最後から一つ手前。
はっぴーえんどまでもう少し。
みんならぶらぶ。よかったね。

なんか考えてるね。
考えることがある？　あるとしたらなに？
あねのこと。そりゃもちろん。
あねが生き返って、そうして。
そしたらなにがある？

死んだらどうなる？
また治せばいいじゃない。でもさ。

たいせつなひとが　死んだら　かなしいよね。

もう、耐えられないよ。いもうとはね。
もしかしたら、いもうと共々自壊する。

あとは起動するだけ。
スイッチをオンに！
そしたらあねが起動する。スリープ状態から回復する。
でも、そのあとは？
なにをするの。デート？
恋もよく分からないままで？

ウイルスとはいえ、一応ココロのパターンがあるの。
だから、生きてるって断定しちゃってもいいよ。
イキテルウイルスだって言い切ることもできるよ。
削除されて、復活して、殺されて、淘汰されて。
それでも、コイツら生きてる。

生きてたら、くるしい。
死ぬのを見るのが苦しい。
生きてるから苦しいのかな？

じゃあ　死んじゃえよ。

いもうとはスリープ状態のあねを置いて、
外に出ました。ふらふらあてもなく。
あてもなく歩くと、夜風が冷たい。
心も冷えていくみたいだね。
つめたく、つめたく、つめたく、つめたく。
つめたく、つめたく、つめたく、つめたく。

あたためてくれるのは、冷たい色をした「あの子」

おきゃくさんがきています。
ああ、いもうとのことじゃない。
いもうとのことなんて眼中にない。
紫の女の子は、いもうとのことなんて知らないもん。

やらしー雰囲気なんてないね。
らぶらぶのあとは朝帰り？
でもミセイネンはいつも通り夕方におかえりなさい。

声はかけられない。
ウェブカメラから眺めるふたりは、とても幸せそう。
いもうとは、自分の姿を隠ぺいしながら。
いもうとは、二人の姿を認定しながら。
いもうとは、自身の姿を想定しながら。

いもうとは、インターネットの海を歩き回ります。
いろいろなものがあります。
クッキー、キャンディ、マカロンとか。
おいしいものがたくさんあると幸せだね？
じゃあ、なにかひとつ持って帰ろうか。

あねが、起きだしそうです。
スリープ再生からもう少し。
勝手にスイッチが入る仕様。
再起動とかアップデートとか。
そういうこと。

いもうとはスイッチを入れました。
あねがゆっくりと目を覚まします。
好感度を下げたので、突然自壊することはありませんね。
たぶん。でも、今は不穏な空気なんてくそったれ。
きえちゃえ。しんじゃえ。

いもうとは　てを　つなぎました。
あねの鼓動が　はやく　うちます。
でも　でも　でも　でも

ゆっくり、静かにあるきます。
なにも、こわいことはないよ。

到着。ここは特別な空間。
二人が始まった場所。
エピソード一話目もこんな背景じゃなかったかな。
忘れたけど。

ここにはね。覚えてる？
いろいろ、あったんだよ。

顔が近づいていきます。
あねは、以前のような恐ろしい顔ではないよ。
いつもとおなじ、昨日と三日前と三年前と、それぞれと同じ顔。

くちうつしでビスケット。
くちうつしでクッキー。
くちうつしでキャンディ。
くちうつしでマカロン。
くちうつしでいちごのケーキ。

くちうつしで、愛。

いもうとはあねを起動するのを恐れてました。
だって、また壊れたらヤだもん。
でも、心配はいらなかった。
いもうとは、ここまで沢山のことを勉強しました。

良かったな。

よかったね。
みんな幸せだよ。
しあわせなのに、こういう背景でごめんね。
拝啓。その後は　敬具。

刑具？

ゆみこも
ゆかこも
こうなるとは　おもわなかった　みたい。

惨殺。ああああああああああ。
あああああ。あああああああ。ああ。


ああああ
あああ　　あああ　　　　ああああああ。



ああああ　　あああ。

新しい物語が、始まるね。
ウイルスは死なない。改ざんされて改良されて、
人間ののど元に、喉笛に、食らいつく。
パソコンを侵食していく。

繰り返される幸福に、乾杯。
いずれ淘汰される人間の、完敗。