まさお

美少女を捜しにいくぞ!!

美少女戦士ブッチャー・カット

しげる

ただメロンブックスにいくだけなのに、
なんでわざわざそんな大声で
宣言するんだよ。
いつもは言わねえだろ。

まさお

気合いをいれたのだ。

まさお

真に心を奮わせる、
本物の二次元と遭遇するには、
鑑賞者の気概が何よりも大切だからな。

しげる

言ってる意味がわからねえよ。

まさお

そう・・・今はまだ分からずとも、
いつか分かる時が来るだろう・・・。

しげる

こねえとおもうがな・・・

まさお

電車がきたぞ。
電車に乗ろう。

しげる

俺が生来のてっちゃんだったならば、
今ここにきた車両の型が何なのか、
すぐに言い当てられるんだけどな……

まさお

いいあてたいのか。

しげる

ただ思っただけだ。
世の中には色々なオタクがいるだろ。
それって、すげえなあと思って。

しげる

二次元にばかりかまけるのもいいが、
多方面な分野の知識を
とりいれていきたいよ。

まさお

お前、いつもそんなこと思ってんのか。
しょっぺえ奴だなあ。

まさお

俺たちは夢と浪漫を追い求めてるんだから、
それでいいだろ。

しげる

最近、それだけじゃねえよなあって思うんだよ。
楽しいことがあまりなくてな……

まさお

人生を楽しめよ。
電車にのるぞ。
さあ、夢と浪漫の宇都宮へ!

しげる

もっとさあ、他にあるだろ……
秋葉原、いきてえよなあ……金があればなあ

まさお

あててんのよ

しげる

何をだよ。

まさお

いってみたかっただけだ。

しげる

あ、そう

しげる

あれはなんだ?

まさお

あれは東武鉄道の
広告ポスターだろう。

しげる

ちげーよ。
今となりのドアから乗ってきた奴。

しげる

なんだあの仮面は?

まさお

よくわからん。
紙みたいなのを顔に貼ってるな。
シュガーカットみたいな顔。不気味だ。

※シュガーカットが何かについては、各自検索してみてください

しげる

別の車両にいこうぜ。
なんか、ヤバそうだし。
絵柄が違うし

まさお

まあ待て。
アイツの手元をよくみてみろ。

しげる

あれは……刃物じゃないか?
おいおい、完全に捕まるだろう。
テロでも起こすつもりか?

まさお

いや、あれは模造刀だ。
ブッチャーナイフという、
精肉業者が屠殺につかうナイフのようだな。

しげる

なんでそういうの詳しいんだよ。
お前二次元にしか興味ないんじゃなかったのか。

まさお

実家が肉屋だからな。

しげる

どっちにしろ、かかわりたくねーよ。
なんか、コスプレにしてもいみわかんねーし。
早く別の車両にいこうぜ。

まさお

今俺たちの隣に座ってるぞ。

しげる

あっ……
聞こえてました?

いいえ、なにも

しげる

……………。

まさお

…………。

まさお

おたく、なんかのイベントにいくの?

宇都宮のフェスタに……。

しげる

まさお!

まさお

どうした?なんだその吹き出しは。

しげる

ひそひそ声だよ。
あいつ、俺たちと行き先
一緒じゃねーか!

※宇都宮フェスタは、宇都宮市オリオン通りにある、メロンブックスやアニメイト、まんだらけなどのオタクショップが入っている商業ビルである。

まさお

ああ。
俺は内心、とても喜んでいるぞ。
俺たちしかいないこの車両の中で、
二次元の喜びを分かち合える三人目の同士が現れたのだからな!

しげる

そういう問題じゃねーよ!
あいつ、どう考えてもこえーだろ!

まさお

人を見かけで判断するな。
あれはすごい逸材だぞ。

しげる

あ?

まさお

おたく、何のコスプレだかしらんが、
コスプレして電車に乗ってくるなんて勇気のある行動、相当な修羅をくぐり抜けてきた猛者であるとみた。
俺でさえ、勇気が無くてできなかった行動だからな。

しげる

お前のコスプレは
だいたい女装だしな。

これ、私が考えたオリジナルなの

まさお

なるほどな。
通りで見ないわけだ。

しげる

マジか…………

まさお

おたく、好きなアニメとかあるの?

フリクリ

まさお

なるほどな……。

しげる

…………。

まさお

それでおたくは、
何で宇都宮フェスタに行くの?

私は、美少女戦士になりたい

まさお

ん?

しげる

あ!?

この恰好で、
悪を滅ぼし、
困っている人を助けるヒロインになりたいの

でも私はアニメをよく知らない

悪と闘うヒロインとして、参考にすべき
歴戦の美少女を知らない

だから私は宇都宮フェスタで、
アニメのことを知っていく必要がある

の。

まさお

素晴らしい!!
俺たちでよければ、是非とも
協力しようじゃないか!!

しげる

お、おい……

まさお

ここに乗っている俺たちは、
二次元の世界をウン十年追い続けてきた、
業界の酸いも甘いも知る
歴戦のオタク戦士だ。

まさお

今まさに、オタクの門を開こうとしている
一人の少女を前にして、どうしてそれを
遮ることができようか?

まさお

俺たちが教えてやる。
美少女とは何たるか……そして、
正義のヒロインに求められる
真(まこと)の品格を……

しげる

お、おい、ちょっと!
どういうことだ!?

