美少女戦士ブッチャー・カット
美少女を捜しにいくぞ!!
美少女戦士ブッチャー・カット
ただメロンブックスにいくだけなのに、
なんでわざわざそんな大声で
宣言するんだよ。
いつもは言わねえだろ。
気合いをいれたのだ。
真に心を奮わせる、
本物の二次元と遭遇するには、
鑑賞者の気概が何よりも大切だからな。
言ってる意味がわからねえよ。
そう・・・今はまだ分からずとも、
いつか分かる時が来るだろう・・・。
こねえとおもうがな・・・
電車がきたぞ。
電車に乗ろう。
俺が生来のてっちゃんだったならば、
今ここにきた車両の型が何なのか、
すぐに言い当てられるんだけどな……
いいあてたいのか。
ただ思っただけだ。
世の中には色々なオタクがいるだろ。
それって、すげえなあと思って。
二次元にばかりかまけるのもいいが、
多方面な分野の知識を
とりいれていきたいよ。
お前、いつもそんなこと思ってんのか。
しょっぺえ奴だなあ。
俺たちは夢と浪漫を追い求めてるんだから、
それでいいだろ。
最近、それだけじゃねえよなあって思うんだよ。
楽しいことがあまりなくてな……
人生を楽しめよ。
電車にのるぞ。
さあ、夢と浪漫の宇都宮へ!
もっとさあ、他にあるだろ……
秋葉原、いきてえよなあ……金があればなあ
あててんのよ
何をだよ。
いってみたかっただけだ。
あ、そう
あれはなんだ?
あれは東武鉄道の
広告ポスターだろう。
ちげーよ。
今となりのドアから乗ってきた奴。
なんだあの仮面は?
よくわからん。
紙みたいなのを顔に貼ってるな。
シュガーカットみたいな顔。不気味だ。
※シュガーカットが何かについては、各自検索してみてください
別の車両にいこうぜ。
なんか、ヤバそうだし。
絵柄が違うし
まあ待て。
アイツの手元をよくみてみろ。
あれは……刃物じゃないか?
おいおい、完全に捕まるだろう。
テロでも起こすつもりか?
いや、あれは模造刀だ。
ブッチャーナイフという、
精肉業者が屠殺につかうナイフのようだな。
なんでそういうの詳しいんだよ。
お前二次元にしか興味ないんじゃなかったのか。
実家が肉屋だからな。
どっちにしろ、かかわりたくねーよ。
なんか、コスプレにしてもいみわかんねーし。
早く別の車両にいこうぜ。
今俺たちの隣に座ってるぞ。
あっ……
聞こえてました?
いいえ、なにも
……………。
…………。
おたく、なんかのイベントにいくの?
宇都宮のフェスタに……。
まさお!
どうした?なんだその吹き出しは。
ひそひそ声だよ。
あいつ、俺たちと行き先
一緒じゃねーか!
※宇都宮フェスタは、宇都宮市オリオン通りにある、メロンブックスやアニメイト、まんだらけなどのオタクショップが入っている商業ビルである。
ああ。
俺は内心、とても喜んでいるぞ。
俺たちしかいないこの車両の中で、
二次元の喜びを分かち合える三人目の同士が現れたのだからな!
そういう問題じゃねーよ!
あいつ、どう考えてもこえーだろ!
人を見かけで判断するな。
あれはすごい逸材だぞ。
あ?
おたく、何のコスプレだかしらんが、
コスプレして電車に乗ってくるなんて勇気のある行動、相当な修羅をくぐり抜けてきた猛者であるとみた。
俺でさえ、勇気が無くてできなかった行動だからな。
お前のコスプレは
だいたい女装だしな。
これ、私が考えたオリジナルなの
なるほどな。
通りで見ないわけだ。
マジか…………
おたく、好きなアニメとかあるの?
フリクリ
なるほどな……。
…………。
それでおたくは、
何で宇都宮フェスタに行くの?
私は、美少女戦士になりたい
ん?
あ!?
この恰好で、
悪を滅ぼし、
困っている人を助けるヒロインになりたいの
でも私はアニメをよく知らない
悪と闘うヒロインとして、参考にすべき
歴戦の美少女を知らない
だから私は宇都宮フェスタで、
アニメのことを知っていく必要がある
の。
素晴らしい!!
俺たちでよければ、是非とも
協力しようじゃないか!!
お、おい……
ここに乗っている俺たちは、
二次元の世界をウン十年追い続けてきた、
業界の酸いも甘いも知る
歴戦のオタク戦士だ。
今まさに、オタクの門を開こうとしている
一人の少女を前にして、どうしてそれを
遮ることができようか?
俺たちが教えてやる。
美少女とは何たるか……そして、
正義のヒロインに求められる
真(まこと)の品格を……
お、おい、ちょっと!
どういうことだ!?
