これまで央志のサッカーの世界は高校の部活とテレビで見るJリーグの試合しかなかった。Wカップを見て、世界のサッカーは強いと感じた。日本のJリーグより海外のプロリーグの方がレベルが高いらしい。そういえば日本は98年のワールドカップで1勝もできなかった。中田選手の試合の他にも、海外のサッカーの試合が放送されることがわかれば、可能な限り見た。そうすることで理解しようと考えた。
ある日、新聞のテレビ欄を見ていたら深夜の26:40~28:40に一行”海外サッカー“とあったので見てみたいと思った。試合なのかダイジェストなのかはテレビ欄に記載がなくわからなかったが放送時間は2時間だったので試合だろう。しかし、起きることができずに見ることができなかった。これまで起きたことがない2時過ぎに起きるというのはなかなか困難であった。翌週、同じ曜日の同じ時間帯にまた”海外サッカー”とあったが、またもや起きることができなかった。2回見逃したことでより見たくなった。。3回目でやっと26:50に起きることができてテレビをつけて録画した。ブラジル代表の親善試合だった。既に試合が始まっていたし、ぼんやり見ていたのでオフィシャルの試合なのか、エキシビションなのかはわからない。ただ試合だけを見ていた。ブラジルが多くの時間、ボールを保持していた。ペナルティエリアでFWがボールを受けても取られない。相手のゴール前でのパス回しに余裕がある。焦る様子もない。シュートが打てないから後ろにパスする。央志の今のやり方、センタリングからのヘディングやスルーパスと違う。相手の方が多いところにもパスをするが取られない。今まで央志が受けてきた指導ではボールを取られないように密集するところは避けろと言われていた。また、日本代表もそうしているように見えていたからそれが正しいと思っていた。央志の知るサッカーのやり方との違いに驚いた。央志や日本代表だったらもっと焦っているしミスが起きる。そしてボールを取られている。ブラジル代表は相手が後ろからプレッシャーをかけても取られない。世界のサッカーは違うと感じた。央志はブラジルのようなかっこいいサッカーをしたいと思うようになった。
また、テレビでブラジルが映ると自然と目がいった。サンバの映像では、踊っている人々がみんな心から楽しんでいるように見えた。
この頃、央志はいじめにあっていた。その原因の一つは日本という国にあると思っていた。そして、日本で今のままが続くのであれば死にたいと考えていた。サンバのある、心からの笑顔のあるブラジルという国に憧れた。ブラジルという世界があることを知り、生きる希望になった。ブラジルはサッカーも人もかっこよかった。ここではないどこかで活躍するんだ、そのために今やろう。ブラジルに央志の場所があると思った。

サッカーのプレーの違い

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