まさお

俺たちについてきな。
大船に乗ったつもりでいなさい。

ありがとう。

しげる

ああ……一体どうして、
こんなことになっちまったんだ……
大船○屋の新刊が……
○リムちゃんのエロ同人が……

まさお

煩悩よりも大きなものを
見つけ出したとは思わないのかね。

しげる

いや明らかに怪しまれるだろ、この状況……
オタク二人となんかよくわかんない模造刀もったコスプレ女の三人で、
商店街を歩いてるという……。

まさお

確かに今の彼女は、
ややもすると不気味な姿にみえるかもしれない。

まさお

だから、俺たちが調教するのだ。
俺たち好みの美少女戦士を、
俺たちの手で作り上げるのさ!

しげる

あんま人前で調教とか言うなよ……

ついた

まさお

これが……で……
そもそもの始まりは……
この……の登場が……
これ以降……
それは……
……のは完売……

ふむふむ

しげる

俺18禁コーナー行ってていいか?

18禁コーナーには、何があるの?

しげる

それは言えない。
男達だけの楽園だ。

まさお

さっきまで紹介してきた歴戦の美少女戦士たちが、
あんなことやこんなことに
なってたりする。

しげる

おい!!

そういうこともしていかなくちゃいけないの?

まさお

ある視点からみればな。
だがそれはファン・フィクションだ。
楽しみたい人が楽しめばいい。

わたしもそこにいきたい

まさお

残念ながら、18歳未満はお断りだ。
ここで、彼が戻るのを待ってなさい。

しげる

なんかすげー行きづらいんだけど……

わたし18歳以上よ

まさお

そうなのか。声は若いけどな。
というか、年齢を聞いてなかったな。

しげる

そもそも仮面越しで、
素顔もみれてない。
面くらい、外してもいいんじゃないか?

それはできないよ。

恥ずかしいから。

年齢もヒミツ。

まさお

むむ、そうか……
まあ、そういう方向でやっていくしかないのかな

しげる

仮面の美少女か……
あんま同人ウケしねーと思うがな

まさお

需要はあるかも

なんで女の子に、お○ん○んがついてるの?

まさお

それは“ふたなり”というジャンルだ。

しげる

この一連の棚に出てくる、
原作に登場しないこの生き物は一体?

まさお

それは“触手”だな。

しげる

おい…もうやめようよ……
教育によくないよ……

まさお

本人が気になるって言うんだから、
仕方ないだろう。

これって、男の人は
みてて楽しいの?

まさお

楽しい。
触手はそんな好きじゃないがな。

そう……。

まさお

触手とかそういうのは、
そこにいるしげるの専門分野だ。

しげる

違う……いやそうだけど……
いや、俺はこんなつもりじゃ……

今日はとっても楽しかったわ。
ありがとう。

まさお

もう帰るのか?
まだまだ、紹介したい店、
いっぱいあるんだが。

とっても勉強になった。
美少女戦士としての可能性を広げるため、
家に帰ってコスチュームを考えてみるわ。

まさお

その意気や良し。
自分の思い描く理想の美少女戦士を、
俺たちにみせてみなさい。

しげる

そういえば、まだ名前を
聞いてなかったな。

名前はまだない。
考えてないの。

しげる

いや、本名

まさお

君の今の姿は……
そうだな……

まさお

シュガーカットみたいな顔に、
手にもつ武器のブッチャーナイフ……
それら二つを合わせて、
「ブッチャー・カット」というのはどうだろう?

美少女戦士 ブッチャー・カット

ありがとう。
とても気に入ったわ。

でも私は変わらなくちゃいけない。
この姿とも、もうお別れね。

多分、次に街で会うときには、
全く違う姿になってると思うわ。

しげる

本名教えてくれよ

あなた達二人と過ごした時間を、私は忘れない。
本当に楽しかったわ。
さよなら……

しげる

お、おい……

しげる

……なんだったんだ、あいつは

まさお

よくわからん女だったが、
なんだかんだで楽しかったぞ。

まさお

俺が美少女戦士として、伝えていきかったことはだいたい伝わった。
素質も素養も持ってる。
あとは、彼女自身の足で、自然と歩き出していけるさ。

しげる

俺たちの手で、
彼女を調教するんじゃなかったのかよ。

まさお

もう十分調教しただろう。

しげる

いやもっとこう……あるじゃん?
調教っていうのはさ……
連絡先も知らないし……

まさお

お前、なんかやましいことを
考えてないか?

まさお

いいんだよ、これで。

まさお

俺たちは、困っていた一人の少女……少女?を救った。

まさお

それでいいじゃないか。

しげる

いいのかな……まあ、いいや。

しげる

なんだかんだで、楽しかったしな。

後日

まさお

いくぞ!!しげる!!

しげる

おう!!

まさお

俺たちの祭典!!

しげる

約束の地!!

東京ビックサイトへ!!

まさお

金はもったか!

しげる

この日の為に、バイトで貯めてきた金があるからな。

まさお

じゃあいこうか。

しげる

急に冷静になったな。

まさお

この忌まわしい大地とも、
これでおさらばだ。

しげる

この駅からコミケに向かうのは、
俺たちだけなのかな。

まさお

俺たちの地元は、オタク発展途上国だからな。
東京はすごいぞ。
なにもかもが揃ってる。

しげる

今から楽しみだ。

…………。

しげる

ん……

しげる

おいまさお、
あの一緒に乗ってきた奴、
もしかして同業者じゃないか?

まさお

確かに、なんかのコスプレかもな。
綾波レイかな?

しげる

ちょっと話しかけてみろよ。

まさお

俺にはとてもできない。

しげる

いつぞやのブッチャー・カットのときは、
自分から話しかけにいったじゃないか。

まさお

それはそうだが……

……これ、私が考えたオリジナルなの

まさお

あっ、そ、そうなんですか。
あ、あなたもコミケに?

しげる

……ん?
この声、どこかで……

まさお

美少女戦士ブッチャー・カット
~終わり~

美少女戦士ブッチャー・カット

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