俺たちについてきな。
大船に乗ったつもりでいなさい。
ありがとう。
ああ……一体どうして、
こんなことになっちまったんだ……
大船○屋の新刊が……
○リムちゃんのエロ同人が……
煩悩よりも大きなものを
見つけ出したとは思わないのかね。
いや明らかに怪しまれるだろ、この状況……
オタク二人となんかよくわかんない模造刀もったコスプレ女の三人で、
商店街を歩いてるという……。
確かに今の彼女は、
ややもすると不気味な姿にみえるかもしれない。
だから、俺たちが調教するのだ。
俺たち好みの美少女戦士を、
俺たちの手で作り上げるのさ!
あんま人前で調教とか言うなよ……
ついた
これが……で……
そもそもの始まりは……
この……の登場が……
これ以降……
それは……
……のは完売……
ふむふむ
俺18禁コーナー行ってていいか?
18禁コーナーには、何があるの?
それは言えない。
男達だけの楽園だ。
さっきまで紹介してきた歴戦の美少女戦士たちが、
あんなことやこんなことに
なってたりする。
おい!!
そういうこともしていかなくちゃいけないの?
ある視点からみればな。
だがそれはファン・フィクションだ。
楽しみたい人が楽しめばいい。
わたしもそこにいきたい
残念ながら、18歳未満はお断りだ。
ここで、彼が戻るのを待ってなさい。
なんかすげー行きづらいんだけど……
わたし18歳以上よ
そうなのか。声は若いけどな。
というか、年齢を聞いてなかったな。
そもそも仮面越しで、
素顔もみれてない。
面くらい、外してもいいんじゃないか?
それはできないよ。
恥ずかしいから。
年齢もヒミツ。
むむ、そうか……
まあ、そういう方向でやっていくしかないのかな
仮面の美少女か……
あんま同人ウケしねーと思うがな
需要はあるかも
なんで女の子に、お○ん○んがついてるの?
それは“ふたなり”というジャンルだ。
この一連の棚に出てくる、
原作に登場しないこの生き物は一体?
それは“触手”だな。
おい…もうやめようよ……
教育によくないよ……
本人が気になるって言うんだから、
仕方ないだろう。
これって、男の人は
みてて楽しいの?
楽しい。
触手はそんな好きじゃないがな。
そう……。
触手とかそういうのは、
そこにいるしげるの専門分野だ。
違う……いやそうだけど……
いや、俺はこんなつもりじゃ……
今日はとっても楽しかったわ。
ありがとう。
もう帰るのか?
まだまだ、紹介したい店、
いっぱいあるんだが。
とっても勉強になった。
美少女戦士としての可能性を広げるため、
家に帰ってコスチュームを考えてみるわ。
その意気や良し。
自分の思い描く理想の美少女戦士を、
俺たちにみせてみなさい。
そういえば、まだ名前を
聞いてなかったな。
名前はまだない。
考えてないの。
いや、本名
君の今の姿は……
そうだな……
シュガーカットみたいな顔に、
手にもつ武器のブッチャーナイフ……
それら二つを合わせて、
「ブッチャー・カット」というのはどうだろう?
美少女戦士 ブッチャー・カット
ありがとう。
とても気に入ったわ。
でも私は変わらなくちゃいけない。
この姿とも、もうお別れね。
多分、次に街で会うときには、
全く違う姿になってると思うわ。
本名教えてくれよ
あなた達二人と過ごした時間を、私は忘れない。
本当に楽しかったわ。
さよなら……
お、おい……
……なんだったんだ、あいつは
よくわからん女だったが、
なんだかんだで楽しかったぞ。
俺が美少女戦士として、伝えていきかったことはだいたい伝わった。
素質も素養も持ってる。
あとは、彼女自身の足で、自然と歩き出していけるさ。
俺たちの手で、
彼女を調教するんじゃなかったのかよ。
もう十分調教しただろう。
いやもっとこう……あるじゃん?
調教っていうのはさ……
連絡先も知らないし……
お前、なんかやましいことを
考えてないか?
いいんだよ、これで。
俺たちは、困っていた一人の少女……少女?を救った。
それでいいじゃないか。
いいのかな……まあ、いいや。
なんだかんだで、楽しかったしな。
後日
いくぞ!!しげる!!
おう!!
俺たちの祭典!!
約束の地!!
東京ビックサイトへ!!
金はもったか!
この日の為に、バイトで貯めてきた金があるからな。
じゃあいこうか。
急に冷静になったな。
この忌まわしい大地とも、
これでおさらばだ。
この駅からコミケに向かうのは、
俺たちだけなのかな。
俺たちの地元は、オタク発展途上国だからな。
東京はすごいぞ。
なにもかもが揃ってる。
今から楽しみだ。
…………。
ん……
おいまさお、
あの一緒に乗ってきた奴、
もしかして同業者じゃないか?
確かに、なんかのコスプレかもな。
綾波レイかな?
ちょっと話しかけてみろよ。
俺にはとてもできない。
いつぞやのブッチャー・カットのときは、
自分から話しかけにいったじゃないか。
それはそうだが……
……これ、私が考えたオリジナルなの
あっ、そ、そうなんですか。
あ、あなたもコミケに?
……ん?
この声、どこかで……
美少女戦士ブッチャー・カット
~終わり~