけど・・・
このまま先輩と後輩でいさせてくれないか?

なんだか頭に靄がかかって、
自分の体温が下がっていくのを感じた。

クラクラする。

幸いなのは、
明日から先輩の顔を見なくて済むことだけだった。

あ・・・はい・・・わかりました・・・
すみません・・・さようなら・・・
お元気で・・・・

消え入りそうな、かすれ声で、それだけ告げて、
階段を駆け下りた。



今思い出せば、私は多分泣いていたと思う

泣きながら大学を後にして、
その夜は泣き明かした気がする。



正直、ショックすぎて記憶が朧げなのだ

その後、千葉先輩の顔も、
大好きだった先輩と楽しい日々を送ったサークルも
嫌になって、機械のように勉学に励んだ

20年後・・・

私は戦場に向かう輸送機の中で、
あの春の日を朧げに思い出しながら、
装備のメンテナンスをしていた。

第2話へ続く・・・

第1話「春の日、その記憶」

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