その後も新聞を確認し海外サッカーを見られるだけ見た。また学校から帰宅すると録画した海外サッカーのビデオを観た。この頃はパルマに在籍していた中田選手の試合もよく放送されていた。翌2002年にワールドカップ日韓大会が開催されることになっていて、来年の大会に向けて日本の稲本潤一選手が中田選手に続けてアーセナルというチームで海外サッカーに挑戦するというニュースを見た。アーセナルというチームはイングランドの強豪チームらしい。いつものように新聞のテレビ欄を見ていたら”海外サッカー_アーセナル-稲本”とあった。強いチームの試合を見たくて、26:40に起きた。部活の疲れがあり、ものすごく眠かった。
それはプレミアリーグ2001-02の試合だった。稲本選手を見たかったがこの試合ではベンチ入りだった。試合はアーセナルが圧倒していた。強い・・・、気がした。央志の言葉で説明できなかったのであくまでそんな気がするとしか言えなかった。実際、試合には勝っていた。これまで央志がやってきたサッカー、部活での指導の考え方ともかなり違うようだ。何が違うかは自分で言葉にできなかった。それが悔しかった。
アーセナルの試合を何試合か見た。試合にはほとんど勝っていた。アーセナルのサッカーはやはり央志の知っているサッカーと何かが違った。5試合、6試合見た。同じプレーは出ずに予想は外れた。しかし毎回、期待を超えるすごいプレーを見せてくれた。7試合目を見た翌日、決意した。理解できていないその”何か”を知りたい。わからないままにするな。考えろと自分に命じた。
ある日、また深夜の試合を録画しようとした。テレビ欄にはいつも通り海外サッカーと記載されていたが、きっとアーセナルの試合だろう。26:40に起床し、ビデオデッキのあるリビングへ行く。眠くて仕方ないが見逃すわけにはいかない。朦朧としながらもどうにか録画ボタンを押す。録画はしていたが今日はどんなプレーが出るのか我慢できずにそのまま見ていた。2002年3月2日。アーセナル対ニューカッスル。後半11分。その試合でアーセナルのFWデニス・ベルカンプがパスを受けて、ルーレットターンでかわし、GKと1×1となり、右足で右下隅にシュートしゴールを奪った。感じたことは、理解できない、わけがわからない、なぜだ、だった。少なくとも央志の中にはないプレーだった。リプレイが流れる。左サイドからナナメの縦パスが出て、カメラが追いついた時にはもう回っていた。実況・観客からの音が大きくなる。央志の全身も反応していた。目が大きく開き、おなかがへこむ。普段は意識して動かす部位が無意識に、なぜかはよくわからないが確かに動いた。そしてGKと1×1になりシュート、ゴール。

アーセナルのベルカンプを見る

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